生産管理とは?どんな業務?わかりやすく基礎から解説【初心者向け】
公開日:2023年06⽉30⽇
最終更新日:2024年10⽉31⽇
生産管理とは何か、どのような目的でどんな業務を行うかを、わかりやすく解説します。
生産に関わるあらゆる情報を総合的に管理する生産管理は、製造業の企業成長に不可欠な存在です。しかし、業務範囲の広さや複雑さから、仕事のイメージが湧きにくいかと思います。具体的な業務内容、よくある課題と解決方法まで説明します。
また、生産管理における多くの課題を解決できる「生産管理システム」についても、事例を交えて紹介しています。「生産管理システムを導入する企業が増えていると聞くけれど、実際どうなんだろう」と漠然と感じている方も、自社工場に向いているかどうかイメージを持っていただけるかと思います。
生産管理とは:計画通り生産するための管理業務全般
生産管理とは、受注状況や需要予測に基づいて生産計画を立て、計画通りに生産するまでの一連の工程を管理する業務です。その名の通り、製造業における「生産」を総合的に「管理」する業務といえます。
一般的な生産管理の業務領域は、以下の通りです(企業により一部分業するケースもあり)。
- 需要予測
- 生産計画
- 受注管理
- 在庫管理
- 発注管理(調達・購買)
- 工程管理(製造管理)
- 品質管理
上記の通り、生産管理の業務は多岐に渡り、生産の計画・管理・改善を一元的に行う必要があります。そのため近年は、生産管理システムの導入などで、管理の手間を減らす企業が増えてきています(詳しくは後述)。
生産管理の目的:企業の利益を最大化すること
生産管理の最大の目的は、企業の利益の最大化です。
例えば、ある製品を通常10時間で生産する現場があるとします。各工程を改善し、製造時間を7時間にできれば、残りの3時間で他品目の生産ができたり、もしくは残業時間を短くしたりできます。それぞれ、生産性の向上・残業代(人件費)の削減に繋がり、企業の利益が増えることに繋がります。
もしくは、毎月100個生産して完売していた製品を、翌月の販売数が増えると見込み120個に生産したとします。それでも完売すれば、売上増に貢献できたといえます。
これらはわかりやすいシンプルな例ですが、他にも企業の利益の最大化に貢献する方法は他にも多数あります。生産管理は、生産活動において利益に大きく貢献できる業務といえます。
QCD(品質・コスト・納期)の最適化が重要
生産管理を通して企業の利益を増やすためには、QCD(品質・コスト・納期/Qualiy・Cost・Delivery)を最適化していく必要があります。
品質・コスト・納期は、どれか一つを優先するのではなく、最適なバランスを探ることが重要です。この3つの要素は相互関係にあり、いずれかだけを重視すると他の要素が悪化するためです。
QCDのいずれかだけを重視した場合(一例):
- 品質を優先し、時間をかけて生産する→納期が長くなり、製造コストも高くなる
- コストを優先し、安価な材料ばかり調達する→低品質な材料で不良が発生しやすくなる、検査の手間が増え納期が長くなる
- 納期を優先し、生産リードタイムを極端に短縮する→検査漏れなどで不具合発生リスクが上がる、設備や人員を増やすと生産コストも上がる
重要なのは、それぞれを「最適化」し、最も企業の利益が大きくなるよう管理することです。材料調達の例だと、高品質・高単価の材料は重要部品のみで使い、コストのバランスを取るなどの方法が考えられます。品質面でも、不良発生率が低い工程では全数検査ではなく抜取検査を行うなど、コストと納期を抑える方法を採用できます。
生産管理の具体的な業務内容
冒頭に紹介した、生産管理の具体的な業務内容を解説します。企業によっては、一部業務は別部門が担当する場合もありますが、それぞれの業務は、いずれも生産管理と関わり合っています。生産管理として、関連する情報をいつでも確認できるようにしておく必要があります。
生産計画
生産管理の最も重要な業務の一つが、生産計画です。市場からの需要予測や受注内容に基づき、どの製品をいつ、どれだけ生産するかを計画し、その計画が適切に進行しているかを追跡します。
最適な生産スケジュールを立てるためには、生産量・納期・在庫量・生産能力など、さまざまな情報を考慮する必要があります。そして、生産計画立案後も定期的に見直し、新たな市場動向や生産状況に応じて調整していきます。
また、市場の動きや生産現場の状況は常に変動するため、変化に対応できるバッファ(余裕)が適度にある計画を作ることも重要です。計画変更の影響を最小限に抑えられれば、現場の混乱も少なくなります。
具体的な生産計画のやり方は、企業の生産方式により異なります。例えば、計画生産が中心の企業は、市場動向の分析などによる需要予測が非常に重要です。対して、受注生産が中心の企業であれば、需要予測のウェイトは少なく、受注情報をもとにいかに効率的な生産計画を組むかが重視されます。
