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特殊特性とは?IATF16949要求事項、CC・SC・KC特性との関係まで徹底解説

特殊特性

特殊特性とは、IATF16949規格において特別な管理を要求されている、製品の品質・安全性に直結する重要な特性です。重大な事故や法的トラブルにつながるリスクがあるため、特殊特性の適切な設定・管理は品質保証の要です。

本記事では、特殊特性の定義から具体例な選定プロセス、そしてCC、SC、KC特性などの種類と管理方法について詳しく解説します。これにより、安全で信頼性の高い製品作りを実現するための指針を提供します。

特殊特性とは

DX工場イメージ

特殊特性(Special characteristics)とは、特別な管理が必要とされる、製品の性能・品質・安全性に大きな影響を与える特性です。自動車産業向けのIATF16949規格で定義されたものであり、製品の安全性、顧客の要求、法規制を満たす必要があります。このため、特殊特性の識別と管理は、品質保証の中心的な役割を果たします。

IATF16949規格での要求事項ー8.3.3.3 特殊特性

品質マネジメントシステム(QMS)規格であるIATF16949では、特殊特性の管理に関する明確な要求事項を規定しています。具体的な要求事項をわかりやすく表現すると、次の4項目です。

  • リスク分析、コントロールプラン、作業標準など、製造に必要な文書中へ明示する
  • 特殊特性に関する製品・製造プロセスを厳格に監視・管理する
  • 顧客から要求された特性を特殊特性に指定する
  • 顧客指定の記号と容易に照合できるように整理する

特殊特性が重要な理由

特殊特性は、製品の品質や安全性、法規制を満たすために不可欠です。特に自動車産業では、製品の故障が重大な事故やリコールに直結します。

また、特殊特性は、顧客の要求や法規制に基づいて指定されることが多くあります。管理が不十分な場合、顧客の信用失墜に加えて、法的な問題に発展する可能性もあります。

このように、特殊特性の適切な設定・管理は、製品の安全性担保・品質保証の観点だけではなく、企業のブランド価値を守ることにもつながります。

特殊特性の選定プロセス

特殊特性の特定は、製品設計から製造・検査まで、様々な製品仕様・リスク分析を吟味して行われます。具体的には、次のような文書作成の過程で行われる協議により決定されます。

  • 製品設計・工程設計で作成されるリスク分析(設計FMEA、工程FMEA)
  • 工程設計で使用されるQC工程図
  • 製造で使用される作業指示書、操業記録
  • 製品検査で使用される検査手順、測定システム

IATF16949にはリスクベースの考え方に関する要求事項があるため、これらと整合性のある方法で決定する必要があります。

特殊特性の具体例

特殊特性に指定されるものは、次のような自動車部品・特性です。

  • 安全に直結する部品の特性:ブレーキ、エアバッグ、燃料系部品、シートベルトなど、
  • 顧客の大きな付加価値に関係する特性:エンジンの出力性能、燃費に関わる特性、など
  • 法規制に関わる特性:排出ガス規制に対応する排気システムの特性など

これらの特性は、故障した場合に重大な事故を引き起こす可能性があるため、特別な管理が必要です。

特殊特性を決める要因①:CC特性

医薬品生産ライン

CC(Critical Characteristic)特性は、一つでも機能が失われてしまうと、安全性に対して重大な影響を与える特性です。人命にも関わるため、これらの特性は、顧客や法規制の要求を満たすために特別な管理が要求されます。

製品安全に関わる特性

製品の安全性に直接影響を与える特性は、最も厳しい管理が求められます。適切に管理されない場合、重大な事故により人命を脅かす法的トラブルを引き起こすリスクがあるためです。

特に、自動車や航空宇宙、医療機器といった安全性が最優先される産業における製品では、安全に関わる特性として、CC特性は非常に重要な役割を果たします。たとえば、自動車のエアバッグの展開特性は、衝突事故における安全性を左右します。このため、製品・工程の設計から製造・品質検査・出荷まで一貫して管理される必要があります。

顧客から指定されている特性

顧客が指定する特性もCC特性に含まれます。例えば、航空機メーカー・自動車メーカーは、製品に対して特定の要求を設け、その要求を満たすことをサプライヤーに求めることがあります。

具体的には、航空機や車体の構造部分に使用される材料の引張強度や硬度は、機体運転中の安全と密接に関わるため、CC特性として指定されます。これらの部品が設計どおりの強度特性を持たない場合、空中での破損など重大なリスクを伴います。このため、顧客からの指定に従って高度に管理します。

法規に関わる特性

CC特性の中には、法規制を遵守するために管理が必要な特性も含まれます。自動車業界では、排出ガス規制や衝突安全基準など、厳しい法的要求が課されています。

具体的には、エンジンの排気ガス制御に関連する部品が挙げられます。これらが適切に管理されない場合、大気汚染を引き起こす原因となり、企業として法的な制裁や罰金が科されるリスクがあります。

CC特性の具体例

CC特性の代表的な例として、自動車業界、航空業界、医療業界で次のような特性が挙げられます。

  • 自動車業界:ブレーキシステム、シートベルトの強度、有害な排出ガスを抑える触媒コンバーター
  • 航空業界:航空機の構造材、燃料系統の耐圧性能・シール性
  • 医療機器業界:医療機器の電気的安全性

