棚卸しとは?会計上の意味から製造業特有の課題・効率化の方法まで徹底解説
公開日:2023年11月14日
最終更新日:2026年03月31日

棚卸しとは、現場の在庫数を実際に確認し、帳票やシステム上の在庫データを正しい状態に戻すための確認作業を指します。特に製造業では、原材料や仕掛品を含めた在庫精度が、利益計算や生産計画の前提となります。
本記事では、棚卸しの基本的な考え方から目的、実地棚卸と帳簿棚卸の違い、現場で起きやすい課題とその解決策までを、実務視点でわかりやすく解説します。また、近年導入企業が増えつつある在庫管理システムのメリットについても紹介します。
棚卸しとは?わかりやすく解説

棚卸しとは、定期的に帳票やシステムに記録されたデータと現実を照らし合わせ、在庫データを正しい状態に戻す作業です。
日常管理で生じたズレを確認・修正する作業
棚卸しの本質は、日々の管理では吸収しきれなかったズレを見える化し、正しい状態に戻すことにあります。
たとえば、在庫数量のカウントミス、現場での一時的な仮置きによる記録漏れは、どれだけ注意していても完全には防げません。棚卸しは、こうしたズレを認識し、管理ルールと現実の運用を一致させるための作業を指します。
日々の入出庫管理とは異なる、定期的な確認作業
棚卸しは、日常業務とは切り分けて、計画的に実施する定期作業として位置づけられます。
日々の入出庫管理は、目の前の在庫の動きに注目して行います。一方で、棚卸しは、これまでの入出庫管理が正しく行われてきたかどうかを確認する作業です。
毎日の管理がどれだけ整っていても、実在庫を直接確認しなければ気づけない課題が残ってしまいがちです。想定通りの状態であることを定期的に確認することで、潜在的な課題を見える化し、現場運用を確実なものとします。
棚卸しの目的とは

製造業における棚卸しは、企業の利益や資産を正しく把握し、経営判断の前提を整えるために行います。より具体的には、会計(利益・資産)、在庫精度(数量)、在庫健全性(品質・滞留)を整えることです。
正確な利益計算
棚卸しの重要な目的の一つは、企業の利益や財務状況を正しく把握することです。
会計上、在庫は企業の資産として扱われるため、売上原価や営業利益の算出に影響します。そのため、棚卸しによって在庫数量と評価額を確定させることは、決算や税務処理の前提となります。
帳簿と実在庫の数量照合
帳簿上の在庫数量と、実際に保管されている在庫数量を一致させることも、棚卸しの大きな目的です。
日々の入出庫管理を行っていても、さまざまな要因で実在庫数に差異が生じる場合があります。棚卸しを通して数量を確定させることで、在庫データの信頼性を担保できます。
不良在庫の洗い出し
棚卸しでは、数量だけでなく、在庫の状態を確認することも重要です。
不良品や期限切れの製品、今後の流動が見込めない死蔵在庫を把握することで、資産の実態を正しく認識できます。
立場で変わる棚卸しの意味

