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製造業でも活用が進むEDIとは?基礎知識から注意点、Web-EDIの導入事例を解説

EDI

EDI(電子データ交換)は、製造業における発注業務の効率化を大きく支える技術です。本記事では、EDIの基本的な仕組みやWeb-EDIを使った受発注管理を解説するとともに、APIやECとの違いも整理します。

また、EDI導入により工数が年間1210時間削減された事例を通じ、ペーパレス化や電子帳簿保存法対応、リアルタイム情報共有、データ精度向上といった具体的なメリットもご紹介。発注管理を改善したい方にとって必見の内容です。

EDIとは

EDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)は、企業や組織間で標準化された専用回線を通じて、ビジネス文書を電子データとして交換する仕組みです。

従来、契約書や請求書などの文書を企業間でやり取りする際は、郵便やFAX、メールなどで送付していました。しかし、取引先ごとに個別に送付せねばならず、手間やヒューマンエラーの課題がありました。EDIの活用で企業間取引が電子化されると、これらの文書のやり取りがシステム上で完結できるようになります。

EDIの電子データ交換は、専用回線や固定電話回線、インターネットを通じて行われます。近年は、インターネットを利用した「Web-EDI」が普及し、ブラウザ経由でのアクセスが可能になっています。特に製造業では、受発注管理などの場面でWeb-EDIが利用され、業務効率化が図られています。

製造業ではWeb-EDIでの受発注管理が多い

製造業では近年、受発注管理の効率化と柔軟性向上を目指し、Web-EDIの導入が進んでいます。「発注EDI」「受発注EDI」と呼ばれる製造業向けシステムの多くは、Web-EDIです。

従来の発注

Web-EDIは、専用回線を使用する従来型EDIと違い、インターネットのブラウザ上で取引データを管理できるため、低コストに導入しやすいのが特徴です。さらに、Web-EDIのシステムは場所を問わずアクセス可能なので、リモートワークや外出先からも業務が行えるメリットもあります(詳しくは後述)。

似た言葉との違い

製造業DXイメージ

EDIと類似の用語に、APIやECサイトがありますが、それぞれの特徴や使用場面は異なります。

API

API(Application Programming Interface)は、ソフトウェアやアプリケーション間でデータをやり取りするための仕組みです。APIを介して2つのシステムを繋ぐことで、双方を連携して使用できます。

製造業の例でいうと、生産管理システムと会計システムをAPI連携し、受注情報と売上情報を一元管理するケースなどが代表的です。

EDIは特に企業間取引に特化しているのに対し、APIは個別のシステム間での柔軟なデータ連携のためのインターフェースです。社内システム同士、アプリケーション同士のデータのやり取りに幅広く利用されています。

EC(B to B EC)

EC(Electronic Commerce、電子商取引)は、インターネット上で商品やサービスの売買を行う仕組みです。企業間で扱うECは、B to B ECと呼ばれます。

EDIは企業間の取引データを自動化・標準化するのに対し、ECは主に製品の販売や購入を目的とし、買い手に対してもアクセスが開かれています。EDIでは販売者と購入者が同じシステムを導入する必要がありますが、ECでは買い手が特定のシステムを使用する必要はありません。

また、EDIでは商取引がシステム間で即座に共有されるため、大量の定期発注や複雑な取引に対応できるメリットがあります。対してECのメリットは、購入者が注文品の選定から購入、決裁などの一連の手続きを行え、購入者が柔軟に注文できる点が特徴です。

EDIの種類

EDIには複数の種類があり、それぞれに特徴があるため、利用する業界や企業のニーズに応じた選択が重要です。最もよく知られている種類として以下の4種類があります。

  • 標準EDI
  • 個別EDI
  • 業界VAN
  • Web-EDI

標準EDI

標準EDIとは、JEDIC(日本電子情報化センター)やEDIFACT(国際標準化機構ISOが策定した国際標準)などの標準規格に基づくEDIです。この規格は世界中で利用されているため、異なる国や業界の企業間でも統一されたフォーマットでデータを交換できます。

