管理の難しい不定貫商品とは?在庫管理システムの導入がおすすめな理由
公開日:2024年05⽉15⽇
最終更新日:2024年09⽉26⽇
不定貫商品とは、重量や容量が不定形で柔軟に変化する商品を指し、主に食肉や鮮魚などの食品、木材などの建設資材、量り売り商品など、様々な業種で扱われています。このような不定貫商品の在庫管理は、需要予測の難しさや賞味期限・品質劣化、人的ミスや作業の非効率性など、固定された単位の製品とは異なる難しさがあります。在庫管理システムの導入など、不定貫商品をより効率的に管理する方法を解説します。
不定貫とは何か
「不定貫商品」とは、重量や数量が変化し、それに伴い価格も変わる商品のことです。生鮮食品や量り売りの商品などが代表的な不定貫商品です。このような不定貫商品は日常生活や産業で幅広く利用されている一方で、重量や容量によって販売価格が異なるため、在庫管理が複雑になりがちです。
対して、重量や数量があらかじめ決まっている商品は「定貫商品」といいます。単価の設定ができるため、不定貫商品と比べると在庫管理がしやすくなります。
不定貫商品の種類
不定貫商品には様々な種類が存在します。代表的な商品は、食肉や鮮魚です。個体によって重量が異なるため、「1尾◯円」という価格設定ができず、「1kg◯円」のような重量ごとの価格設定となります。同じ鮮魚を毎回100尾発注しても、総重量が都度変わるため、仕入単価も仕入れのたびに変わります。果物や野菜などの生鮮食品も、不定貫で扱われる場合があります。
不定貫という言葉は食品業界でよく用いられますが、その他の量り売り商品も不定貫といえます。たとえば、ロールから切り売りする布生地、シリアルなどの量り売りなどです。
その他、不定貫商品の具体例は下記のとおりです。
- 食品→食肉、鮮魚、チーズ、果物、野菜、米、麦、砂糖、塩、油脂類など
- 飲料→ビール、ワイン、酒類、ジュースなどの量り売り
- 建設資材→木材、砂、砂利、セメントなど
このように、様々な業種で不定貫商品が扱われているため、それぞれの商品の特性に合わせた在庫管理が必要です。
不定貫の歴史と由来
不定貫という言葉は、「不定」と「貫」を組み合わせた言葉です。「不定」とは一定ではないという意味で、「貫」は質量の単位を指します。
貫という単位は、かつて一文銭を1000枚を紐でまとめた重さを1貫と呼んでいたことに由来すると言われています。日本古来の度量衡である尺貫法が使われていた明治~昭和頃まで、実際に重さの単位として使用されていました。ちなみに、1貫の重さは約3.75lgです。
不定貫商品は、主に農産物が起源とされています。収穫された農作物の重量は一定ではなく、袋や箱に詰められた状態で流通していました。このような商習慣が長年継承されてきたため、現代でも不定貫商品が存在しています。
不定貫商品の在庫管理の難しさ
不定貫商品の在庫管理は、決まった単位で単価を設定できる一般的な製品と比べて、需要の変動、商品の劣化、人的ミス、作業の非効率性、実在庫と帳簿在庫の乖離などから、とても困難です。
発注単価を固定できない
不定貫商品は重量によって単価が異なるため、発注単価の設定が難しいという特徴があります。入荷受入時に単価を都度確認する必要があるため、原価管理が煩雑になりがちです。入荷時の単価確認を徹底できていない場合、棚卸時に棚卸資産を正確に計算できなくなる可能性があります。
受注入力作業の人的ミス・属人化
重量や容量などが不定形の単位で受注する際、人手で計測や入力を行うと、ミスや属人化のリスクが生まれます。たとえば、1tの注文を1,000kgと入力する際に単位を間違えたり、習慣的に間違った値を入力してしまったりといった例があります。
需要の予測が困難
不定貫商品の需要は、季節変動や経済情勢、気象条件などの外的要因に大きく左右されるため、正確な予測が難しい傾向にあります。たとえば、飲料水の需要は気温の上昇に伴い増加しますが、予測を外すと過剰在庫や欠品が発生する可能性があります。
賞味期限や品質の劣化
食品や化学品など、賞味期限や品質保持期間が設定されている不定貫商品は、一定期間を過ぎると販売・使用できなくなります。また、在庫日数が長期化すると品質が劣化しやすく、期限切れによる廃棄処分などが発生すると、コスト増加の原因となります。
出荷作業に時間がかかる
不定貫商品は重量や容量で管理されるため、出荷時に一つ一つ計量する必要があり、作業に時間がかかります。この作業を人手で行うと、コストがかさみ、ミスのリスクも高まります。
不定貫商品の在庫管理のポイント
不定貫商品の適正な在庫管理を実現するためには、業務プロセスの見直しと外部連携の強化が必要です。
在庫管理の見直し
不定貫商品の在庫管理を改善するためには、まず現状の業務プロセスを見直す必要があります。具体的例は以下のとおりです。
- 一連の作業のマニュアルやフローを策定し、人的ミスや非効率な業務を減らす
- 需要予測の精度向上に努め、過剰在庫や欠品を防ぐ
- 賞味期限や品質劣化に注意を払い、廃棄ロスを最小限に抑える
- 定期的に棚卸しを行い、実在庫と帳簿在庫にズレがないか確認する
