ロット生産とは?基本的考え方、メリット・デメリット、関連する生産方式まで徹底解説
公開日:2024年11⽉21⽇
最終更新日:2024年11⽉21⽇
ロット生産は、一定量をまとめて生産することで在庫管理と品質管理を効率化する方式です。本記事では、ロット生産の基本的な概念から、大ロット生産と小ロット生産の違い、導入のメリットとデメリット、他の生産方式との関連までを詳しく解説します。また、他の生産方法との比較や、ロット管理に役立つ生産管理システムの活用方法についても紹介します。多品種少量生産に最適なロット生産の特性を理解し、競争力強化に役立てましょう。
ロット生産とは
製造業における「ロット生産」とは、一定数量をまとめて生産し、品質や在庫を管理しやすくする方式です。ロットは、同じ条件で生産された製品のまとまりを表す生産量の基本単位であり、同一ロット品は同じ品質とみなして品質・在庫を管理します。例えば、1つのロットが製品100個から構成されていれば、その100個はすべて同じ材料、同じ工程で作られたものとして管理されます。
ロット生産方式の特徴
ロット生産は大量生産と少量生産の中間的な規模の生産方式で、製品のバリエーションが多い業界で広く採用されています。自動車部品や電子機器、食品など、さまざまな品種の製品を効率的に生産する場合に有効です。
ロット生産の基本的な考え方は、生産ラインの効率を最大化しながらも、製造品種の切り替えを前提とすることです。同じ生産ラインで異なる製品を製造する際、段取り替えと呼ばれる製造工程の切り替え作業を実施します。この段取り替えを計画的に行うことで、生産性を維持しつつ、多品種少量生産を行うことができます。
また、ロット生産ではロット単位で生産計画を立てるため、必要な原材料の数量が明確になり、効率的な調達が容易になります。
大ロット生産・小ロット生産の違い
大ロット生産とは、同じ製品を大量の原料や大規模な製造装置を使ってまとめて生産することです。スケールメリットが見込めるため、材料費の削減や生産効率の向上が期待でき、製品のコストを抑えることが可能です。しかし、細かな需要の変動には対応しにくく、在庫管理も難しくなります。
一方、小ロット生産は、少量単位で製品を生産することを意味し、需要変動に柔軟に対応しやすく、在庫リスクが低いのが特徴です。小ロット生産は多品種少量生産に適しており、少量の細かな仕様変更やカスタマイズにも比較的対応が容易です。
例えば、大量の衣料品生産において、ロット単位で色違いを製造する時などに活用されます。在庫リスクを減らして顧客の多様なニーズに対応できますが、段取り替えの頻度が増えるため生産効率が下がりやすいです。
このように、大ロット生産と小ロット生産は一長一短です。このため、顧客要望の細かさ、需要変動の大きさ、製品ターゲットコストなどを考慮して使い分けられます。
ロット生産のメリット
ロット生産を行う具体的なメリットは次の通りです。
1つのラインで複数品種を製造できる
ロット生産の最大のメリットは、1つの生産ラインで、複数の製品を効率的に作り分けることができる点です。製品の多様化が進む市場において、多品種少量生産を迅速かつ高い生産性で対応することは競争力強化に直結します。
実際に、コスト競争の激しい電子機器製造業では、1つの製造ラインで複数の製品を製造することが一般的です。例えば、スマートフォンの製造では、基板の実装や組み立て、検査工程を共通化し、同じラインで異なる仕様を効率的に生産しています。
スケールメリットで調達コスト削減しやすい
ロット生産では、ロット単位を大きくしたり同一品種でたくさんのロットを生産することで、スケールメリットを享受しやすくなります。
多くの量をまとめて生産すれば、必要な資材の一括調達が可能となり、単価の交渉力が向上するため、材料費の削減につながります。一例ですが、スマートフォンの組立製造においては、製品ロットごとにディスプレイなどの部品を大量に仕入れ、安価・高品質を両立できる調達をしています。
段取り替えを減らせば、生産効率を向上できる
ロット生産では、ロットサイズを大きくすることで段取り替えの回数を減らし、生産効率を高めることができます。
段取り替えでは、生産ラインを停止して製品切り替えに必要な準備作業を行います。この作業には時間とコストが発生するため、実施回数を最小限に抑えることが重要です。
例えば、同じ製品を1,000個ずつ小ロットで生産する場合、製造工程の設備設定変更などの段取り替えが10回必要だとします。これを大ロット生産でまとめて生産すれば、段取り替えを5回に減らせるため、その分だけ設備稼働率が向上します。
在庫管理を適正化しやすい
