納期管理とは?納期遅れの原因と改善方法を徹底解説
公開日:2024年06⽉13⽇
最終更新日:2024年09⽉25⽇
納期管理で顧客満足度や収益を上げたいのに、うまくいかない。このようなお悩みを持つ製造業の企業は少なくありません。仕入先の納期遅れや自社の生産能力不足などが原因で、納期遅延が発生するケースはよくあります。本記事では、納期管理の重要性や具体的な管理方法、納期遅れの原因について解説するとともに、生産管理システムを活用した納期管理の改善策をご紹介します。
製造業において「納期管理」とはなにか
納期管理とは、製品や部品を予定通りに顧客や仕入先に届けるためのプロセスを管理する業務です。適切な納期管理により、企業は効率的に生産を進め、顧客や仕入先との信頼関係を維持できます。
製造業が扱う納期には、顧客・仕入先・工場内の3種類があります。以下、それぞれの納期管理について詳しく説明します。
顧客に向けての納期
多くの企業が最も重点的に行うのが、顧客に向けての納期管理です。顧客に対する納期管理では、注文を受けてから製品を顧客に届けるまでの全過程の管理を行います。具体的には、受注処理、生産計画、出荷手続きなどが含まれます。
仕入先に向けての納期
仕入先に対する納期管理は、必要な部品や材料をタイムリーに調達するための業務です。これには、仕入先とのコミュニケーション、注文内容の確認、納品スケジュールの管理が含まれます。適切な納期管理により、生産ラインの停止を防ぎ、スムーズな生産活動を維持できます。
また、仕入先との良好な関係を築くことで、緊急時にも柔軟に対応できるようになります。例えば、顧客から納期前倒しを依頼された際、信頼関係が築けている仕入先であれば、対応してもらえる可能性が高くなる場合があります。
工場内に向けての納期
工場内での納期管理とは、各工程が計画通りに進むように管理する業務です。これには、工程間の連携、人員や設備などのリソースの最適配置、進捗状況の監視が含まれます。工場内での納期を正確に管理していると、製造スケジュールに遅れが生じた場合、迅速に対応することで影響を最小限に抑えることができます。
また、工場内の納期管理では、工場内の各部署が協力し、情報を共有することで、全体の効率を向上させることが重要です。さらに、定期的なレビューと改善策の実施により、工場内の納期管理の精度を高めることができます。
納期管理の重要性
納期管理は、製造業において顧客との信頼関係を築くために非常に重要です。約束した納期を守ることで、顧客の満足度が向上し、リピーターの増加や新規顧客の獲得が期待できます。また、納期遅延が発生すると、顧客の信頼を失い、企業の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、効率的な納期管理によって製造プロセスの無駄を減らせると、コスト削減にも繋がります。例えば、計画通りに製品を納品することで、在庫の過剰や不足を防ぎ、生産ラインの効率を最適化することができます。納期管理を徹底することで、企業全体のパフォーマンスが向上し、競争力が強化されます。
このように、納期管理は顧客満足度の向上、企業の信頼性維持、生産効率の最適化に直結する重要な要素といえます。
納期管理で把握すべき3つのリードタイム
納期管理を効果的に行うためには、製造リードタイム、購買リードタイム、出荷リードタイムの3つのリードタイムを正確に把握することが重要です。これにより、生産スケジュールの最適化と納期遵守が実現します。
製造リードタイム(対:生産ライン全体)
製造リードタイムは、注文を受けてから製品が完成するまでの時間です。このリードタイムは、生産計画の立案から実際の製造プロセス、品質検査までのすべての工程を含みます。
製造リードタイムを短縮するためには、製造工程の効率化や自動化の導入が必要です。例えば、生産ラインのボトルネックを解消し、各工程の無駄を削減することで、製造時間を短縮できます。適切な製造リードタイム管理により、生産効率が向上し、納期遅延のリスクを低減できます。
購買リードタイム(対:仕入先)
購買リードタイムは、部品や材料の発注から納品までの時間を指します。仕入先との連携が重要であり、適切な発注計画とタイムリーなフォローアップが求められます。
購買リードタイムを短縮するためには、信頼できる仕入先を選定し、安定した供給体制を構築することが必要です。例えば、仕入先との長期契約やJIT(ジャストインタイム)方式の導入により、必要な部品を必要な時に適量調達することが可能になります。これにより、在庫の最適化とコスト削減が実現し、製造工程の中断を防ぐことができます。
出荷リードタイム(対:配送業者等)
出荷リードタイムは、製品が完成してから顧客に届けられるまでの時間です。配送業者との協力体制が重要であり、効率的な出荷スケジュールの作成と迅速な配送手配が求められます。
出荷リードタイムを短縮するためには、配送業者との契約条件の見直しや、物流ネットワークの最適化が必要です。例えば、配送ルートの効率化や複数の配送業者の活用により、迅速な出荷とコスト削減を両立させることができます。適切な出荷リードタイム管理により、顧客満足度が向上し、リピート注文の増加が期待できます。
なぜ納期管理は難しいのか