いずれの生産計画の進め方でも共通して重要なことは、過去の生産・販売データの分析です。例えば、過去に類似品を生産した際の工数がわかれば、生産計画を立てる際の参考になります。また、季節性の製品を生産するならば、昨年同時期の生産数や販売数のデータも参照すべきでしょう。
このような過去の生産データを活用するためには、日頃の工程管理とデータ蓄積も重要です。
工程管理(製造管理)
工程管理では、各生産工程の進捗状況を監視し、必要に応じて調整を行います。日頃の進捗を作業日報から確認したり、設備故障や人員不足などの問題発生時に早期発見・対応するのも重要な役割です。このような予期しない課題を解決するためには、生産現場からのフィードバックをもとに、的確な対応策を講じる必要があります。
また、設備や人員が足りているにも関わらず、生産に遅れが生じている場合は、問題点(ボトルネック)の特定が必要になります。生産工程を細かく見つめ、各工程での業務フローを理解し、生産のボトルネックを解消することも、工程管理では求められます。
工程進捗に遅れが出る原因はさまざまですが、そのうちの一つに「材料不足」があります。原材料や部品の欠品を防ぐためには、正確な在庫管理も重要です。
在庫管理
生産計画を組む際に、材料の調達計画も立てます。生産に必要な材料が適切な時期に、適切な量だけ用意されるよう在庫管理を行うことも求められます。無駄な在庫を抑制しつつ、生産遅延を防ぐバランスを保つことが重要です。
適切に在庫管理ができないと、過剰在庫によるコスト増や品質劣化、在庫切れによる納期遅延のリスクが高まります。いずれも企業の利益に影響を及ぼすため、常に在庫状況を正確に把握し、必要な量を必要なタイミングで生産できるよう管理する必要があります。
また、生産管理担当者が材料発注も行う場合は、適切な発注で在庫量をコントロールすることも不可欠です。
発注管理
発注管理では、材料の現在庫数や将来在庫を見据えて発注を行います。都度発注・計画発注を判断しながら、適正在庫を保てるよう発注する必要があります。
例えば、発注後すぐに仕入れられる部材であれば、都度発注で問題ありません。一方、発注リードタイムが長い材料は、生産計画や現在庫数から将来必要になる在庫を逆算し、前もって発注する必要があります。特に、海外品はリードタイムに数ヶ月かかる場合もあるため、将来在庫の計算が不可欠です。
企業によっては、発注は調達・購買部門が行う場合もあるかと思います。その場合は、双方がリアルタイムに在庫情報を共有できる体制を作ることが不可欠です。調達・購買部門が現場在庫数や使用状況を把握できないと、発注ミスが起こり、生産の遅延に繋がる可能性があります。
外注管理
生産工程の一部を外注先に依頼している場合は、外注管理も必要です。外注先の納期や品質を把握し、場合によっては外注先の見直しも行います。特に近年では、中小加工業者の廃業や、仕入単価の上昇などを受け、外注先を再選定する機会が増えている企業は少なくありません。
品質管理
品質管理では、製品が定められた品質基準を満たしているか検査・確認し、必要に応じて改善策を提案します。品質保証部などの別部門が担当するケースもありますが、各工程での検査は生産現場で行うこともあります。
特に、食品業界や医薬品業界など、ロット管理や期限管理が厳しい材料を扱っている場合は、品質管理の重要性も高いといえます。ちゃんと指定したロットの材料を使っているか、今から使う材料の使用期限は過ぎていないかなど、厳重な管理が求められます。
生産管理で多くの企業が悩む課題・改善策
生産管理は管理範囲が広く、難易度も高いため、多くの企業が課題感を持っています。生産管理システムの開発を行う当社が、実際にお客様からよく相談される内容を紹介します。
生産計画通りに生産が進まない
生産管理の最大の悩みの一つは、生産計画の精度向上です。特に、製造工程が複雑な製品だと、計画だけでなく現場での実行の難易度も上がり、工程進捗の遅れやミスが起きやすくなります。
計画通りに生産が進まない場合、生産計画段階での課題としては、以下3つの理由が考えられます。
- 需要予測の精度が低い
- 過去データ分析が不十分
- そもそもバッファ(余裕)が少なすぎる
需要予測については、AIなどを活用した需要予測システムの活用で、ある程度まで精度を上げられます。
過去データの分析では、類似製品を生産した際の作業記録などが必要です。ただし、この記録が紙の作業日報などだと、集計や分析に膨大な手間がかかります。生産管理システムなどで工数集計を自動化しておくと、生産計画における生産能力の把握に役立ちます。また、生産管理システム上で生産計画も作成すると、過去データをもとにブラッシュアップした生産計画も評価しやすくなります。
また、生産計画はさまざまな外部要因で変動するものです。それを見越してバッファ(余裕)を最低限確保することも、生産計画には重要です。生産管理システムなどでリアルタイムな生産状況をモニタリングできるようにしておくと、計画調整もしやすくなります。
