エクセルで工程管理を効率化する方法 システムの方がおすすめの企業についても解説
公開日:2024年03⽉12⽇
最終更新日:2024年03⽉28⽇
中小・中堅規模の製造業におけるプロジェクト管理には、効率性と正確性が必要不可欠です。エクセルの豊富な機能を活用し、タスクの整理から進捗の可視化まで、現場に合わせたシステム導入のコツを解説します。バーチャートやガントチャートの作成方法から、テンプレートを用いた具体的な工程表の作り方、エクセルでの工程管理のメリットやポイントまで、より効率的に工程管理を行う方法を詳しく説明します。
工程管理の基本
工程管理とは、期限内に生産目標を達成するために、生産計画の立案や進捗の追跡、ツールやシステムの導入などを通して製造を管理することを指します。そのために、リソースの効率的な利用、コスト最適化、品質維持、リスク最小化などを行います。
エクセルを活用した工程管理の種類
エクセルは、特に中小・中堅規模の製造業会社において、工程管理を効率的に行うためによく使われているツールです。エクセルを使用して作成できる工程管理表の種類には、主にバーチャート、ガントチャート、グラフ式工程表の三種類があります。それぞれの特徴について説明します。
バーチャート
バーチャートは、プロジェクトのスケジュールを横棒で表現するシンプルな表です。作業がいつ始まり、いつ終わるのかを一目で確認できるため、プロジェクトの全体像を簡単に把握することができます。建設業界の現場などで使われるケースが多いです。
エクセルでバーチャートを作成する際は、横軸に時間や日付を、縦軸に作業の一覧を表示します。各工程に必要な日数を一目で見やすいメリットがある一方、各作業の関連性や進捗を管理するのには不向きです。
ガントチャート
ガントチャートは、製造業全般の工程管理において、最も一般的に使用されているツールです。タスクの開始日と終了日を可視化し、作業の関係や進捗率を示すことができます。
ガントチャートは、誰がいつまでに何を行うべきか明確にできるため、リソースを割り当てやすいメリットがあります。
本来、ガントチャートは主に進捗率の管理に使われますが、実際には日付や期日なども追記して使われるケースがあります。よって、バーチャートとガントチャートは、現場では混在して使われやすいといえます。
グラフ式工程表
グラフ式工程表は、プロジェクトの進捗を分かりやすく追跡できるようにするためのツールです。建設業界の施工管理などでよく用いられます。
縦軸に進捗率、横軸に日程を置き、各作業をグラフ上に点として示します。バーチャートで管理しやすい作業日数と、ガントチャートで管理しやすい進捗率、双方を管理できるグラフといえます。
グラフ式工程表は、複数のプロジェクトを同時に管理する際におすすめです。一方、グラフ作成の方法がやや複雑なため、管理者のエクセルスキルが必要となります。
エクセルでのガントチャート工程管理表の作り方
エクセルでガントチャートを作成する際には、テンプレートを活用することで時間を節約し、効率的にはじめることができます。
作業を洗い出す
まずは、プロジェクトに必要な全ての作業を洗い出し、リストアップします。それぞれの作業内容を記入することで、プロジェクトのスケールを正確に把握し、リソースの計画を立てる準備をします。
カレンダーを設定する
プロジェクトの開始日と終了日を基に、全体のタイムラインを設定します。プロジェクトの期間全体を一目でわかりやすく把握できるように、カレンダー形式で日付を整理し、作業の時間枠を設定します。
休日を設定する
休日をガントチャートに反映させ、実際の作業日数を正確に把握し、現実的な計画を立てられるようにします。
列幅、ウィンドウ枠を固定する
列幅やウィンドウ枠を固定し、スクロールして作業を追跡する際、重要な情報が画面に常に表示されるようにします。エクセルの「固定」機能を使用して、特定の列や行を固定し、常に見出しや日付が表示されるように設定します。
見出しを設定する
洗い出した作業をプロジェクトのタイムラインに沿って並べます。それぞれの作業がいつ開始され、いつ終了するのか決め、作業の順序を整理します。
見出しには作業の主要なタイトル、タスク、担当者名などを表示し、プロジェクトの全体像を一目で把握できるようにします。
明細表を設定する
明細表には、各作業のタスク名称、開始日、終了日、所要時間、進捗状況といった詳細情報を記載します。
この際、実際に各作業を完了させるのに必要な時間を推定する必要があります。所要時間を正確に見積もることで、リソースの割り当てや納期の管理をより正確に行うことができます。
進捗率の記入欄を作る
必要であれば、各作業の進捗率を記載する欄も追加します。
テンプレートの使用もおすすめ
工程管理表をエクセルで作るのが難しいと感じる人は、テンプレートの活用もおすすめです。Microsoft Excelのテンプレートのほかに、当コラムでも生産計画表エクセルテンプレートを無料配布しています。工程管理としても活用できますので、是非お気軽にご活用ください。
エクセルでの工程管理のメリット
エクセルを用いた工程管理には、以下のようなメリットがあります。
- 低コストで導入が可能
- 柔軟性が高い
- 親しみやすいデザイン
- テンプレートや関数が豊富で、カスタマイズの自由度が高い
エクセルは標準的な表計算ソフトなので、社用パソコンに既にソフトウェアがあれば無料で作成できます。また、レイアウトやカスタマイズの柔軟性も高いため、工夫次第で自社に合う工程管理表を作ることも可能です。
エクセルで工程管理を行う際のポイント
エクセルを用いて効率的に工程管理を行うために必要な、作業の正確な区分、分かりやすさ、ファイルの取り扱いなどといったポイントを解説します。
