先入れ先出しとは 在庫管理での導入方法とメリット・デメリット、実施事例を解説
公開日:2024年07⽉30⽇
最終更新日:2024年09⽉26⽇
製造業の在庫管理担当者にとって「先入れ先出し」は重要な考え方です。本記事では、先入れ先出しとは何か、そのメリットやデメリット、具体的な実施方法、よくある課題と解決策について詳しく解説します。先入れ先出しの導入によって得られる効果と、実施しないリスクについても紹介し、効果的な在庫管理を実現するためのポイントをお伝えします。
先入れ先出しとは何か
先入れ先出し(First In, First Out, FIFO)とは在庫管理方法の一つで、最初に入荷した商品や材料を最初に出荷することを意味します。この方式は在庫の品質劣化や期限切れを防ぐために広く利用されています。
特に自動車部品業界、食品業界では、在庫の品質管理や期限管理が厳しく求められるため、先入れ先出しは非常に重要な役割を果たしています。
先入れ先出しのメリット
先入れ先出し(FIFO)を導入することで次のようなメリットが得られます。
品質劣化や期限切れの防止
先入れ先出しを採用することで、最初に入荷された製品から順に出荷されるようになります。そのため、在庫が長期間放置されることなく、常に古い在庫が先に出荷されます。
これにより、在庫の品質の劣化や期限切れのリスクが大幅に低減され、廃棄コストを削減できます。また、在庫のローテーションが円滑に行われるため、品質の安定化を図ることができます。
在庫棚を整理整頓しやすい
先入れ先出しを導入すると、在庫がどこにあるか一目でわかるようになり、在庫の位置が固定されるため、棚卸し作業がスムーズに行えます。また、在庫の動きが明確になるので、無駄なスペースを使わずに効率的な在庫管理が可能です。
先入れ先出しのデメリット
先入先出法は在庫管理の方法として多くのメリットがありますが、一方で以下のデメリットも存在します。
ロットや期限データの管理が必要
先入れ先出しを適切に運用するためには、在庫のロット番号や期限データを正確に管理する必要があります。そのためには、各商品の入荷日や使用期限を追跡し、古いものから順に出庫する仕組みが必要です。
特に、複数のロットが混在する場合、誤って古い在庫を使わずに新しい在庫を先に使用してしまうリスクが高まるため、在庫管理システムなどによる徹底したデータ管理と従業員への教育が不可欠です。
入荷受入時の作業工数の増加
先入れ先出しでは、入荷時に商品の整理整頓が必要になります。新しく入荷した商品を既存の在庫の後ろに配置しなければならないため、作業工数が増加する可能性があります。
特に、倉庫のスペースが限られている場合や、大量の入荷がある場合には、これが大きな負担となることがあります。このため、効率的な作業プロセスを設計し、適切な労働力を確保することが重要です。
先入れ先出しの具体的な実施方法
先入れ先出しを実施するためには次のようなステップが重要です。
在庫管理方法の見直しと教育
先入れ先出しを導入する前に、現状の在庫管理方法の見直しが必要です。まず、現行の在庫管理方法を把握し、先入れ先出しに適応できるように在庫棚や保管場所を整理します。
また、従業員への教育も重要です。現行との変更点や新しい手順をあらかじめ説明し、スムーズに移行できるようにします。特に、在庫の回転率や品質管理の重要性について説明し、先入れ先出しを行うことによる効果を理解してもらうことが重要です。
段階的な導入
先入れ先出しを段階的に導入する方法として、まず一部の製品やエリアで試験運用を行います。この段階で問題点を洗い出し、改善策を講じます。
次に、段階的に適用範囲を広げ、最終的には全社的に導入します。導入初期には、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、柔軟に対応することが求められます。段階的に進めることで、導入時の混乱を最小限に抑え、効果的な先入れ先出しの運用が可能になります。
導入後のフォローアップと評価