棚卸しは、どの立場で見るかによって目的や重要ポイントが異なります。ここでは、財務会計・現場管理・IT・生産管理の4つの視点から棚卸しの意味を整理します。
財務会計:資産額を確定するための確認作業
財務会計の立場では、棚卸しは「企業決算に必要な棚卸し資産を確定させるための確認作業」を指します。棚卸資産は売上原価や営業利益に直結し、経営判断や納税額にも影響します。
たとえば、次のような状態が放置されると、利益が実態よりも大きく見えます。
- 実在庫が帳簿より多い状態が放置されている
- 多くの不良品が通常在庫として計上されている
この状態では、期末在庫(棚卸資産)が正確に把握できない、つまり売上原価が確定せず、適正な営業利益の算出が難しくなります。例えば、利益が実態より大きく見えていた場合、課題抽出が疎かになったり、利益に対して課される法人税の過払いにもつながります。逆に在庫の過小評価を行うと、意図せず利益操作とみなされ、追徴課税に繋がるケースもあります。
このように、財務会計において、棚卸しは経営判断や納税の前提を決める重要度の高い作業です。
現場管理:在庫管理ルールの妥当性を見極める機会
製造現場において、棚卸しは在庫ズレの原因を洗い出し、管理ルールの妥当性を見直すための機会です。在庫のズレが頻発する場合、次のように運用設計そのものに無理がある場合もあります。
- 定置管理ができていない
- 払い出し時の記録処理が煩雑である
- 入出庫のタイミングがルール化されていない
品番・工程・時間帯など、棚卸しで在庫ズレの傾向を把握できれば、ムリのあるルールや動線の見直しにも繋がります。
IT:システム上の在庫情報と現場の在庫を合わせる視点
ITの視点では、棚卸しはシステム上の在庫データの信頼性を保つための作業です。
システム上のデータは、在庫照会・引当・発注点・原価計算など、製造業における在庫管理の判断に使用します。一方で、現場の実在庫とのズレが常態化するとシステムが信用できず、電話や現場での確認に戻ってしまいます。
このため、棚卸しはデータの整合性に関する一種のメンテナンスとも言えます。在庫ズレの原因をシステム上で特定できれば、システム設計や運用の見直しのヒントを見つけられるケースもあります。
生産管理:生産計画の前提となる在庫精度の担保
生産管理の目線では、棚卸しは生産計画の前提となる在庫精度を担保するために欠かせません。在庫が正しくないと、必要な材料がある前提で計画を立てて欠品したり、逆に不足と誤認して過剰発注したりします。
また、在庫数量だけでなく、実際に使える状態かどうかを確認することも棚卸しの役割です。たとえば、材料在庫の棚卸中、金属材料に目視でわかる著しい錆びに気付いたとします。錆びた材料が使用不可である場合、引当後の製造現場で気づいた場合には、欠品により生産計画が遅れる原因にもなります。
さらに製造業では、原材料だけでなく仕掛品の数量・進捗管理が計画の要となります。在庫と仕掛品について、帳簿と現実を合致させることで、段取り替え・特急手配・納期遅れといった計画崩れを減らせます。このように、棚卸しは、生産計画の確度を高めるための基盤整備とも言えます。
製造業の棚卸しにおけるよくある課題

製造現場を抱える企業において、棚卸しに課題を感じている企業の悩みは、大きく分けて次の3つです。
棚卸差異(棚差)が大きい
帳簿上の在庫数と、実地棚卸で数えた現物の数の差を棚卸差異、もしくは棚差(たなさ)と呼びます。多くの企業が「いざ棚卸しをすると、棚差が大きく修正が大変」という悩みを抱えています。
現場で棚差が生まれる主な原因は、大きく分けて以下の4つです。
- 入出庫の入力漏れ・入力ミス:「急ぎの出荷だったので後で入力しようとして忘れた」「伝票の数字を読み間違えてエクセルに入力した」といったヒューマンエラー
- 仕掛品のカウントミス:加工途中の「仕掛品」がどこにいくつあるかの把握が漏れ、棚卸時に初めて不明在庫として発覚するケース
- 歩留まりや廃棄の未反映:製造工程で発生した不良品や端材が正しく帳簿から落とされていない場合、理論在庫だけが膨らむ
特に製造業の場合、工程ごとに仕掛品の管理を求められるケースもあり、在庫管理が複雑になりやすいことも棚差が生まれる一因です。製造現場において棚差をゼロにすることは容易ではありませんが、原因を特定せずに放置すると、欠品によるライン停止や過剰在庫によるキャッシュフローの悪化を招きます。
手作業・エクセルによる品番・数量管理に限界を感じる
手作業やエクセルによる棚卸し・在庫管理では、記録・更新・集計を人に依存するため、管理の精度に限界があります。
品番や数量が多くなるほど、入力や転記の手間が増え、ヒューマンエラーが生じるリスクは高まります。また、経験年数の長さで棚卸しの精度やスピードの差が出やすいという属人化も課題となりやすいでしょう。
棚卸しにかかる工数が膨大になりやすい
棚卸しは時間と労力を要しますが、こうした管理上の課題が積み重なることでさらに負担が大きくなります。
在庫数量が多い現場では、数える、探す、確認するといった作業に時間がかかります。定置管理が徹底されていない現場では、モノを探すだけでも一苦労です。
それに伴い人件費やその他のコストも増加します。特に繁忙期と棚卸しが重なると、現場・管理部門の双方に大きな負担がかかり、通常業務にも影響が及ぶこともあります。
棚卸しの課題を解決する3つの方法