納期管理が難しい理由は、複数の要因が複雑に絡み合っているためです。まず、製造プロセスは多くの工程が連動しており、一つの遅れが全体に影響を及ぼします。例えば、部品の調達が遅れると、製造開始が遅れ、結果として顧客への納期遅延に繋がりかねません。さらに、予期せぬトラブルや機械の故障、品質問題なども納期遅延の要因となります。
一方、発注した顧客側に問題がある場合もあります。無理な納期設定で注文したり、途中で仕様変更や納期変更を依頼することで、受注側が想定通り製造を進められなくなる場合もあります。
また、仕入先や物流業者との連携が不十分だと、情報共有が遅れ、迅速な対応が難しくなります。加えて、需要の急激な変動や顧客からの突然の変更要求も、納期管理を複雑にする要因です。
このように、納期管理は多岐にわたる要素を考慮する必要があり、一筋縄ではいきません。適切な計画と柔軟な対応が求められますが、それでも予期せぬ事態は避けられず、これが納期管理の難しさを増す一因となっています。
正確な納期管理にはリードタイム短縮が重要
正確な納期管理を実現するためには、製造プロセス全体を効率化し、納期遅延のリスクを最小限に抑えることが重要です。前述した各リードタイムの短縮を中心に、具体的な方法を紹介します。
製造リードタイムの短縮方法
製造リードタイムを短縮するためには、まず、生産計画の見直しと効率化を図ります。具体的には、各工程の作業時間を最適化し、ボトルネックを解消することが求められます。また、自動化の導入により、作業効率を向上させることも重要です。
仕入先リードタイムの短縮方法
仕入先との連携を強化し、必要な部品や材料をタイムリーに調達することで、仕入先リードタイムを短縮することも効果的です。仕入先が製造に時間がかかる製品は、発注計画を事前に共有するなど、リードタイム短縮の方法を相談することをおすすめします。
出荷リードタイムの短縮方法
出荷業務を効率化し、出荷リードタイムを短くするには、物流業者との協力体制を整える必要があります。場合によっては、自社配送の比較検討も有効です。
トラブルに備えるなら「安全在庫」を持つのもあり
予期せぬトラブルに備えるために「安全在庫」を持つのも一つの手です。安全在庫とは、不測の事態に備えて最低限確保しておく在庫のことです。安全在庫を持つことで、需要の急激な変動や仕入先からの供給遅延が発生した場合でも、製造プロセスが止まることなく継続できます。
例えば、重要な部品が急に不足した場合でも、安全在庫があれば直ちに生産に影響を与えることなく対応可能です。また、顧客からの急な追加注文にも柔軟に応じることができます。
ただし、安全在庫を持つことで、在庫コストが増加する点には注意が必要です。適切なバランスを保つためには、需要予測を基にした計画的な安全在庫の設定が求められます。安全在庫を効果的に活用することで、納期遅延のリスクを低減し、顧客満足度の向上を図ることができます。
エクセルでの納期管理のデメリット
エクセルは、多くの中小企業で納期管理に利用されていますが、いくつかのデメリットがあります。
まず、手動での入力が必要なため、人為的なミスが発生しやすくなります。データの入力や更新を間違えると、正確な納期管理が困難になります。
次に、データの一元管理が難しい点も挙げられます。複数の担当者が同時にデータを更新する場合、整合性を保つのが難しく、情報が分散してしまうことがあります。また、リアルタイムでの情報共有が難しいため、最新の状況を把握するのに時間がかかります。
このようなデメリットを踏まえると、エクセルでの納期管理には正確性や手間の部分に限界があるといえます。
生産管理システムの導入により、手間なく正確な納期管理が可能に
生産管理システムを導入すると、各工程の進捗状況をリアルタイムで把握し、迅速な対応が可能となり、納期管理がより正確かつ効率的になります。
生産管理システムの概要
生産管理システムとは、製造業の全工程を統合的に管理するためのソフトウェアです。主に、在庫管理、生産計画、進捗管理、品質管理、受発注管理や仕入先管理などの機能を持ち、生産に関わるデータを一元管理できます。これにより、各部門間の連携が強化され、情報の共有がスムーズに行われます。
例えば、システムを通して受注情報が即座に生産部門に伝達し、迅速に生産計画を立てることで、早々に納期に合う生産工程が組めるようになります。また、リアルタイムでの在庫状況や生産進捗の把握が可能となり、トラブル発生時の迅速な対応が可能です。これにより、納期遅延のリスクが減少し、顧客満足度の向上が期待できます。
生産管理システムの活用方法と導入事例
生産管理システムを活用し、製造プロセス全体を効率化することで、納期管理の改善が可能です。例えば、在庫管理機能を活用し、最新の在庫情報を見える化することで、必要な部品や材料の不足を防ぎ、適正在庫を維持できます。さらに、工程管理機能で各工程の進捗をリアルタイムで監視し、遅延の早期発見と対応が可能です。これにより、製造スケジュールの最適化が可能となり、納期遵守を実現できます。
ある食品メーカーでは、入出荷数や在庫数の管理を紙中心に行っており、ヒューマンエラーによる原材料欠品で納期遅延が度々起きていました。そこで、生産管理システムとバーコード管理を導入し、原料在庫管理をシステム化しました。正確な在庫管理により欠品を大幅削減できたうえに、在庫管理工数も95%削減できました。
参考記事:【原料在庫管理システム】毎日の原料在庫数の確認の手間を95%削減
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。