在庫日数とは？在庫回転率との違いや計算式、おすすめの管理方法を紹介
公開日：2024年05⽉25⽇
最終更新日：2024年05⽉27⽇
この記事では、在庫管理における重要な指標である「在庫日数」について解説します。在庫日数とは何か、在庫回転率との違いは何か、どのように計算するのかを説明し、適正な在庫日数の設定方法や、在庫日数を改善するためのポイントを説明します。また、在庫管理システムの重要性や具体的な機能など、在庫管理の効率化に役立つ情報を紹介します。在庫日数を把握し、適正な在庫管理に役立てていただけると幸いです。
在庫日数とは
在庫日数は、現在庫が何日の売上分に相当するかを表します。在庫日数が短いほど、在庫量を圧縮できていることを意味しますが、短すぎると欠品リスクが高まるので追加の発注や生産が必要となります。販売機会の損失に繋がる可能性もあります。一方、在庫日数が長すぎると、在庫が滞っていることを意味し、資金の無駄につながります。
在庫日数による管理は、季節性商品を扱う小売業界や、賞味期限の管理が必要な飲食店などで使われるケースが多い傾向にあります。しかし、期限管理が必要な原材料や季節性製品を扱う製造業でも活用できます。
在庫日数が重要な理由
在庫日数が重要な理由は、資金管理と在庫管理の効率に直結するためです。在庫日数が短いほど、在庫の回転が速く、商品が売れるまでの期間が短いことを意味します。よって、在庫に投じた資金をより早く回収し、新たな投資や運転資金に充てることができます。また、在庫日数が適切に管理されていれば、在庫が滞ることを防ぎ、倉庫スペースの有効活用やコスト削減にもつながります。
また、目の前の在庫数や在庫金額に左右されずに、適正在庫を把握するうえでも、在庫日数は重要です。在庫数が多く、倉庫スペースを圧迫する品物があったとしても、出庫頻度が高く在庫日数が少ない（＝在庫がすぐなくなる）品物であれば、在庫数を減らすと欠品リスクが上がります。このような判断にも、在庫日数は役に立ちます。
在庫回転日数との違い
在庫日数と似ている「在庫回転日数」という用語があります。在庫回転日数は、在庫が何日で入れ替わるかを示します。名前の通り、在庫が1回転するまでの日数を指します。
一方、在庫日数は、何日分の売上に相当する在庫量があるかを表します。何日で在庫が入れ替わるか、という「日数」に着目する在庫回転期間に対し、在庫日数は「売上」という金額をベースに考えます。
在庫回転日数が短いほど、在庫日数も短くなります。
在庫回転率との違い
在庫回転率は、一定期間で在庫がどれだけ入れ替わったかを示す指標で、在庫がどれだけ効率的に売上に貢献しているかを示します。つまり、在庫回転率が高いほど、在庫の回転が速く、在庫投資に対する売上高の割合が大きいことを意味します。一方、在庫日数は、現在庫が何日分の売上にあたるのかを示し、あくまで「今の在庫状況」に着目する指標です。「一定期間の在庫管理の効率性」を測る在庫回転率とは、目的が異なるといえます。
| 在庫日数 | 在庫回転期間 | 在庫回転率 | |
| 示すもの | 在庫が売上何日分に相当するか | 在庫が1回転する期間 | 一定期間で在庫が何回入れ替わるか |
| わかること | 在庫が適正かどうか | 在庫管理の効率性 | 在庫管理の効率性 |
在庫日数の計算方法
在庫日数の基本の計算式は、以下のとおりです。
在庫日数＝在庫金額（売価）÷ 1日の平均売上高
たとえば、現在の在庫高が100万円の品物があるとします。1日の平均売上高が10万円だとすると、現在の在庫日数は10日という計算になります。もし発注残がない状態であれば、10日以内に仕入れ、もしくは生産する必要があります。ちなみに、1日の平均売上高は、年間売上 ÷ 365日で求めるのが一般的です。
在庫日数は、月単位や週単位で計算することができ、それぞれの計算式が存在します。
月単位の計算式
月の在庫日数を計算するための式は、以下の通りです。
月の在庫日数 = 月平均在庫金額（売価） ÷ 月平均売上高
月の平均在庫金額が、売価ベースで100万円の品物があるとします。もし、毎月平均で500万円を売り上げているとしたら、月単位の在庫日数は100万円 ÷ 500万円 ＝ 0.2ヶ月、つまり6日となります。
週単位の計算式
週の在庫日数を計算するための式は、以下の通りです。
週の在庫日数 = 週平均在庫金額（売価） ÷ 週平均売上高
