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PSI管理とは?エクセルでは難しい?具体的な手順から一元管理に役立つ生産管理システムまで解説

PSI管理

PSI管理は、製造業において生産・販売・在庫を一元的に管理する手法です。需要変動をフィードバックすることで適正在庫を維持し、サプライチェーン管理の効率化も可能となります。

本記事では、PSI管理の基本とそのメリット、具体的な手順を解説します。また、エクセルでの管理が難しい理由や、PSI管理に役立つERPシステム、SCMシステム、生産管理システムについて解説し、生産管理システムを活用した一元管理の例についても紹介します。

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PSI管理とは?

PSI管理(生販在管理)とは、「生産・販売・在庫」を一元的に管理することで、効率的なサプライチェーン運営を可能とする管理手法です。PSIは、次の3つの頭文字を取ったものです。

  • Production(生産):生産や在庫量を管理し、需要に応じた適正な供給を維持する
  • Sales(販売):売上実績や予測を基に、販売活動の計画と調整を行う。
  • Inventory:(在庫)必要なタイミングで発注や補充を行い、在庫を適切に保つ

PSI管理は、日本発祥のトヨタ生産方式(TPS)やジャストインタイム(JIT)の影響を受けて発展してきました。この手法は効率的な在庫削減や生産調整の考え方を基盤としており、ERPやSCMシステムの一部として採用されています。近年では、IoTやAIなどの技術と組み合わせて活用される場面も増えてきました。

このように、生産・在庫・販売をデータに基づいて効率的に管理することで、余剰在庫や欠品を防ぎ、企業全体の効率と収益の最大化に貢献します。製造業の現場においても、原価低減に大きく貢献し、競争力を保つ上で欠かせない存在です。

PSI管理の重要性が高まっている理由

食品

グローバル化の加速、多品種少量の顧客ニーズ、IT技術進歩によるデータ管理の高度化などを背景に、PSI管理の重要性は年々高まっています。リーン生産方式との融合も普及を後押ししました。より具体的な理由は以下の通りです。

需要変動の激化

製造業が直面する課題の一つは急速な需要変動であり、事業を営む上で避けて通れません。

背景には、消費者のニーズの多様化があり、市場トレンドは日々変化しています。そのため、リアルタイムでの需要予測をし、柔軟に生産計画を見直す必要があります。販売予測を基に生産計画をタイムリーに調整することで、製品や材料の過剰生産や在庫不足を防ぎ、需要に合わせた生産体制を構築可能です。

特に長納期の材料・製品においては、需要変動を一早く反映させる重要性が高く、こうした状況においてPSI管理の活用がますます重要になっていると言えます。

適正在庫維持の重要性の高まり

適正在庫の維持は、限られた経営資源の中で、需要に過不足なく対応するために欠かせません。在庫が多すぎると保管コストが増え、古くなった商品が廃棄されるリスクが高まります。さらに、昨今の原材料費や人件費の高騰により、在庫保有にかかるコストは上昇の一途をたどっています。

一方で、在庫が少なすぎると顧客の需要に応えられず、販売機会の損失につながるリスクがあります。在庫管理の失敗は、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるため。適切な在庫管理が不可欠です。

PSI管理を推進し、需要予測や過去データを元にして最適な安全在庫量を計算することで、効率的で無駄のない在庫運用が実現します。その結果、在庫コストの抑制と顧客ニーズへの迅速な対応を両立できます。

サプライチェーン管理の複雑化

サプライチェーンの複雑化が進む中で、生産・販売・在庫の効率的な連携は企業の競争力を左右します。生産・販売だけでなく、調達・配送を含めた広範囲なリスクを想定した管理が必要です。一方で、過剰なリスクを事前に見積もると、コストの増大や顧客への納期遅延、サービス品質の低下を招く恐れがあります。

PSI管理では、販売・生産・配送を含むサプライチェーン全体をデータで可視化し、標準的なリードタイムを管理します。どこにどれだけの在庫があり、どのステージで遅れが発生しているかをタイムリーに把握でき、問題が生じた際には迅速な対処が可能となります。

PSI管理のメリット

PSI管理には様々なメリットがあります。ここでは、製造業において特に重要なメリットについて詳しく解説します。

余剰在庫を防ぐ

PSI管理の導入により、販売予測(フォーキャスト)に基づいた生産計画の立案が容易になり、在庫が必要以上に積みあがるのを防ぎます。販売データをもとに生産計画や発注量を最適化することで、保管・管理コストの削減が可能になります。

また、販売・生産・在庫がタイムリーに紐づいていない場合、工場側が生産しやすい数量をまとめて在庫するケースも少なくありません。これらを一貫して管理すれば、在庫量の適正化だけでなく、保管中の品質劣化や流行の変化による製品価値の低下を防ぐこともできます。

さらに、市場の需要が変化した場合も、PSI管理を活用すれば在庫を適切に調整でき、売れ残りを防ぎます。これにより、新商品の投入や需要増加への対応もスムーズに行えます。特に高価な原材料や製品では、余剰在庫の削減によりキャッシュフローが改善され、経営の健全性の改善も見込めます。