標準化された形式であるため、異なるシステムや企業間でもスムーズな取引が可能で、特に多くの取引先を持つ企業にとって便利です。

個別EDI

個別EDIは、特定の取引先や業界の要件に合わせてカスタマイズされたEDI形式です。標準EDIとは異なり、取引先ごとに独自のフォーマットや通信プロトコルを使用するため、柔軟性が高いという利点があります。その反面、取引先が多い場合は、導入や維持に手間がかかることがあります。

個別EDIは、取引内容が標準化しにくいケースや、特定の業務フローがある場合に適しています。システムの柔軟性を活かし、取引先ごとの要件に応じたデータ形式やワークフローの最適化が可能です。

業界VAN

業界VANは、特定の業界内でのEDIデータ交換を支援するために構築された通信ネットワークです。標準EDIの中でも、各業界に特化したものと言えます。

業界固有のフォーマットや業界全体の規範に準じたデータ交換が行えるため、特定の業界内で多くの企業が参加する取引ネットワークとして活用されています。

代表的な業界VANの一例は、以下のとおりです。

  • JD-NET(ジェイディーネット):医薬品業界向け
  • MD-NeT:医療機器業界向け
  • PLANET(プラネット):化粧品業界・日用品メーカー向け
  • FINET(ファイネット):酒類・加工食品業界向け
  • ハウネット:家庭用品・食品軽包装業界向け

Web-EDI

従来のEDIは固定電話回線などでデータ交換を行うのに対し、近年はWeb-EDI(インターネットEDI)と呼ばれる、インターネット上で企業間取引を行えるEDIが主流になりつつあります。

Web-EDI最大のメリットは、前述の通りクラウド型で低コストに導入できる点です。今までコストがネックでEDIを導入できなかった中小・中堅企業も、Web-EDIの登場で業務効率化を実現できるようになりました。

EDI導入のメリット

管理イメージ

以下で、EDI導入による主要なメリットについて詳しく説明します。

工数削減

EDI導入の最大のメリットは、発注や在庫管理、請求処理などのシステム化による工数削減です。手作業の入力確認作業が不要になります。例えば、手動で行っていた発注データの確認や入力作業が省略されることで、作業時間が短縮されると同時に、作業のスピードと正確性が向上します。

さらに、発注を受ける側の仕入先企業も、工数削減の効果が期待できます。例えば、紙やメールで発注書を受け取った後に基幹システムへ入力している場合は、CSVやAPIの連携で手入力作業をなくせる可能性があります。

ペーパーレス化による経費削減

EDIを導入することで、取引書類が電子化されるため、紙の使用量が大幅に減少します。これにより、印刷や郵送にかかる経費が削減され、長期的なコスト削減が実現します。

また、電子化されたデータはクラウドやサーバーに保存でき、書類の物理的な保管スペースも不要となるため、事務所スペースの効率的な活用が可能です。

さらに、ペーパレス化は環境負荷の軽減にも寄与し、企業の社会的責任(CSR)を果たすうえでも評価されます。

電子帳簿保存法の対応

EDIの導入は、電子帳簿保存法に対応するための重要な手段です。

電子帳簿保存法では、企業が帳簿や取引データを電子的に保存し、一定期間、改ざん防止措置を施して保管することを義務付けています。EDIシステムを導入すると、電子データの保存が容易になるだけでなく、法令で求められる条件を満たすことができ、企業のコンプライアンス強化にもつながります。

また、電子帳簿保存法の要件に沿って取引データが整理されるため、税務処理や監査の際に必要なデータへスムーズにアクセスできます。

リアルタイムでの情報共有が可能

EDIは、取引情報をリアルタイムで更新・共有できるため、企業間での即時性が求められる情報のやり取りが容易に行えます。具体的には、納期の確認や在庫状況の把握、それらをもとにした意思決定が迅速に行えるようになります。特にスピーディな対応が求められる、トラブル発生時にも役立つと言えます。

人的ミス削減でデータの正確性が向上

EDIを導入すると、手動でのデータ入力や転記作業が削減されるため、人的ミスのリスクが大幅に軽減されます。その結果、データの正確性や業務効率が向上し、クレーム防止にも繋がります。