週単位での在庫日数を計算することで、より短い期間での在庫の状況を把握することができ、状況に合わせて素早く対応することが可能になります。
在庫日数の目安の決め方
適正な在庫日数は、企業の業種や商品特性、市場動向などを考慮して、自社に適した水準で設定する必要があります。
需要の変動が大きい商品
需要の変動が大きい商品、季節性の高い商品を扱う場合、出庫量が多い時期と少ない時期に分けて在庫日数を把握することで、需要予測の精度を高められます。需要予測が正確であれば、適正な在庫量を維持しつつ、欠品のリスクを抑えることができます。
また、リードタイムの短縮化を図ることで、在庫が滞ることを防ぎ、在庫日数を短くすることもできます。
安全在庫の設定も効果的
適切な在庫日数を維持するためには、安全在庫の設定も重要です。安全在庫とは、需要の変動や供給の遅れに備えて確保する最低限の在庫のことです。安全在庫の把握も、欠品のリスクを抑えつつ、在庫の過剰保有を防ぐために役立ちます。
在庫日数を把握するメリット
在庫日数を正確に把握することで、適切な在庫数を維持し、売り場のスペースを効率的に活用することができます。また、商品を入れ替えるタイミングを最適化し、在庫が滞らないようにすることができます。
目安の在庫量がわかる
在庫日数を把握することで、適正な在庫数を維持できるようになります。在庫日数が短すぎると、欠品のリスクが高まり、販売機会を逃してしまう可能性があります。一方、在庫日数が長すぎる場合、在庫が滞ったり劣化しやすくなり、資金の無駄につながります。在庫日数を適切に管理することで、需要に合った在庫数を維持し、欠品や在庫の過剰保有を防ぐことができます。
売り場や倉庫の管理を効率化できる
在庫日数を把握することで、売り場のスペースを効率的に活用することができるようになります。在庫日数が長い商品は、売り場に長期間陳列されることになるため、スペースを占有してしまいます。一方、在庫日数が短い商品は、頻繁に売り場から撤去され、こまめに新たな商品に入れ替える必要があります。在庫日数を考慮して商品を配置することで、売り場のスペースを最大限に活用することができます。
商品を効率化よく入れ替えられる
在庫日数を参考に商品の入れ替えを行うことで、在庫が滞ることなく、売上の維持・向上をに繋げることができます。在庫日数が長い商品は、需要が低下しているため、新たな商品に入れ替える必要があります。一方、在庫日数が短い商品は、需要が高く、継続的に販売することが必要です。
在庫日数が役立つのはこんな時
在庫日数は、複数の商品を管理する時や、時期ごとに在庫量を見極めたい時、在庫管理にかかるコストを見直したい時などに、活用することができます。
多様な種類の商品の在庫管理
需要の動きや商品の特性が異なる複数の商品を扱うと、在庫管理が複雑になります。このような場合、在庫日数を活用することで、商品ごとの適切な在庫量を把握し、効率的な在庫管理を行うことができます。
例えば、在庫日数が長い商品については、需要予測の見直しや販売戦略を再検討したり、在庫日数が短い商品は、欠品のリスクを避けるために、適切な発注量や在庫補充のタイミングを調整することが重要です。
時期によって出庫量が異なる商品の適正在庫の見極め
季節や時期によって需要が大きく変化する商品もあります。小売業界でいえば、冬物・夏物商品や、ギフト需要などによる需要変動がある商品が代表的です。製造業でも、トラクターや田植え機などの農業機械は、季節性製品といえます。
このような場合、過去の販売実績や需要予測に基づいて、時期ごとに適切な在庫日数を見極めることが重要です。例えば、需要が高まる時期には、在庫日数を短めに設定し、欠品のリスクを抑えつつ、売上の最大化を図ることができます。一方、需要が低下する時期には、在庫日数を長めに設定し、在庫が滞らないようにすることができます。
在庫コストを見直したいとき
在庫管理には、倉庫の維持費や商品の保管費、在庫の劣化損失などによるコストがかかります。しかし、在庫日数を短縮することで、在庫の回転率を高め、在庫管理のコストを削減することができます。
例えば、在庫日数が長い商品については、需要予測の精度を高めたり、キャンペーンを実施したりすることで、在庫が滞らないようにし、コストの削減につなげることができます。また、在庫日数を適切に管理することで、過剰な在庫を早期に発見し、処分や値下げなどの対応も可能になります。
在庫日数の改善方法