欠品や過剰在庫がなくならない
生産の遅れの原因として在庫欠品が多い、もしくは二重発注などで過剰在庫になりやすい、という悩みもよく耳にします。
正確な在庫管理のために最も重要なのは、正確な在庫情報の把握です。在庫状況がリアルタイムで共有されていなければ、生産計画の精度も損なわれてしまいます。よって、現場で入出庫した情報を即座に反映できる体制が必要です。
わかりやすいやり方は、ハンディーターミナルなどのIoTツールを活用し、現場からシステムに在庫情報を反映できる仕組みを取り入れる方法です。バーコードやQRコードをスキャンすると、リアルタイムにシステム上の在庫が更新されます。
生産計画を行っている生産管理システムに在庫管理機能があれば、在庫情報と生産計画の一元管理も可能です。計画に対して将来的に在庫不足になる場合に、前もって気づきやすくなります。
部署間での情報共有ができていない
生産スケジュールの遅れや発注ミスが、複数の部署間のコミュニケーション不足で起きるケースもあります。よくある例は、正しい現場在庫を発注担当が把握できず、発注漏れや過剰発注が発生するなどです。
情報共有の方法としては、定期的なミーティングや回覧、システム導入などがあります。よりリアルタイムかつ手間が少ない方法は、システム導入です。現場でシステム上の在庫数を常に更新していれば、発注担当者が同じシステムを確認するだけで、正しい在庫数をもとに発注できます。同じシステム上で発注できると、より手間が減らせます。
全ての課題に共通する解決策は2つ
ここまでで紹介した課題と解決策には、以下2つの共通点があります。
- 生産管理システムを活用する
- 現場の声を反映する
生産管理システムを活用する
今まで紙やエクセルで生産管理を行っていた企業であれば、生産管理システムの導入で手間やミスを大幅に削減できる可能性があります。実際に、年間の管理工数を1000時間圧縮したり、在庫金額を100万円圧縮した事例などもあります。
紙やエクセルでの管理の主な課題は、ヒューマンエラーがなくせないこと・属人化してしまうことです。紙の情報を集計したり、エクセルに転記したりする手間は煩雑で、人間がやる作業である以上、ミスをゼロにはできません。また、アナログなツールは情報共有が難しく、各人が別々のエクセルファイルで独自管理をするような状況になりやすくなります。
生産管理システムで生産に関わる情報を一元管理することで、これらの手間やミスを大幅削減し、業務効率の向上が可能となります。
生産管理システムで業務効率化した事例
現場の声を反映する
生産管理の現状を理解するには、実際の製造業の現場の声を聞くことが重要です。
生産管理システムは、あくまで現場と情報共有するためのツールです。システムでデータとして見える現場情報をもとに、現場での課題を察知したり、具体的なヒアリングや改善に繋げていくことが一番大事です。現場からのフィードバックを活かすことで、現実的かつ実効性のある改善策を立てられます。
例えば、情報管理システム部門の主導で生産管理システムを導入したものの、現場では使いにくく結局エクセルを使っていた、という事例があります。現場での情報を収集するための生産管理システムにおいては、特に現場からの意見は重要といえます。
また、改善策を行うだけでなく、その結果を定期的に評価することもおすすめします。必要に応じて改善策自体も見直し、常に改善活動を回すことで、業務の持続的な効率化に繋がります。
生産管理システムが向く工場とは
生産管理システムは、生産管理の業務効率化の手段として最もわかりやすいツールです。しかし、工場によっては「うちに生産管理システムが合うのかわからない」という声もあるかと思います。
生産管理システム導入によってメリットが出やすい工場の特徴は、一般的に以下5つです。
- 多品種・小ロット生産
- 生産ラインや設備が一定以上ある
- 生産工程が複雑
- 原材料や部品の種類が多い
- 品質管理が厳しい製品を生産している
まず、生産の規模と複雑性が一定以上であることが挙げられます。例えば、生産ラインが多数あり、多品種・小ロット生産を行う工場では、手作業による管理だけでは限界があります。システムの導入により、生産計画の立案、工程進捗の管理、在庫最適化など、複雑な業務を一元管理することが可能となります。
ただし、生産規模が小さい工場でも、原材料や部品の点数が多い場合などは、生産管理システムによる管理工数削減のメリットが期待できます。
また、品質管理や納期管理に高い精度を求められている工場も、生産管理システムが向いています。システム導入で各品質データをデータベース化・データ分析できるようになると、品質や納期の管理がより精緻に行えます。
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。