ロット生産では、生産単位ごとに製造計画を立てるため、無駄が少なく、生産計画の立案や在庫管理が比較的容易です。さらに、需要に応じた適切なロット単位で生産することができれば、過剰生産を避けられ、在庫リスクの低減が可能となります。
たとえば、生産ロットを需要に合った最小単位で設定すれば、余分な在庫を抱えるリスクを最小限に抑えることが可能です。
ロット管理で品質管理ができる
製品の品質管理にあたり、トレーサビリティを確保しやすいこともロット生産の特徴です。
ロット内の均一性を担保できていれば、各ロットに対して品質検査を行うことで、品質を適切に管理できます。また、不良品が発生した場合、どのロットに問題があったのかを速やかに特定し、原因究明や再発防止策を講じることが容易です。
例えば、食品業界では、製品の安全性を確保するために、製造日やロット番号を管理し、出荷後も製品の追跡ができるようにしています。これにより、万が一問題が発生した場合でも、該当ロットを速やかに回収し、被害を最小限に抑えることができます。また、品質管理データを蓄積することで、将来的な品質改善や製造プロセスの最適化に役立ちます。
ロット生産のデメリット
ロット生産には、以下のように生産管理面、在庫管理面でのデメリットが生じることもあります。
受注ロットより生産ロットが多いと、余剰在庫リスクがある
ロット生産では、通常、生産性を考慮してある程度の数量をまとめて生産するため、受注数と実際の生産数にズレが生じることがあります。
例えば、顧客の注文が100個であっても、工場で500個単位で作った方が生産効率が良い場合、500個生産することが多いです。この場合、余った400個は余剰在庫として残ってしまいます。
余剰在庫は、保管場所を取るだけでなく、本来不要であった管理の手間・コストもかかります。また、長期間保管することで、製品の品質劣化やモデルチェンジによって、余剰在庫が販売できなくなるリスクも伴います。
さらに、製品の需要が大きく変動する場合、特にシーズン品やトレンドに依存する製品では、受注と生産のバランスを取ることが難しくなるケースもあります。
アパレル業界ではシーズンごとに流行が変わるため、在庫を抱えることは大きなリスクです。受注数が予測よりも下回ったために、大量の余剰在庫の値引き販売や廃棄せざるを得なくなり、利益を大きく棄損するケースも少なくありません。
設備や人員の配置が難しく、生産管理が複雑になる
ロット生産では、1つの生産ラインを複数の生産と共有することも多いため、設備や人員の効果的な配置が必要です。そのため、生産管理が複雑になりやすく、管理難易度が上がるケースもあります。
ロット生産では、生産計画数量の製品を生産した後、すぐに別の製品の生産に切り替えます。この切り替えのタイミングや順番を適切に計画できれば、物的、人的リソースを最大限に活用可能です。しかし実際には、設備の稼働率だけでなく、原材料の納期管理、作業員のシフト管理など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。これらが、生産管理をさらに複雑化する原因にもなります。
さらに、注文の急な増減や変更に対応するためには、計画の見直しや設備・人員の再配置が必要です。実際の生産状況を常に確認し、次の作業がスムーズに進むように小まめに調整することが、効率的な生産管理のポイントです。しかし、こうした柔軟な対応が求められるため、熟練の従業員しか対応できないということも少なくありません。
他の4つの生産方法との関連
ロット生産以外に、ライン生産やバッチ生産、個別生産、連続生産といった他の生産方式があり、異なる特徴を持っています。以下では、それぞれの生産方式の特性とロット生産との関連について詳しく解説します。
ライン生産
ライン生産は、製造工程を一定の順序に並べ、連続して流れ作業で製造する方式です。生産ラインを構築することで各工程をスムーズに進められるため、大量生産に適しています。
ロット生産方式において、ライン生産方式と組み合わせて仕様ごとにまとめて生産すれば、製造時間を短縮できます。自動車製造では、各工程が連続的に流れるライン生産を採用していますが、モデルや仕様ごとにロット単位でまとめて生産することもあります。
例えば、自動車製造の組立ラインでは、同じ車種や仕様の車両を連続的に生産することで、作業効率を最大化し、一定の品質を保つことができます。しかし、多品種少量生産には対応が難しく、段取り替えが発生する場合は、ラインの停止が大きなロスとなります。仕様のバリエーションが限定されており、かつ生産量が膨大である場合に向いているといえます。
バッチ生産
