生産管理システムのクラウド型とは|特徴と製品選定のポイント
公開日:2020年03⽉03⽇
最終更新日:2024年10⽉15⽇
生産管理システムとは、「製品が完成するまでの原価管理・在庫管理・工程管理等のデータ管理を総合的に行い、顧客に届ける製品を最小コストで高品質に生産するためのシステム」です。
以前は「生産管理業務のシステム化は難しい」とすら言われていましたが、近年ではクラウド型の製品も登場し、導入費や維持コストの削減が見込めることから注目を集めています。
この記事では、生産管理システムのクラウド型について、以下3点をメインに解説しています。
- クラウド型の生産管理システムの特徴
- 導入時に気を付けるべきこと
- 製品選定のポイント
特に、「クラウド型の生産管理システムの導入を検討しているけど、どんなものなのかよくわかっていない」という方は是非ご参考ください。
その前に「生産管理システム」そのものについて理解したいという方は以下の記事が参考になると思います。
→生産管理システムのメリット・デメリット!導入失敗を防ぐコツも解説(出典:ITトレンド)
クラウド型の生産管理システムとは?
クラウド型の生産管理システムは、「システム開発企業によってあらかじめ用意されたサーバへインターネットを通じて接続し、利用する生産管理システム」です。
特長として、初期費用が抑えられること、インターネットに繋がっていれば場所を選ばずに利用できることなどがあります。
また、システムのバージョンアップをシステム開発企業側が行ってくれる点も大きな特徴です。
ちなみに、生産管理システムは「クラウド型」以外に、従来型の「オンプレミス型」というものもあります。
オンプレミス型の生産管理システムは、システムの利用場所や通信環境、カスタマイズなど全てを自社運用する、従来の生産管理システムを指します。
初期コストやメンテナンスの手間はかかりますが、生産管理システムを柔軟にカスタマイズできるのが特徴です。
クラウド型の特長をより理解しやすくするために、まずは「クラウド型」と「オンプレミス型」との違いを整理しておきましょう。
クラウド型とオンプレミス型の違い
- サーバの管理方法の違い
- 使用するネットワーク(接続方法)の違い
- 料金体系の違い
上記3点が、生産管理システムの「クラウド型」と「オンプレミス型」の違いです。それぞれ簡単に説明します。
1. サーバの管理方法の違い
サーバはシステムを動かすためのデータの保管庫のようなもので、生産管理システムの本体となるものです。
このサーバの場所と管理が、「クラウド型」と「オンプレミス型」で異なります。
クラウド型 | ベンダーが所有・管理するサーバを使用 |
---|---|
オンプレミス型 | 自社にサーバを設置して使用 システム導入後のサーバ管理も自社で行う |
2. 使用するネットワーク(接続方法)の違い
ネットワークとは、PC・タブレット・ハンディターミナルと生産管理システムを接続する方法のことを指します。
クラウド型 | インターネット経由での使用 外出先からでも利用可能 |
---|---|
オンプレミス型 | 自社のネットワーク内のみでの使用 外出先(自社ネットワーク外)では使用不可 |
3. 料金体系の違い
費用の目安としては下記のようになっています。
クラウド型 | ・初期導入費(数十万円~) ・月額使用料(数万円~) |
---|---|
オンプレミス型 | ・初期導入費(小規模で300~500万円、中規模で1000万円前後、ハイエンドで数千万円) ・年間保守料(数十万円) |
クラウド型は、システム導入時にサーバを設置する必要がなく、初期導入費を抑えることができますが、継続的に月額使用料を支払います。
月額使用料は機能の組合せや使用するデバイス数(または使用人数)によって異なるものです。
一方で、オンプレミス型は、自社の生産方式に合わせたオリジナル仕様を細かく作り込むことができますが、費用は高くつきます。
また、システムの保守をベンダーに依頼すると保守料金が必要になります。
簡単に言うと、システム販売元が準備したシステムやサーバの「レンタル使用料を支払う」のがクラウド型、システムをサーバごと「丸ごと購入する」のがオンプレミス型です。
クラウド型生産管理システムのメリット3つ
- 初期費用が安い
- 管理コストを削減できる
- 機能を徐々に追加していくことができる
クラウド型の生産管理システムを導入することで上記3つのメリットを得ることができます。