煩雑な不定貫商品の管理をミスなく行うには、入出荷や受発注などのフローを確率することが重要です。そして、期限管理を含む在庫管理を正確に行い、過剰在庫による期限切れ商品の廃棄や欠品を防ぐ必要があります。正確な在庫把握には、定期的な棚卸しも効果的です。
協力業者との連携
正確に在庫を管理するには、自社だけでなく、取引先や物流業者など、サプライチェーン全体で密に連携をとる必要があります。例えば、需要予測の精度向上のために、販売先の需要に関するデータを共有してもらうなどの協力が欠かせません。また、受発注や出荷に関するデータをリアルタイムで更新することで、誤差が発生するリスクを最小限に抑えられます。
さらに、IoTセンサーなどを活用し、物流の可視化を進めることで、サプライチェーン全体で在庫の最適化を図ることができます。
不定貫商品の管理には在庫管理システムがおすすめ
不定貫商品は管理が複雑で手間がかかるため、在庫管理システムの導入がおすすめです。システムを活用することで、人的ミスを低減し、受発注から出荷に至る一連の業務を自動化・効率化できます。また、実在庫とデータをリアルタイムで同期できるため、適正在庫を維持しやすくなります。
在庫管理システムのメリット
不定貫商品に対応した在庫管理システムには、以下のようなメリットがあります。
- 商品の重量や容量での管理が可能で、人手で計測する手間が不要
- バーコードやRFIDなどのデータ入力の自動化で、人的ミスを防止できる
- 必要な在庫数の自動計算や発注自動化で、適正在庫を維持できる
- 賞味期限や品質保持期間の管理で、廃棄ロスを低減
- 実在庫と帳簿在庫のリアルタイム同期で、誤差の発生を防止
- クラウドベースのシステムであれば、場所を選ばずにアクセス可能
ただし、商品の重量や容量による管理は、すべての在庫管理システムで行えるわけではありません。単価設定しかできないシステムも多々あるので、導入検討時は事前確認することをおすすめします。
不定貫商品対応のシステムの導入方法
在庫管理システムを新たに導入する場合、以下の手順で進めると失敗しにくくなります。
- 自社の業務プロセスや課題を洗い出す
- 在庫管理システムを比較検定
- 選定した在庫管理システムのベンダーと要件定義を行う
- 導入準備(品番マスタ整備など)
- 必要であれば、システムベンダーにカスタマイズやデータ移行を依頼
- 本格導入(導入前にトライアルができれば尚良し)
- 現場のシステム教育
特に重要なのは、運用開始時の十分な現場教育です。運用方法が変わることで業務効率化が見込めることを理解してもらい、システムを用いた業務の流れに慣れてもらうことが必要です。現場の負荷を考えて、段階的に移行できると安心です。
また、クラウド型の在庫管理システムの中には、トライアル可能なものもあります。本格導入前に、現場が使いやすいシステムかどうかを確認できるため、導入リスクを抑えられます。また、一からシステムを開発するシステムと比べて、早期に運用開始できるというメリットもあります。
不定貫対応の在庫管理システムでできること
在庫管理システムを導入することで、不定貫商品の特性に合わせた在庫管理が可能になります。商品の重量や容量の計測・管理、出荷作業の自動化、実在庫と帳簿在庫の同期など、これまで手作業で行っていた業務を効率化し、人的ミスのリスクを抑えることができます。
実績単価での在庫管理
不定貫対応の在庫管理システムで、実績単価にもとづくより精緻な在庫管理が可能となります。
不定貫商品を仕入れている工場で、数量単価にしか対応していない在庫管理システムを使うとします。同じ入荷数量でも入荷金額が異なるため、入荷のたびに金額修正が必要となります。入荷量が多い現場などで都度修正が難しいと、仕入れ金額を正確につかめず、棚卸時に正確な在庫金額を把握できなくなる可能性があります。
出荷作業の効率化
出荷作業もシステムと連携することで、大幅に効率化できます。注文データに基づいて自動で出荷を指示し、ピッキングリストが作成されます。作業者はリストの指示に従ってピッキングを行うだけで済むため、手作業での見落としやミスが防げます。さらに、ピッキングした商品の重量をデジタルはかりで測定し、システムと連携させると、自動で出荷データが更新されます。出荷作業が大幅に効率化されます。
帳簿在庫をリアルタイム管理
入荷・出荷・在庫移動など、在庫の増減に関するデータをシステムに自動で取り込むことで、常に在庫をリアルタイムで把握できます。理論在庫数と実在庫数の差異をなくせるため、棚卸工数の大幅削減も可能です。このように、棚差を最小限に抑えられる上に、過去の在庫推移データを活用することで、需要予測の精度向上にも繋がります。
在庫管理システムで不定貫商品を管理する企業の事例
肉料理を中心とした惣菜の製造販売メーカーでは、食品業界向けの在庫管理システムを長年利用していました。しかし、不定貫商品の仕入管理機能が足りず、棚卸時に平均単価で計算するしかない状況でした。不定貫対応の在庫管理システムに切り替えたことで、仕入原価を実績単価で管理できるようになり、販売管理システムとの照合作業がスムーズにできるようになりました。
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