例えば、EDIを活用した発注システムでは、発注データが自動的に取引先に送信され、取引先もそのデータをシステム上で直接受け取ることができます。これにより、受発注に関わるデータの入力ミスがなくなります。また、EDIにはデータの改ざん防止機能も備わっているため、受発注データの信頼性も確保できます。

内部統制によるコンプライアンス強化

EDIの導入は、内部統制を強化し、企業のコンプライアンス(法令遵守)を確実にするために重要な役割を果たします。

EDIシステムでは、取引データがリアルタイムでシステムに記録・保存され、データの改ざんや削除が防止されます。この仕組みにより、取引データの正確性と信頼性が保たれ、監査の際にも迅速かつ容易に必要なデータを提供できるようになります。

EDIシステムを導入する際の注意点

EDIシステムの導入は、多くのメリットをもたらしますが、スムーズな導入・運用にはいくつかの注意点があります。

特に、企業の業務システムや取引先との連携が適切に行われない場合は、期待される効果を十分に発揮できない可能性があります。

自社システムの連携確認

EDIシステムを導入する際は、自社の既存システム(ERPや在庫管理システムなど)との連携が可能かの事前確認が重要です。特に、在庫管理を行っているシステムがEDIと連携できると、発注・在庫情報を一元管理できます。各情報がリアルタイムで更新されるため、受注・発注システム間のデータを正確かつ一貫性をもって保てるようになります。

連携が適切に行われていないと、データの重複や不一致が発生し、取引ミスや在庫の過不足といった問題が生じる可能性があります。

連携確認の際には、自社システムのデータ形式や通信プロトコルがEDIシステムと互換性があるか、またデータ転送のスピードや精度が業務ニーズに合致しているかを確認する必要があります。

取引先とのデータ連携確認

EDIは、自社と取引先との間でリアルタイムでデータを交換するための仕組みです。そのため、取引先が異なるフォーマットやプロトコルを使用している場合、双方のEDIシステムがスムーズに連携できるかを事前に確認する必要があります。

データフォーマットの違いや運用ルールの不一致があると、データの受け渡しが正常に行われず、取引に支障が出る可能性があります。導入前に、取引先と互換性についての技術的な打ち合わせを行い、必要に応じてフォーマットやプロトコルの調整を行うことが重要です。

また、Web-EDIには、標準EDIのように標準化された規格等はありません。そのため、複数社での電子取引をする場合は、発注側と受注側が同じシステムを導入しなければならないケースが大半です。製造業の受発注EDIは、発注側主導でWeb-EDIを導入するケースが多いので、仕入先への導入説明会やマニュアルなどの手配が必要です。

年間1210時間の工数を削減した受発注EDIとは?

生産管理フロー

多くの企業が発注EDIを導入することで、手作業に依存していた発注業務の大幅な効率化を実現しています。

実際に、ある電子部品の組立メーカーでは、Web-EDIの受発注システムを自社と100社以上の仕入先に導入したことで、年間1210時間の工数削減とペーパレス化に成功しました。

同社では従来、注文書印刷・押印・PDF化・メール送信という流れで発注作業を行っていました。工数負荷がかかるだけでなく、送り先に間違いがないか確認する際には心理的負担もありました。さらに、電子帳簿保存法に対応するため、PDF化した注文書は顧客フォルダごとに保存しなければなりませんでした。

そこで、電帳法対応の発注EDIシステムを導入し、発注業務のシステム化に成功されました。注文書印刷やメール送信の手間がなくなったのはもちろん、上長承認機能により押印作業も不要となりました。その結果、発注業務を大幅に短縮し、年間1210時間の工数を削減しました。


年間1210時間の工数削減を可能にした発注EDIの事例はこちら:
発注業務のペーパーレス化・効率化で年間1210時間の工数削減!メール中心のサプライヤー対応をシステム化し属人化・ヒューマンエラーも解消

受発注機能付きの生産管理システムという選択肢も

製造業で受発注EDIを検討する場合は、受発注機能がある生産管理システムの比較も可能です。

生産管理システムでは、在庫管理や生産計画、生産進捗といった製造に関する情報を一元管理できます。受発注機能もある生産管理システムを活用すると、在庫や生産のリアルタイムな情報をもとにした発注が可能になります。受発注EDIによる業務効率化だけでなく、発注の精度向上も期待できます。

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