欠品を防げる

PSI管理の促進は、製品や原材料の欠品リスクを大幅に低減します。需要の変動に応じて原材料の発注量や生産量を調整し、顧客からの注文に対して必要十分な在庫を確保することで、安定した供給が可能となります。

欠品が発生すると、販売機会を失うだけでなく、競合他社への顧客流出を招くリスクが高まります。特に競争が激しい市場においては、欠品による機会損失は将来にわたる業界シェア低下など、致命的な問題となる場合があります。

PSI管理では販売予測をデータに基づいて行うため、感覚的な管理に比べて精度が高く、必要最小限の在庫量で欠品を防止できます。

顧客ニーズに迅速に対応できる

PSI管理は、販売予測データに基づく需要に対応できる在庫を持つ運用を実現します。これにより、顧客からの急な注文に対しても迅速に対応できます。

この仕組みは、顧客からの信頼獲得に繋がり、リピート注文や企業の信頼性向上に繋がります。特に代替の利きやすい汎用製品では、迅速な対応力が競争優位性を高める重要な要素となります。顧客ニーズへの対応力そのものが付加価値となり、安定的な受注を得やすくなります。

サプライチェーンの効率化

PSI管理を活用することで、販売・生産・在庫の情報を統合的に管理し、サプライチェーン全体の効率化を実現します。在庫管理には、原材料の調達や発注、輸送リードタイムの管理が含まれ、これらを一元的に最適化できます。

PSI管理により、原材料の納入から生産、出荷に至るまでのリードタイムを短縮し、在庫量を適正化することで、保管コストや調達コストの削減が可能となります。また、サプライチェーンでトラブルが発生した際にも、迅速なリカバリーが可能な供給体制を構築できます。

PSI管理の具体的な手順

サプライチェーンイメージ

PSI管理の推進には、以下の主要なステップを順を追って進めることが有効です。

将来の販売予測(Sales)

PSI管理の第一歩は、将来の販売予測を立てることです。販売予測を行う際には、大口顧客からのフォーキャスト(内示)情報のみに頼らず、過去の販売データや市場のトレンドを分析します。さらに、季節変動やプロモーション計画に加え、経済状況や競合動向などの外部要因の考慮も必要です。

また、営業やマーケティング部門との連携を強化し、現場からの情報を取り入れることで、現実的で信頼性の高い予測が可能になります。適切な販売予測は、供給過剰や欠品のリスクを減らし、効率的な在庫運用の基盤を築きます。さらに、デジタルツールやAIを活用すれば、予測精度を更に高めることも期待できます。

生産計画の作成(Production)

販売予測を基に、生産計画を作成します。この段階では、原材料の調達リードタイムや製品の出荷タイミングなどを考慮し、必要な生産量と生産時期を決定します。さらに、工場の生産設備の稼働状況や生産リードタイム、作業員の状況も加味し、無理のない計画に落とし込みます。

販売予測の精度が高いほど、生産計画の有効性が高まり、納期遵守率の向上やコスト削減につながります。また、データに基づいて適切な安全在庫を確保することで、需要変動にも柔軟に対応できます。

在庫管理の最適化(Inventory)

PSI管理の中心となるのが、在庫管理の最適化です。需要や生産計画に合わせて原材料、仕掛品、完成品の在庫を適切な量に維持することで、コストを削減しながら安定供給を実現します。

在庫管理では、リアルタイムのデータを活用し、在庫量を常に把握することが重要です。さらに、需要急変やサプライチェーンに遅れが発生した場合に備え、安全在庫を設定します。安全在庫の消費状況に応じて、生産計画を随時調整する仕組みの構築も欠かせません。

さらに、保管スペースの有効活用や在庫回転率の向上を目指し、在庫保有コストを削減することでキャッシュフローの改善を図ります。余剰在庫の削減と欠品リスク低減を両立し、必要なタイミングで必要な量を供給する効率的な運用を目指します。

データの分析と改善

PSI管理の最終的なステップは、運用の結果をデータとして分析し、継続的な改善を行うことです。

具体的には、販売、生産、在庫管理それぞれでKPI指標(中間目標となる指標)を定期的にモニタリングし、PSI管理の有効性を評価します。各プロセスにおける代表的なKPI指標は、以下の表の通りです。

プロセス主なKPI指標
販売・販売計画達成率:販売計画と実績の整合性を確認し、需要予測精度を評価する
・失注率:欠品などによる販売機会損失を測定し、在庫・生産計画の課題を把握する
生産・生産計画遵守率:計画通りに生産が行われた割合で、販売と在庫計画との整合性を評価
・生産リードタイム:生産の開始から完了までの時間を示し、需要対応力を評価
在庫管理・在庫回転率:一定期間内に在庫が消費された回数を示し、効率的な在庫管理を評価する
・欠品率:在庫不足が原因での失注を見える化し、供給体制の妥当性を確認する