これらの部品は、一つの機能が失われるだけで致命的な影響を及ぼすため、非常に厳しい管理が必要です。

特殊特性を決める要因②:SC特性

薬品工場

SC(Significant Characteristic)特性は、製品の基本的な機能・性能に影響を与える特性をいいます。CC特性は、単一機能が失われると直ちに致命的影響を及ぼすものを指すのに対して、SC特性では、複数の要因のうち品質、安全性、性能、法令順守への影響度が大きい特性を言います。

製品の基本的機能

製品の基本的機能に直接影響を与える可能性の高い特性の一つです。

具体的には、車両の制動性能に関わるブレーキディスクの摩耗耐性が例示できます。摩耗耐性が不十分だと、ブレーキが早期に劣化し、事故のリスクが高まります。このため、摩耗耐性はSC特性として管理され、ブレーキの効率や耐久性が確保されます。

基幹部品の精度

基幹部品における精度などは、特にSC特性として識別されます。

SC特性が設計通りに実現されるためには、適切な材料特性を有していること、製造プロセスにおいて寸法精度や形状精度が高いこと等が必要です。

例えば、自動車基幹部品であるエンジンにおいて、シリンダー内径やピストン寸法は重要特性である圧縮比に影響を与えるため、高い加工精度が不可欠です。これらの寸法誤差が大きいと、エンジンの性能が著しく低下します。

SC特性の具体例

SC特性の具体例としては、エンジンの燃焼室内の圧力や、トランスミッションの動作精度が挙げられます。

  • 自動車業界:乗り心地や安定性い大きく影響する車両のサスペンションシステム
  • 航空業界:飛行性能に大きく影響する航空機の翼の形状・表面の滑らかさ

特殊特性を決める要因③:KC特性

品質

KC(Key Characteristic)特性は、製品の品質や性能に影響を与える特性です。

製造プロセスでの重要管理項目

KC特性は、製造プロセスの中でも特に重要な管理項目です。具体的には、精密部品を加工する作業場の温度・湿度などが挙げられます。

どのような材料であっても、温度変化や吸湿があれば僅かな膨張収縮をします。このため非常に精密な加工精度を要求される部品などの製造プロセスにおいて、温度・湿度の管理は非常に重要な意味を持ちます。

ただし、全ての作業場の温度・湿度がKC特性というわけではありません。特定のCC特性・SC特性に対して、温度・湿度が密接に関係する場合のみKC特性に指定されます。

KC特性の具体例

KC特性の具体例としては、次のような製造プロセスパラメータが挙げられます。

  • 車両に使用される金属材料のプレス圧力:衝突安全性に影響
  • 燃料ポンプに使用される樹脂材料の熱処理温度:製品の耐久性に影響。

製造プロセスパラメータとしてはごく一般的なものであっても、顧客の製品特性に大きな影響を及ぼす場合はKC特性とみなす必要があります。

特殊特性に求められること

生産管理フロー

特殊特性の管理には、IATF16949規格の要求事項に基づく運用が求められます。具体的には、特別な記号による識別、文書化、測定システム解析、トレーサビリティ、統計的工程管理(SPC)などが挙げられます。

QMS文書へ特別な記号をつけて管理

特殊特性は、QMS文書に特別な記号をつけて明確に識別する必要があります。これにより、製造工程や検査プロセスでその特性が確実に管理されていることを確認することができます。

注意点として、顧客が指定する記号を識別できる必要があります。顧客指定の記号と自社記号が異なる場合、照合できる一覧表を作成しておきましょう。

関連するルールを全て文書化

特殊特性に関連する管理ルールは、すべて文書化され、従業員・顧客がいつでも確認できるようにする必要があります。ここでいう文書とは、次のQMS文書4点を指します。

  • 製品仕様または製造のための文書
  • コントロールプラン
  • 関係するリスク分析資料
  • 標準作業・作業者指示書

測定システム解析(MSA)

特殊特性の測定には、測定精度に関する信頼性確認のため、測定システム解析(MSA)を実施する必要があります。

MSAにより、計測機器の測定誤差・作業者による測定バラツキなどを見える化し、計測精度が許容範囲内であるかどうかを確認するために使用されます。

厳格なトレーサビリティ

特殊特性の管理には、製造履歴のトレーサビリティを確保することが不可欠です。ここでのトレーサビリティとは、製造工程・製品検査だけでなく、設計・開発段階での検証過程・結果、妥当性確認の結果までを含みます。

これにより、問題が発生した場合、迅速に影響範囲や発生原因を特定し、適切な事後対応が可能になります。

工程・検査データのSPC管理と高いCpk

統計的工程管理(SPC)は、特殊特性の品質安定性を保証するために使用されます。

IATF16949における特殊特性では、品質検査で求められるCpk(工程能力指数)を1.67以上(不良率0.6ppm以下)という非常に高い水準に維持することが求められます。

なお、Cpkは以下の式で算出されます。

 Cpk :(管理中心ー管理下限)/(3 × 標準偏差)、(管理上限ー管理上限)/(3×標準偏差)のうち値が小さい方

定期的なレビュー

特殊特性の管理状況は、定期的にレビューすること、必要に応じて改善の取り組みを実施することが必要です。

例えば、特殊特性の管理状況を一覧化したフォーマットを使用することで、必要事項が網羅された有効性の高いレビューが実施可能となります。

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