バッチ生産は、一定の量を一括して製造する生産方式で、より小規模な生産に適しています。バッチごとに生産装置内を完全に入れ替える「段取り替え」を実施しやすくできるため、製造品種の切り替えが容易である点が特徴です。
ロット方式と似た概念ではありますが、バッチ生産は一般に混合や調整が必要な液体や粉体など、個数単位で数えにくい製品の製造で多く使用されます。実際に、化学工業や食品加工など、製造工程が複雑で、連続生産が難しい業界で広く採用されています。
例えば、製薬業界では、同じ設備を使って異なる薬品を製造する際にバッチ生産が活用されます。各バッチごとに品質試験を実施し、基準を満たしたものだけが出荷されるため、製品品質を一定に保つことができます。この場合、バッチごとに異なる製品やロットが管理され、「ロット=バッチ」として品質管理が行われます。
個別生産
個別生産は、標準化されたロット生産方式とは異なり、顧客の注文に応じて1つずつ製品を生産する方式です。特注品や試作品の製造に向いており、特殊な産業機械の製造など、顧客の要求に合わせて設計や仕様が異なる製品に採用されます。
この方式は、顧客ごとのニーズに細かく対応できるため、カスタマイズ製品や一品物の生産に向いています。一方で、製品ごとに設計や準備が必要なため、効率は低く、大量生産には不向きです。
しかし、個別生産においても、特定の部品や標準工程をロット単位で準備しておくと、生産効率が向上します。たとえば、ロット生産で一括調達した標準部品を個別生産に用いることで、コスト削減が可能です。
連続生産
連続生産は、24時間体制で生産し続ける方式で、化学工業など稼働が途切れると品質に影響が出やすいプロセス産業で広く採用されています。ロット生産に比べて設備の稼働率が非常に高く、大量の製品を安定して供給できる点が特徴です。
例えば、製油所では、原油を絶えず精製し続けることで高効率の生産を維持し、大量の製品を安価で市場に供給します。しかし、段取り替えが難しく、製品仕様や生産量の調整が容易ではないため、製品の多様化には対応しにくいという制約があります。
ロット管理に役立つ生産管理システムとは
ロット生産において、原材料や製造工程、製品を効率よく管理し、生産性を向上させるためには、生産管理システムの導入が有効です。生産管理システムで実現できることは、以下の通りです。
ロットトレースが手間なく実現できる
ロットは明確な識別方法であるため、使用部材ロットなどの生産情報の活用は、品質管理や効率的な生産を行う上で重要です。
あるロボット製品製造会社では、従来、ロットごとの生産履歴を紙に手書き管理していましたが、記載ミスも多く、不具合分析ではロットの追跡に多くの手間がかかる状況でした。生産管理システムを導入することで、正確に記録できるようになり、ロット情報をデータ管理して素早くトレースすることが容易になりました。これにより、万が一、不良品やクレームが発生した場合でも、該当するロットを特定し、迅速に対応することができます。
さらに、生産管理システムは、リアルタイムでのデータ更新が可能なため、現在の製造状況や在庫状況をタイムリーに確認することができます。これにより、急なトラブルや製品の仕様変更にも迅速に対応できるため、製造工程や在庫の管理も効率的に行えるようになりました。
→生産管理システムの導入により、ロットトレースの一元管理に成功した事例はこちら
生産実績からロット数量を見直しやすい
ロット生産において、需要の変動に応じた生産数量をフレキシブルかつ適正に見直すためには、生産管理システムの活用が有効です。
システム上で現在庫数と生産計画をもとに将来の在庫が見える化され、生産計画を変更した場合の影響も正確に見積もることができます。データに基づく意思決定により、生産ロットの数量を客観的かつ適切に設定できるため、安定した供給体制の構築が加速されます。
精緻な生産計画で生産性向上につながる
ロット生産では、生産管理システムでロット単位の材料・製品在庫情報を共有しやすいため、より確実な生産計画を立て、生産性を上げることが可能です。
例えば、システムの活用により、材料ロットの切り替わるタイミングが事前に明確化できるため、このタイミングで製造品種の切り替えを行う計画が立てられます。これにより、段取り替えによる材料・製品ロスや設備稼働ロスを減らすことができます。
さらに、システムは、需要予測やシミュレーション機能を活用して、将来の生産計画を精緻に立案することができます。これにより、突発的な需要変動や納期の変更にも柔軟に対応し、生産ラインの稼働率を最大化しつつ、顧客のニーズに迅速に応えることができます。
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