先入れ先出しを導入した後のフォローアップと評価も重要です。定期的に在庫の品質や期限管理の状況をチェックし、必要に応じて改善策を講じます。また、従業員からのフィードバックを収集し、運用上の問題点を把握することで、先入れ先出しの効果を最大限に引き出すことができます。
先入れ先出しを実施する上での注意点
先入れ先出しを効果的に実施するためには、いくつかの注意点があります。
先入れ先出しのルールを現場に周知する
先入れ先出しを効果的に実施するためには、ルールを現場の全員に周知することが必要で、特に「先に入庫された商品から順に出庫する」という基本原則を理解してもらわないと混乱を招く恐れがあります。
周知してもらうために、現場のスタッフに対して定期的なトレーニングを実施し、ルールの徹底を図ることや、掲示物やマニュアルを用意していつでも確認できる環境を整えることが重要です。
適正在庫を保ち、在庫過多にならないようにする
先入れ先出しを実施する際には、適正在庫を保つことが重要です。過剰な在庫を抱えると、管理が煩雑になり、古い商品の廃棄リスクが高まります。
在庫過多を避けるためには、適切な発注計画を立てることや、適正在庫を維持するための定期的な棚卸しをすることが大切です。これにより、無駄なコストを削減し、効率的な在庫管理が実現できます。
在庫管理システムなどで工数増をカバーする
先入れ先出しを導入すると、在庫の管理や出庫作業の手間が増えることがあります。この工数増をカバーするためには、在庫管理システムの活用が効果的です。
在庫管理システムを導入することで、在庫の入出庫を自動化し、作業の効率化を図ることができます。また、システム上で在庫の状況をリアルタイムに把握できるため、迅速な対応が可能になります。これにより、作業負担を軽減しつつ、正確な在庫管理を実現できます。
これらの注意点を押さえることで、先入し先出れの効果を最大限に発揮し、効率的な在庫管理が実現できます。
製造業の先入れ先出し活用事例
製造業において、先入れ先出しを導入することで在庫管理を効率化できた事例を紹介します。
自動車業界:ハンディ端末のアラート機能で誤出荷防止
部品の品質管理が重要な自動車業界の企業では、弊社の在庫管理システムを導入して先入れ先出しに取り組み、品質劣化を防いだだけなく、在庫管理の効率化も実現しました。
具体的には、ハンディ端末を使って入庫時に入荷日を紐付け、出庫時に新しいロットを読み取ると警告が出るシステムを採用しました。これにより、誤出荷を防止し、古いロットの確認を行う手間を削減しました。また、PCで在庫のリアルタイム状況を確認できるようになり、在庫管理の効率化も実現しました。
詳細はこちら:ハンディ端末を用いた入出庫記録で先入先出を実現
食品業界:在庫管理システムの入出庫管理で廃棄ロス防止
賞味期限の管理が特に重要な食品業界の企業では、在庫管理システムの導入により、先入れ先出しの徹底や正確な在庫管理が可能になりました。
具体的には、紙での在庫管理をハンディ端末とPCでの管理に切り替え、正確な入出庫記録とエリア管理を実現しました。これにより、在庫のリアルタイム把握が可能となり、先入れ先出しの徹底につながり、無駄な廃棄を削減し、在庫欠品による製造中断や納期遅延も防ぐことができました。
詳細はこちら:毎日の原料在庫数の確認の手間を95%削減
先入れ先出しを効率的に行うには在庫管理システムの導入がおすすめ
製造業において先入れ先出しを導入することは、適切な在庫管理を行ううえで非常に重要です。一方で管理工数が増えるため、効率的に運用することが必要です。製造業向けの在庫管理システムでは、ロットごとの在庫期限や入出庫日などを一元管理できるため、工数を増やすことなく、効率的な先入れ先出しを行うことができます。
製造業向けの在庫管理システムについて各社のサービスをまとめているので、こちらの記事も合わせてご覧ください。
→ 製造業向け在庫管理システム22選!機能や特徴、導入メリット、選び方をまとめて紹介
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。