定期的に在庫日数を見直し、改善することで、より効率的な在庫管理が可能となります。需要予測の精度向上や定期的な棚卸し、在庫の見える化を進めることが重要です。さらに、在庫管理システムの導入や、サプライチェーンの最適化などにも取り組むことで、在庫日数を短縮できる可能性があります。以下では、これらのポイントについて詳しく説明します。
需要予測の精度向上
まず、需要予測の精度を高めることが重要です。過去の販売実績データや市場動向、顧客の需要パターンなどを分析し、できるだけ正確な需要予測を行うことで、適切な発注量や在庫補充のタイミングを決めることができます。需要予測の精度が高ければ、在庫の過剰保有や欠品のリスクを抑えつつ、在庫日数の短縮化を図ることができます。
定期的な棚卸し
定期的な在庫の棚卸しを行い、在庫量を正確に把握し、データ上の在庫数量とズレがないか確認することも大切です。在庫の紛失や劣化などを早く見つけ、処分や値下げなどの対応が可能になります。
在庫の見える化
在庫の可視化を進めることも効果的です。在庫の保管場所や数量、価値などの情報を可視化し、社員全員で共有することで、管理を効率化することができます。
在庫管理システムの導入
在庫管理システムの導入もおすすめです。在庫管理システムを活用することで、在庫日数の計算に必要な売価や売上高のデータを瞬時に確認できます。また、入出荷や移動、在庫数量の管理を自動化し、業務を効率化することも可能です。また、在庫管理システムによるデータを分析すると、需要予測の精度をあげることにも繋がります。
サプライチェーンの最適化
サプライチェーンの最適化にも取り組むことも重要です。調達先との連携を強化し、リードタイムの短縮化や、適切な発注ロットの設定などを行うことで、在庫の効率的な管理につなげることができます。また、物流プロセスの改善や、倉庫管理の最適化などを行うことで、在庫日数の短縮化を図ることが可能です。
在庫管理システムの重要性
効率的な在庫管理を実現するためには、在庫管理システムの導入が効果的です。前述の通り、在庫管理システムを活用すると、在庫の可視化や業務の自動化、データ分析などが可能になり、在庫管理の精度や効率を大幅に向上させることができます。また、在庫管理システムは、在庫の最適化や需要予測の精度向上、リードタイムの短縮などにも繋がるため、在庫日数の改善や在庫管理コストの削減も可能になります。
在庫管理システムとは
在庫管理システムとは、企業が保有する在庫を効率的に管理するためのソフトウェアです。在庫の入出荷や在庫数量、在庫の保管場所、在庫の価値などの情報を一元管理し、リアルタイムでの在庫状況の把握を可能にします。
在庫管理システムには、様々な種類があります。クラウド型のシステムであれば、初期投資を抑えつつ、スケールアップしやすいというメリットがあります。また、販売管理システムや購買管理システムと連携できる在庫管理システムを使えば、在庫の入出荷情報を自動的に反映させることができます。
在庫管理システムを選ぶ時は、自社の業務や在庫管理の課題に合わせて、必要な機能を備えたシステムを選ぶことが重要です。また、システムの導入にあたっては、十分な準備と社内教育が必要です。
在庫管理システムの具体的な機能
在庫管理システムには、以下のような機能があります。
- 在庫の入出荷管理：バーコードやRFIDによって、在庫の入荷や出荷、移動などの情報を登録し、管理することができます。
- 在庫数量の管理：在庫の実数量や帳簿上の数量を管理し、ズレがないか確認することができます。在庫の保管場所や賞味期限、ロット番号などの情報も管理できます。
- 在庫の見える化：在庫の保管場所や数量、価格などのデータを可視化し、リアルタイムで在庫状況を把握できるようになります。
- 需要予測：過去の販売実績データや市場動向、季節要因などを分析し、需要を予測することができます。
- 発注管理：需要予測に基づいて、適切な発注量や発注タイミングを分析し、発注業務を自動化することができます。
- 在庫評価：在庫回転率や在庫日数、在庫金額などを計算し、在庫管理を効率化することができます。
- レポート作成：在庫の状況や推移、在庫管理の効率性などに関するレポートを作成することができます。
→在庫管理システムについての詳しい説明、サービス比較はこちら
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。
