ロット管理とは メリットや導入方法、トレーサビリティのためのシステム導入も解説
公開日:2024年06⽉14⽇
最終更新日:2024年09⽉26⽇
製造業におけるロット管理には、トレーサビリティ確保による品質向上や、在庫管理の効率化など、さまざまなメリットがあります。この記事では、在庫の過剰・不足問題を解消し、生産プロセスを効率化し、高品質を維持するためのロット管理の重要性と具体的な実装方法を解説します。
「ロット」とは
ロットとは、製品を一度にまとめて生産する際の最小単位であり、その一括りをロットと呼びます。
ロットの基本的な定義
ロットとは、同じ条件で一度に生産された製品や材料の集まりを指します。通常、同じ製造ラインや同じ原材料を使用して生産され、品質管理やトレーサビリティのために一つの単位として管理されます。例えば、食品や薬品では、製造日の異なるロットが異なる品質や特性を持つ場合があります。
ロットという考え方を使う理由
ロットは、製造工程の効率化や管理のしやすさから形成されます。生産側が原材料や工程などを加味し、任意で決めるため、決まった数があるわけではありません。
金属加工の例だと、「この製品を100個作れば、材料の定尺を使い切れると」といった理由で、最小ロットを100個と設定するなどのケースがあります。これを50個ずつ製造すると、そのたびに段取りを一から行わねばならないため、生産効率が落ちます。
このように、一度に一定量を生産することで、生産コストの削減や品質の均一化が図りやすくなるケースは多々あります。製造側は「その製品の最小ロットは100個です」のように伝えることで、製造の効率化や工数削減が可能となります。
ロットが持つ情報の種類
ロットには、製造日時、製造場所、使用された原材料のロット番号など、様々な情報が含まれます。特にロット管理においては、製品に問題が発生した場合、迅速に原因を特定し、適切な対応を取るための基礎となります。
ロット管理とは
ロット管理とは、生産された製品や材料をロット単位で一元的に管理する手法です。これにより、在庫情報の正確な把握や品質向上が実現し、効率的な在庫管理や生産計画に繋がります。ロット管理は、製品のトレーサビリティや品質保証においても重要な役割を果たします。
ロット管理の目的
ロット管理の目的は、品質管理の向上です。具体的には、以下2つを目指してロット管理を行います。
- 原材料在庫の品質管理を効率化する
- トレーサビリティを確保する
ロット管理を行うことで、在庫の状況や品質を詳細に管理できるため、期限切れなどで品質不適合の原材料を使ってしまうミスを防止できます。その結果、不良品の発生を抑え、効率的な生産が可能になります。
また、ロット単位で生産工程や原材料を一貫して管理することで、トレーサビリティを確保することも可能です。万一のリコール時にも迅速に対応できるようになります。
ロット管理とトレーサビリティの関係性
トレーサビリティとは、製品の原材料から最終製品までの流れを追跡し、品質問題が起きた際も迅速に対応できるようにする仕組みです。リコールが必要になった際も、ロットごとに原因を特定し、製品の回収範囲をロットごとに限定できます。ロット単位で工程を追跡する(=トレースする)ことを、ロットトレースといいます。
製品の原料から最終製品までの追跡
製品完成までの各工程をロット単位で記録することで、詳細に追跡できるようになります。例えば、完成品に不具合が見つかった場合、ロットトレースにより不具合の原因となった工程や原材料を特定できます。このロットトレースにより、製品の品質や安全性を保証できます。
特に、食品や医薬品などの分野では、トレーサビリティが法的に求められることが多いため、ロット管理は重要な役割を果たします。
品質問題への対応とリコール対策
品質問題が発生した場合、ロット管理を活用していると、問題のある製品の特定やリコールを迅速に実施できます。たとえば、製造工程で不具合が見つかった際、同じ工程で製造した同一ロット品では、同じ不具合が起こっている可能性が高くなります。よって、そのロットを特定し、すぐにリコール対象として回収できます。
シリアル番号とロット番号の違い
シリアル番号は、個々の製品に対して付与される番号であり、製品一つひとつの追跡が可能です。一方、ロット番号は、一度にまとめて生産された製品の集まりに付与される番号です。
シリアル番号は個別管理に向いており、ロット番号は一括管理に適しています。どちらもトレーサビリティや品質管理において重要な役割を果たしますが、目的や使用方法が異なります。
ロット管理のメリット
ロット管理は、在庫の正確な管理や生産計画の効率化、品質管理の向上など、多くのメリットをもたらします。これにより、製造業における運営効率が大幅に改善され、コスト削減や顧客満足度の向上にもつながります。
在庫の正確な管理
ロット管理により、在庫の入荷日や期限などの情報を正確に把握することが可能になります。また、在庫の賞味期限や使用期限も管理しやすくなり、無駄を最小限に抑えることができます。
品質管理の向上
各ロットごとに製造条件や使用原材料の情報を管理することで、製品の品質を一貫して維持することが可能になります。万一、品質問題が発生した場合でも、迅速に問題のロットを特定し、適切な対策を講じることができるため、リコール対応などのリスクを最小限に抑えることができます。