ここでは、それぞれのメリットが生み出す効果も簡単に説明します。
①初期費用が安い
クラウド型の生産管理システムは、導入時にサーバを自社で購入する必要がなく、その分コストを抑えることができます。(※サーバの価格は安価なものでも数十万円程度~)
またシステムの初期導入費用も低額(※5万円~)、場合によっては無料で導入できる場合もあり、オンプレミス型と比較してかなり低コストでスタートすることができます。
②管理コストを削減できる
生産管理システムをクラウド型で導入した場合、下記のようなサーバの管理業務を必要としないため、専属のIT担当者を配備する管理コストが発生しません。
- サーバやネットワーク機器の監視(常時)
- トラブル発生時の対応(随時)
- サーバ・ソフトウェアのバージョンアップ対応(随時)
- 定期メンテナンス(週1回 / 月1回)
従業員1人がメインの業務とIT業務を兼任することは、中小規模の会社でよくあることです。
こういった場面でクラウド型を採用すると、担当者の負担軽減やメイン業務への専念にもつながります。
③機能を徐々に追加していくことができる
クラウド型の生産管理システムでは、ベンダーがバージョンアップを行うことにより、使える機能が徐々に増えていきます。
また、ベンダーによっては、複数の機能を組み合わせて導入することができます。
その場合の機能とは、具体的に下記のようなものです。
- 生産計画
- 工程管理
- 在庫管理
- 部材在庫管理
- 品質管理(トレーサビリティ) …etc
クラウド型では、上記のような個々の機能を組合せて導入したり、後から追加したりすることができます。
これによって、初期費用を抑えつつ、自社の生産方式に沿った最適な生産管理システムを構築していくことが可能となります。
クラウド型生産管理システムのデメリット3つ
- 細かいカスタマイズに対応するのが難しい
- 情報セキュリティ対策を自社で管理できない
- オンプレミス型との組合せを検討している場合、データの連携が取りづらい
※導入環境や目的によっては発生しないものも含まれています。
これら、デメリットを把握していなかったことで、導入後に大きな問題が発生してしまうこともあるので、しっかり把握しておきましょう。
①細かいカスタマイズに対応するのが難しい
提供されるシステム仕様がベンダーによって決められているクラウド型の生産管理システムは、細かいカスタマイズに対応するのが難しいです。
自社の生産方式があまりにも特異的な場合、クラウド型の標準のパッケージシステムでは対応しきれない可能性があります。
自社がどんな生産方式を取っているか、その生産方式はパッケージシステムに合わせて変更できないものなのかを考えることが重要です。
②情報セキュリティ対策を自社で管理できない
クラウド型は、ベンダーが所有・管理するサーバを利用するため、情報セキュリティ対策を自社で管理できない不安とリスクがあります。
たとえ自社で管理しても情報セキュリティに関するリスクは常に伴うものですが、セキュリティに関してどういった機能を備えているか、また万が一、不正アクセスや情報漏洩があった際にどんな対策を取るのか、などを導入前に入念に確認しておくことが大切です。
また生産管理システム内のデータに機密情報が含まれていないか、自社のセキュリティ要件を満たしているかも事前にチェックしておく必要があります。
③オンプレミス型との組合せを検討している場合、データの連携が取りづらい
既にオンプレミス型のシステムを導入しており、クラウド型生産管理システムとデータの連携を行いたい場合は、サーバが自社と外部の2つに分かれることに注意です。
共通のデータを利用するには、CSVデータでデータを出力するなどして、オンプレミス側のサーバからデータを取り込むといった対応が必要となります。
これに対してクラウド側のベンダーがどのように対応してくれるか、また自社に新たな工数が増えないか、などを事前に確認しておきましょう。
クラウド型生産管理システムを導入する際の3つのポイント
自社の環境や使用目的によってはオンプレミス型の方が適切な選択になることもあり、必ずしもクラウド型が優れているというわけではありません。
- テスト導入が行えるか
- 自社のネットワーク環境は安定しているか
- 機密情報取り扱いに関する社内ポリシー
上記4点は、これまでに説明したクラウド型生産管理システムの特徴を踏まえた上での導入時にチェックするべきポイントです。
①テスト導入が行えるか
