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特別採用とは?QMS規格要求事項との関連、具体的な手続きの手順まで解説

特別採用

特別採用とは、製品が規格外であるにもかかわらず、使用や出荷を許可する仕組みです。製品の不適合が限定的で性能に問題がない場合に限り、顧客承認を得て実施されます。ISO 9001やIATF 16949などの品質マネジメントシステムでも、不適合品の管理は厳格に定められ、特別採用はそれに基づいた手順で管理されます。

本記事では、特別採用の概要から具体的な手順、品質規格との関係まで詳しく解説します。

特別採用とは

製造業における特別採用(Concession)とは、設計・規格仕様に適合していない「いわくつき」の製品を使用・出荷を認める仕組みです。不適合の範囲が限定的で、製品性能や安全性に重大な問題がない場合に限り、特別な手続きを経て適用されます。

特別採用の定義:不合格品の条件付き合格

特別採用とは、製品設計・顧客仕様から逸脱した製品やサービスの使用・出荷を条件付きで認める仕組みのことです。 許可や特例、特別許可、特別承認と呼ばれる場合もあり、製造現場では略して「トクサイ」と呼ばれます。

通常、特別採用は、社内規格・顧客仕様に対して不適合となったもののうち、実際の使用上問題のない性能を有している場合に限定されます。このため、同じ製品群の同様の不適合であっても、顧客や用途によって、特別採用が認められるかどうかの判断が分かれるケースも少なくありません。

例えば、ディスプレイパネルの一部ロットに、数十μmの微細な色むらが確認されたとします。この色むらは通常の品質基準に適合していないものの、スマートフォン向けなどの日常的な使用では視認しにくく、ディスプレイの耐久性や性能に大きな影響はありません。重大な不具合となることは稀であるため、顧客と協議したうえでメーカーが特別採用の形でそのロットを使用する場合があります。

ただし、同レベルの品質であっても、より厳しい信頼性が求められる車載用途では、特別採用が認められないこともあります。

特別採用を行う理由

特別採用を行う理由は主に2つあります。

1つ目の理由は、納期遵守です。顧客は多くのサプライヤーから購入した製品を組み合わせて生産を行うため、特定の部品の納期遅延は生産計画へ大きな影響を及ぼします。このため、顧客製品の性能に影響を与えないと示せる場合、生産ラインを止めないように特別採用を実施することがあります。

2つ目の理由は、コスト影響の軽減です。不適合品を全て廃棄にすると、経営的インパクトが甚大となることも少なくありません。規定の標準作業に定められていない、小さな修正や部分的な手直しにより不適合品を救済できると、廃棄コストの削減に繋げられます。

QMS規格と特別採用

生産管理フロー

品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格では、不適合品の管理や特別採用について、管理するための指針が明確に定められています。各マネジメントシステムに共通するのは、適切に不適合品を管理することと、顧客仕様に関する項目については顧客承認を得たうえで出荷することの2点です。

ISO9001における特別採用:要求事項8.7.1

ISO 9001の要求事項8.7.1では、品質管理項目が顧客仕様や社内管理値から逸脱する場合を不適合とみなし、特別採用を含む適切な手続きが必要となります。不適合製品の管理方法についての規格要求事項は、以下のように規定されています。

  • 後工程や顧客への流出防止:適切に識別したうえで管理すること
  • 不適合品の処理:修正、不適合品と良品の切り分け、顧客への通知、特別採用の認可

IATF16949における特別採用:要求事項8.7.1.1

自動車産業向けの品質管理規格であるIATF 16949では、ISO 9001の要求事項をさらに強化した形で、特別採用に関する規定が定められています。特にIATF16949特有の要求事項としては、主に次の4点です。

  • 顧客仕様を満たす製品であっても、標準作業から逸脱した場合は不適合品とみなすこと
  • 不適合品は、現状での使用・手直しいずれについても、事前に顧客承認が必要
  • 特別採用を受けた日、数量の記録が必要
  • 特別採用品は、出荷容器上で識別できるようにすること

例えば、製造設備で瞬間停電が起こってしまった場合、その最中に製造していたロットは標準作業に則ったものとはいえません。たとえ品質規格を満たしていたとしても、次工程出荷前に顧客承認が必要となります。ただし、この瞬間停電時の対応方法まで含めて標準作業として規定されていれば、標準作業からの逸脱はないため顧客承認は不要です。

特別採用を実施する手順

医薬品生産ライン

特別採用は、次の4つのステップの手続きからなります。

生産ロットの不適合判定

特別採用の手続きは、特定生産ロットにおいて不適合と判定されることから始まります。まず、不適合となった製品が設計や仕様からどの程度逸脱しているかを確認します。

不適合が品質課題のない程度に収まっているか、小さな修正で解決可能か、修正不可能かを判断します。

良品・不良品の切り分け

不適合が確認された後は、必要に応じて良品と不良品を正確に分類します。特にロット内で良品・不適合品が混在していると考えられる場合、かつロット単位で使用不可にすると経営インパクトが大きい場合には必須の処置です。

品質検査結果を参照しつつ、必要に応じて追加分析を行うことで、製品またはロット単位で不適合製品と、基準を満たしているかを分類します。

不適合と判定された製品は、現品に不適合品である旨の表示をし、その上で不適合品専用の置き場に保管する必要があります。生産管理システムを使用している場合は、システム上でも不適合品として識別する処置を行います。

不良品の手直し

不適合品の中には、僅かな手直しを行うことで使用可能な状態に戻せるものもあります。手直しの内容は、製品の不具合の種類に応じて異なりますが、以下のような方法があります。

  • リワーク:再加工で規定の品質を満たすよう修正
  • リペア:最低限の機能や外観を回復させる修理
  • ダウングレード:用途を変更し、不適合品を別の用途で活用
  • サルベージ:部品や素材を取り出して再利用

手直しした後の製品が品質規格・顧客仕様を満たしていることが確認できるまで実施します。なお、いずれの処置も困難である場合は、再利用が困難な不適合品を廃棄(スクラップ)します。

顧客承認

手直しした製品の使用可否について、顧客の承認を得ます。不適合の内容、具体的な手直しの方法、今後の是正処置について顧客に報告し、使用または出荷の許可をとります。

IATF16949対象製品の場合に限り、手直しを始める前に、不適合の詳細や具体的な手直し内容などについて顧客承認を得る必要があります。

参考:特別採用に関連する用語

製造業ビジネスのデジタル化

特別採用に関連するいくつかの用語を紹介します。

不適合製品

不適合製品とは、一般に設計規格や顧客納入仕様などに定められた品質基準を満たしていない製品を指します。IATF16949対象製品の場合には、品質基準を満たしているかどうかに関わらず、標準作業から逸脱した製品も不適合製品として取り扱います。

不適合製品はそのままでは出荷や使用ができないため、特別採用の手続きをとることが必要です。また、不適合発生の原因を特定し、再発防止のための是正処置も求められます。

是正処置

是正処置は、不適合が発生した原因を排除し、再発を防ぐための具体的な対策を指します。不適合製品が発生した場合、単に修理や手直しを行って対象製品のリカバリーを行うだけでは十分な対策とは言えません。同様の問題が再び発生しないようにするため、なぜなぜ分析などで抽出された根本的な対策の実施までが求められます。

予防処置

予防処置とは、発生していない潜在的な不具合を事前に防ぐための対応です。品質に関わるリスクを精査し、そのリスクが顕在化する前に手を打つことによって、製品の品質を担保できます。

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