ロット管理の具体的なやり方
ロット管理の具体的な方法としては、受注から出荷までのプロセス管理と、ロット番号の付与方法があります。これらを適切に行うことで、製品の追跡性や品質管理が向上します。
受注から出荷までのプロセス
ロット管理のプロセスは、受注から始まり、製造、検査、保管、出荷までを含みます。各段階でロット番号を付与し、その番号を記録・追跡します。これにより、どの原材料が使用され、どの工程を経て製品が完成したかを正確に把握することができ、問題発生時にも迅速に対応できます。
また、原材料をロット管理する場合は、入荷時にロット番号を付与します。その後の製造工程にて、使用する原材料のロットを指定することで、ロットトレースを行えるようにします。
ロット番号の付与方法
ロット番号の付与は、一貫したルールに基づいて行うことが重要です。通常、製造日やライン、使用原材料の情報を組み合わせて、番号を生成するケースが多くあります。この番号は、製造工程の最初の段階で付与され、その後の全てのプロセスで使用されます。これにより、製品のトレーサビリティが確保され、品質管理や問題対応が容易になります。
ロット管理の課題〜脱エクセル化・システム化が必要な理由〜
ロット管理における課題は多岐にわたります。特に、エクセルによる手動管理はミスが発生しやすく、システム化の必要性が高まっています。システム化によって、データの正確性や業務の効率化が実現します。
手作業での管理の限界とミスのリスク
エクセルでのロット管理は、コストもほぼかからず、一見便利に見えます。しかし、データ入力のミスや更新漏れが発生しやすいという課題があります。特に、複数の担当者が関与する場合、情報の整合性が保たれにくくなります。これにより、在庫の過不足や品質管理の不備が発生し、最終的には顧客への信頼低下につながる可能性があります。
データのリアルタイム更新と共有の難しさ
手動でのロット管理では、データのリアルタイムな更新や共有が難しく、情報の遅延が発生します。これにより、迅速な対応が求められる状況での対応が遅れ、機会損失やトラブルの拡大を招くリスクが高まります。
実際の企業の事例として、原材料の期限切れにより次工程でロット変更が必要になったものの、情報更新が追いつかず古いロットを使ってしまったというケースがあります。ロット情報の更新が遅れると、このような原材料の誤使用に繋がり、生産ロスが起きる可能性があります。
生産管理システムの活用の重要性
前述のアナログなロット管理による課題は、システム化によって改善できます。生産管理システムの活用で以下を実現することで、ロット管理の効率化やコスト削減が期待できます。
- 在庫の可視化とリアルタイム管理
- データの正確性と信頼性の向上
- 管理工数の削減
在庫の可視化とリアルタイム管理
在庫管理機能のある生産管理システムを導入することで、在庫の状況をリアルタイムで把握することができます。各ロットの入出庫や在庫量を即座に確認できるため、過剰在庫や欠品を防ぎ、迅速な対応が可能になります。特に、複数の拠点や倉庫を持つ企業にとっては、全体の在庫を一元的に管理することで、業務の効率化と生産性の向上が図れます。
データの正確性と信頼性の向上
生産管理システムを使用することで、データの入力ミスや更新漏れを防ぐことができます。例えば、ロット番号の自動採番機能を使うと、在庫データ登録時に自動的にロットが割り振られ、入力の手間そのものをなくすことも可能です。
管理工数の削減
生産管理システムの導入により、管理工数が大幅に削減されます。例えば、各生産にて使用した原材料のロットを確認したい場合、システム上で簡単に参照できます。紙の作業実績やエクセルデータを、目視で見返す必要がなくなります。
これにより、従業員はより価値の高い業務に集中することができ、生産性が向上します。また、システムの導入により、業務プロセスが標準化されるため、効率的な生産が可能となり、管理コストの削減にも寄与します。
ロット管理の成功事例
生産管理システムや在庫管理システムの導入で、ロット管理を効果化した成功事例を紹介します。
材料ロット管理と先入先出を徹底化した実例
ある中堅製造業では、材料のロット管理と先入先出を徹底することで、在庫の期限管理の正確性向上とコスト削減に成功しました。具体的には、すべての材料にロット番号を付与し、システムで入出庫を管理することで、古い材料から順に使用する体制を整えました。この結果、期限切れによる材料の無駄が減少し、品質の一貫性が向上しました。
ロット番号の手書き管理をゼロにした実例
中小規模の製造業では、従来手書きで行っていたロット番号の管理をデジタル化することで、管理ミスが大幅に減少しました。在庫管理システムを導入し、すべてのロット番号をバーコードで管理する仕組みに変更しました。これにより、在庫の正確な追跡が可能となり、出荷ミスや品質トラブルが減少しました。
より詳しい事例はこちら:老朽化したシステムを刷新し、保守部品の在庫管理を最適化!
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。