この分析を通じて、各プロセスにおける課題を抽出し、改善策を講じることで、全体効率の改善を図ります。

エクセルでのPSI管理が難しい理由

手入力

エクセル管理は自由度が高いため、小規模な運用には便利です。しかし、データ量が増えると、管理が複雑になりすぎてしまい、次のような課題が生じます。

  • データの分散:データ共有が煩雑で、更新漏れやミスが発生しやすい
  • リアルタイム性の欠如:データ更新が滞りやすく、欠品や過剰在庫のリスクが高い
  • 複雑なデータ分析の限界:データが膨大かつ複雑になった際に、分析が難しい
  • データ量増加への対応が困難:大規模なデータを扱うと、操作しにくい
  • ヒューマンエラーの増加:手入力での作業量が多く、ミスにより意思決定に悪影響を及ぼす
  • バージョン管理の混乱:複数の担当者間において、データの一貫性が失われやすい

これらはエクセル管理を続ける限り、解決が困難である本質的な課題です。

PSI管理に役立つシステム

PSI管理(生販在管理)を効果的に実施するためには、専用のシステムの導入が望ましいといえます。以下では、PSI管理に役立つ代表的なシステムについて詳しく解説します。

ERPシステム

ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)システムは、企業のヒト、モノ、カネの情報を一元的に管理し、企業内で効率化するためのシステムです。各部門の情報をリアルタイムに共有できることを特徴とし、PSI管理の効率化を実現します。

一方、導入に高額なコストがかかり、設定や運用が複雑です。また、標準機能に基づく運用のため柔軟性に欠ける場合があり、維持管理や機能追加のためのシステム改修にも多くのリソースが必要となります。

SCMシステム

SCM(Supply Chain Management:サプライチェーン管理)システムは、サプライチェーン全体を管理するシステムです。PSI管理に活用することで、製品の調達、製造、流通、販売に至るまでのプロセスを横断的に連携させ、必要なデータをリアルタイムで把握・管理できます。これにより、リードタイムの短縮やリスク管理の強化が可能となり、欠品防止や供給の安定性が実現します。また、取引先や物流網との連携によって、物流面での最適化にも貢献します。

一方で、SCMシステムは高額で運用が複雑なため、専門知識を持つ担当者の育成や取引先との調整も欠かせません。また、外部システムとの連携が難しいケースもあり、データ共有に時間がかかることも珍しくありません。

生産管理システム

生産管理システムは、PSI管理において工場内の生産プロセスを現場レベルで最適化するために有効です。

具体的には、販売データや在庫情報を基に、精密な生産計画を策定するとともに、工場内の生産進捗や作業負荷、設備稼働状況をリアルタイムで把握することができます。これにより、生産計画の実行精度が向上し、欠品や過剰在庫のリスクを低減します。

生産管理システムで可能な一元管理とは

製造業ビジネスのデジタル化

生産管理システムは、製造業において生産計画、進捗管理、在庫管理などを、現場でも容易に一元管理できるシステムです。ここでは、生産管理システムが提供する具体的な機能のうち、PSI管理に役立つものについて詳しく解説します。

出荷実績(売上実績)のデータ化

生産管理システムでは、出荷された製品の数量やタイミングをリアルタイムでデータとして記録・管理することが可能です。バーコード管理やQRコード管理ができるIoT端末(バーコードリーダーやハンディーターミナル)を活用すると、PCがない現場でも即時に記録できるようになります。

製品ごとの販売状況や在庫変動をリアルタイムで把握すると、販売計画の達成状況を生産計画にフィードバックできるようになります。その結果、需要変動に起因する在庫不足や過剰生産を防ぎ、企業全体としての生産性向上に貢献します。

在庫のリアルタイム管理

生産管理システムの在庫管理機能を活用すれば、適正水準での発注点管理が実現します。原材料、仕掛品、完成品の在庫情報をリアルタイムで共有することで、作業者の経験と記憶に頼ることなく適正な在庫レベルを維持しやすくなります。

実際に、ある企業では生産管理システムの導入により、リアルタイムの在庫データと生産計画から将来在庫を自動計算できるようになりました。その結果、発注業務の属人化が解消され、発注漏れやミスが撲滅し、在庫管理や材料発注などの運用がスムーズになりました。

→在庫のリアルタイム管理、将来在庫の見える化に成功した事例はこちら

実績に基づく生産計画

生産管理システムには、生産計画機能も兼ね備えているものがあります。生産管理システムに過去の生産実績データを蓄積し、それを次回の生産計画に反映することで、精度の高い計画立案を支援します。例えば、各工程のリードタイムや設備の稼働状況、不良率などの実績データを詳細に記録し、これらを分析することで、作業の効率化やボトルネックの解消につなげます。

具体例として、急な大量受注が発生した際にも、過去の生産リードタイムや機械稼働状況を参考に、必要な設備の割り当てや人員の調整を行い、無理のない生産スケジュールへの落とし込みが容易になります。また、需要変動に対応した安全在庫の設定にも役立ちます。

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