棚卸しの課題を解決するには、多くの場合、運用ルール、実施方法に加え、属人的な管理の見直しが必要です。以下では、製造業の棚卸しにおいて、代表的なアプローチを3つ紹介します。
在庫管理ルールの整備・見直し
棚卸時の実在庫と理論在庫の差異をなくすには、現場で実行できる日常の入出庫ルールを見直すことが重要です。多くの現場では「棚卸しのやり方」を改善しようとしますが、実は日々の入出庫の記録方法に根本的な原因があるケースが大半です。
最も重要なのは、製品や材料の入庫と、製品の出庫それぞれの記録を徹底することです。記録タイミング・記載方法などのルールを整備すれば、作業者の迷いがなくなり記録不備の減少が期待できます。
また、入出庫ルールが現場で徹底されていない場合は、ルールが守られない理由を明らかにします。例えば、入出庫のたびにエクセルへ入力するルールにもかかわらず、事務所にしかPCがないケースが挙げられます。このような現場では、忙しいと記録が後回しになり、まとめ入力や記録漏れが発生しがちです。また、入庫時に仮置きが発生しやすく、ロケーション登録が後回しになることもあります。
このように、現場の動線や作業量を考慮して、現場でムリなく実行できるルールに落とし込みます。
定期棚卸のタイミング・頻度の適正化
棚卸しの負担を減らすためには、実施するタイミングや頻度の見直しも欠かせません。
特に、年に一度まとめて棚卸しを行う場合、現場の負担が集中して、差異の原因調査や是正まで手が回らないケースもあります。次のような方法により、1回あたりの作業量を抑えつつ、在庫管理を強化することができます。
- 在庫が比較的少ない場合、四半期ごとに保管場所を整理
- 在庫が多い場合、品番や保管場所ごとに棚卸対象を分け、毎月確認を行う(循環棚卸)
また、定期的に在庫を確認することで、過剰在庫や長期間動いていない在庫にも早い段階で気づけます。
在庫管理システム・現場用ハンディ端末の導入
棚卸しの効率を継続的に高めるには、在庫管理システムによる一元管理が不可欠です。さらに、現場用のハンディ端末を活用すると、さらに手間やミスの少ない棚卸しが可能となります。
在庫点数や管理範囲が広がるにつれて、手作業やエクセルによる管理には限界が生じます。
入出庫記録や棚卸結果を人が集計・更新する運用では、リアルタイムな更新が難しく、属人化やヒューマンエラーによる非効率からも脱却できません。
在庫管理システムと接続したハンディ端末を用いると、日々の入出庫作業が進めやすくなり、棚差が小さくなっていきます。棚卸当日も、わずかな棚差をハンディ端末から簡単に修正し、在庫管理システム上に即座に反映できるようになります。これにより、在庫数の修正や転記、集計の工数を大幅に削減、場合によってはゼロにできます。
一定規模以上の現場では、この仕組みの導入が非常に効果的です。
→ 在庫管理システムとハンディ端末を活用した「バーコード管理」の方法
棚卸しに在庫管理システムを活用するメリット