作業を正確に区分する
各タスクの内容、期間、担当者を明確に定義し、それぞれを適切に分類することで、全体の進捗状況を一目で理解できます。また、リソース配分や作業の優先順位が付けやすくなります。
わかりやすい表を作成する
わかりやすい表を作成することで、プロジェクトの進捗状況を直感的に把握することができます。また、色分けや条件付き書式を利用することで、締切日の近いタスクや、遅延が発生しているタスクを簡単に識別できるようになります。
ファイルの取り扱い
ファイルの保存、バックアップ、共有の方法を決めることで、データの損失や誤操作を防ぐことができます。また、バージョン管理を行って、プロジェクトの変更履歴を追跡し、必要に応じて以前の状態に戻せるようにします。従業員間でファイルを共有する際には、アクセス権限の設定を適切に行い、セキュリティを確保することも重要です。
エクセルでの工程管理のデメリット
多くの中小・中堅規模の製造業会社で使用されているエクセルでの工程管理ですが、人的ミスの発生しやすさ、データ管理の複雑さなど、さまざまなデメリットもあります。
人的ミスが起こりやすい
エクセルは非常に柔軟なツールであるため、誤った数値の入力や式のコピー&ペースト時の間違いなどといった人的ミスが、プロジェクト全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、多くの人が関与する大規模なプロジェクトでは、このようなミスが発生しやすく、修正が困難になってしまうこともあります。
また、複雑なエクセル関数で作成された工程管理表は、作成者以外が更新しにくいというデメリットもあります。データ作成者の退職などが原因で、正しい手順でエクセルファイルを更新できなくなり、管理精度が落ちる事例は多々あります。
データの管理
エクセルでは、データの整理や更新、追跡に労力がかかり、エクセルのシートが増えるにつれて、ファイルの操作性が低下します。そのため、大量のデータや複雑なプロジェクトの管理が難しいことがあります。また、複数のユーザーが同時にファイルを編集することができず、共同作業に不向きです。
計画変更に対応しにくい
エクセルで工程管理をしていて、プロジェクトの進行中に計画変更が必要になった場合、修正するのに大きな手間がかかってしまうことがあります。特に、複数の作業が絡んでいるプロジェクトでは、一つの変更が多くの作業に影響を及ぼすため、全体のスケジュール調整が複雑になりがちです。このような場合、工程管理システムを使用した方が、変更の影響を正確に把握することができます。
本格的なガントチャートを作成できない
エクセルでは、基本的なガントチャートは作成可能ですが、プロジェクト管理に必要な機能を全て備えた本格的なガントチャートの作成は難しいです。例えば、作業同士の関係の可視化、リソースの割り当て、進捗状況の自動更新など、工程管理システムを導入することで利用できる機能をエクセルで再現することは非常に難しいです。
メンバー間での共有が難しい
エクセルファイルの共有と同期は、特に大規模なチームやリモートワークが行われる環境では難易度が高いです。また、ファイルのバージョン管理が不十分であると、作業の重複や情報の非同期が発生してしまいます。さらに、ファイルのサイズが大きくなると、メールでの送信やオンラインストレージへのアップロードが難しくなってしまいます。
モバイル対応していない
エクセルはモバイルデバイスでは利用しにくいため、外出先や現場でプロジェクト管理を行う場合は不便です。特に、エクセルの複雑なフォーマットやマクロが使用されている場合、モバイルアプリでは正しく表示されなくなってしまうことがあります。
リアルタイムな更新が難しい
エクセルファイルは、複数の人が同時に作業を行う場合、リアルタイムで更新することができません。プロジェクトの最新の進捗が従業員間で共有されないと、コミュニケーションが遅れたり行き違ったりしてしまう可能性があります。
工程管理システムのメリット
中小・中堅規模の製造業会社では、工程管理システムを活用することで、プロジェクトの効率を大幅に向上させることができます。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- プロジェクトの計画から実行、監視まで透明性の高いコントロールができる
- リアルタイムでデータ更新ができる
- 作業同士の関係を明確化できる
- リソースを的確に配分できる
- ヒューマンエラーのリスクを減らす
- 従業員同士のコミュニケーションを活性化できる
- 進捗を一目で確認できる
- 属人的な管理を脱却できる
工程管理システムの最大のメリットは、リアルタイムのデータ更新と情報共有の簡単さです。たとえば、作業日報を工程管理システム上で管理すれば、作業進捗をリアルタイムに確認できます。手作業での進捗率データの更新も不要になります。さらに、それらのデータを複数人で共有しやすくなるのも大きなメリットです。
また、多くの工程管理システムは、誰でも簡単に情報を確認できるインターフェースになっています。スキルや経験を問わず、誰でも工程管理ができるようになることで、属人化の解消も実現できます。
エクセルより工程管理システムが向いている企業とは
以下に当てはまる企業は、エクセルより工程管理システムの方が向いているといえます。
- エクセルが苦手な従業員が多い
- なるべく最小限の手間で工程管理したい
- 製造工程を見える化して人員や設備の配置を見直したい
- 誰でも簡単に扱える管理方法にしたい
→工程管理システムを導入して業務効率化に成功した事例はこちら
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