クラウド型生産管理システムを導入する際は、必ずテスト導入を行える製品や企業を選択しましょう。
下記のような実際に利用してみないと確信がもてない部分をチェックするためです。
- クラウド型の生産管理システムが自社に適しているか
- パッケージシステムを自社で利用することが出来るか
今までになかったシステムを導入するということは、一時的ではあれ生産現場に変化が生ずることを意味します。
スタッフの配置や業務の振り分け、新しいシステムをうまく扱えるかといったことも踏まえて、いきなり本契約するのは非常にリスクが高いです。
導入後に失敗に気づかないように、事前に数週間~1か月程度のテスト導入を行えるベンダーやサービスを選ぶべきです。
②自社のネットワーク環境は安定しているか
クラウド型の生産管理システムは、通信環境が不安定なところでは使い物になりません。
事務所だけでなく、実際にデバイスを使用する工場内で安定したインターネット接続を確保できるか確認しておきましょう。
③機密情報取り扱いに関する社内ポリシー
自社管轄外のサーバーを利用するというクラウド型サービスの特性上、不正アクセスや情報漏洩のリスクから、クラウド型サービス自体の導入が厳しい企業もあります。
導入を検討している製品のセキュリティ強度をしっかりと検討するとともに、社内の情報セキュリティや機密情報取り扱いのポリシーに則っているか確認しておくことが重要です。
自社にあったクラウド型生産管理システムの選び方
いざクラウド型生産管理システムを導入すると決まっても、「自社に合うシステムはどれだろう?」とシステムの選択で頭を抱えてしまうところもあるかと思います。
自社に合ったクラウド型生産管理システムを選択する際は、以下のステップで最適化していくのが理想です。
- 現状の悩み・課題を確認
- 優先度の高い業務課題を解消できる生産管理システムを選択
- テスト導入により実用性をチェック
- テスト結果からシステム運用の課題を抽出し、最適な運用方法を検討
- 実運用性が確認できたら本導入(ライセンスの購入)
- 次に優先すべき課題に取り組む(継続的な改善)
こうすることでシステム化の効果を実運用で確認しながら、業務課題を1つずつ確実に解消し、自社に合った生産管理システムを段階的に構築していくことができます。
また段階的にシステムの運用範囲を拡大していくことは、現場への負担軽減にもつながります。いきなり全てのシステムを導入すると、現場が働き方や環境の変化に追い付けず、運用しきれない可能性があるからです。
※「生産管理システムのランキング22選!機能や特徴、導入メリット、選び方をまとめてご紹介」記事も是非ご参照ください。
まとめ
- 生産管理システムには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2タイプある
- クラウド型生産管理システムは、必要最低限の機能だけを選択し、初期導入費を抑えることができる
- クラウド型生産管理システムは、細かいカスタマイズに対応することが難しい
- クラウド型生産管理システムを導入する際は、必ずテスト運用で実用性を確認すること
- 自社に合った生産管理システムを構築するには、必要最小限の機能からスタートし、徐々に運用拡大していくことが重要
中小企業にマッチするクラウド型生産管理システムはスマートFシリーズ
システムに詳しいIT人材がいない中小規模の会社なら、クラウド型の生産管理システムを導入するのが、現場の負担と導入コストを抑えられ、費用対効果も高いです。
そして、当社ネクスタのクラウド型の生産管理システム(スマートFシリーズ)では、自社に最適な生産管理システムを、最小限の手間と費用で運用スタートすることができます。
また、他の工場改善システムにはない特徴があります。
- 複数の機能別モジュールから最適なモジュールを選択可能
- テスト導入を、無料で即日利用可能
- 現場でのシステムの運用方法をコンサルティング
- 定期的な課題・要望のチェックで、改善活動を継続的にサポート
必要最低限の機能からスモールスタートし、コストを抑えながら継続的な改善ができるため、自社に最適な生産管理システムの段階的・効率的な構築が可能となります。
現在のお悩みや現場の運用状況をしっかりとヒアリングして課題提起からサポートさせていただきますので、何から改善すればいいかわからないという方は、是非1度ネクスタにご相談ください。
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。