現場に在庫管理システムを導入すると、前提となる在庫量の精度向上により、日頃の業務効率化にも波及します。ここでは、製造業の棚卸しにおいて、在庫管理システムを活用する主なメリットを整理します。
仕掛品の数量や置き場を管理しやすい
在庫管理システムを活用する最大のメリットは、仕掛品の数量や保管場所を把握しやすくなることです。製造業では原材料・製品在庫だけでなく仕掛品も管理対象となるため、手作業やエクセル管理では複雑でムリが生じやすいものです。
一方、在庫管理システムでは、品番ごとに数量や保管場所をデータで管理できます。ロケーション管理との併用により、確認作業がスムーズになります。
精度の高い在庫管理で棚差を減らせる
在庫管理システムを活用すると、帳簿在庫と実在庫のズレが小さくなり、在庫情報の精度が高まります。その結果、棚卸当日における棚差も小さくできます。
在庫データの信頼性が低い状態では、利益や原価を正しく把握できず、経営判断や税務処理にも影響が及びます。棚卸しによって得られる在庫情報の精度が高まることで、決算や生産計画に用いる数値を安心して判断材料にできます。
棚卸工数を削減できる
在庫管理システムの導入は、棚卸しにかかる工数そのものを減らす効果もあります。日常の入出庫管理が正確に行われていれば、数え直しや原因調査に追われる場面が減ります。
また、在庫データがロケーション情報とあわせて整理されていることで、集計対象の絞り込みや確認順序を事前に決めやすくなります。特に、ハンディ端末とシステムを併用すれば、棚卸作業は現場でスキャンするだけ。これにより作業ミスが大きく減り、記録や集計の手戻りも防げるようになります。
【事例紹介】棚卸し時間を50%削減・自動集計によるミスを撲滅したシステム導入事例
製造業の棚卸効率化なら、生産管理システム「SmartF」

ここまでの取り組みを手作業や在庫管理ツールだけで継続するのは、現実的には難しいケースも少なくありません。生産管理システムSmartFには、製造業における棚卸しのDX化を推進する各種機能を備えています。
■SmartFでできること(例)
- 棚卸業務の高速化:バーコード/ハンディによる正確かつスピーディな照合
- 製品在庫の一元管理:在庫データを生産管理業務と連動させ、業務効率を劇的に改善
- 仕掛品在庫の見える化:工程進捗登録と連動させ、現場の仕掛品をリアルタイムで共有
- 期限切れの同時チェック:期限切れ品の在庫移動時にアラート発報
複雑な製造工程でできた仕掛品の棚卸業務にも対応でき、製造現場に詳しいIT技術者による手厚い導入支援も行っております。トライアル導入時点からサポート担当がつくので、現場運用に不安のある企業様でも安心してご相談いただけます。
製造業の棚卸しをシステム化するなら
補足:棚卸しで押さえておくべき基本事項
棚卸資産の対象:製品・原材料・仕掛品など
棚卸しの対象となる「棚卸資産」には、企業が保有する在庫が含まれます。製造業では、主に次のような在庫が棚卸資産に該当します。
- 原材料・部品
- 仕掛品(製造途中の製品)
- 製品・商品
これらはいずれも、将来の売上や生産活動につながる資産であり、数量や状態を正しく把握する必要があります。特に仕掛品は工程ごとの管理が必要になるため、棚卸しの難易度が高くなりやすい点が特徴です。
棚卸しの主な種類:期末棚卸・循環棚卸
棚卸しは、実施するタイミングや目的によっていくつかの種類に分けられます。代表的なものが「期末棚卸」と「循環棚卸」です。
期末棚卸は、決算時点で在庫数量と評価額を確定するために行う棚卸しです。企業会計や税務処理の前提となるため、正確性が強く求められます。
一方、循環棚卸は、品番や保管場所ごとに棚卸し対象を分け、月次などで少しずつ確認する方法です。一度に全在庫を確認しないため、現場負担を分散しながら在庫精度を保ちやすい点が特徴です。
棚卸しの実施方法:実地棚卸・帳簿棚卸
実地棚卸は、実際に倉庫や店舗を歩き回り、手作業で在庫を確認する方法です。代表的な数え方として、タグ方式とリスト方式が知られています。一方で、帳簿棚卸は、会計上の在庫記録をもとに棚卸しを行う方法で、実物の在庫を直接確認する必要がありません。
それぞれについて、メリット・デメリットを整理したのが以下の表です。
| メリット | デメリット | |
| 実地棚卸 | ・実在庫を直接確認でき、帳簿との差異を確定できる ・数量だけでなく品質・滞留も把握できる | ・人手と時間がかかり、在庫点数が多いほど負担が大きい |
| 帳簿棚卸 | ・実物確認が不要なため、棚卸工数を抑えやすい | ・帳簿と実在庫のズレや品質劣化に気づきにくい |
詳しくはこちらの記事でも解説しています。
→効率的で正確な在庫管理とは?具体的な棚卸しのやり方を徹底解説
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。








.jpg)





.jpg)








