集中購買のメリットが出るのはどんな時?分散購買・2社購買と比較し、購買方法の選び方を解説
公開日:2024年10⽉28⽇
最終更新日:2024年10⽉29⽇
製造業での「集中購買」は、コスト削減や交渉力の強化に有効な手法です。しかし、導入する際にはメリットとデメリットの両面を理解することが重要です。
本記事では、集中購買の基本から2社購買との比較、自社に最適な購買方法の選び方までを解説し、成功するためのポイントを詳しくご紹介します。購買戦略の見直しを検討する企業の方々にとって、役立つ情報が満載です。
集中購買とは
集中購買とは、企業内の複数の部署や工場が必要とする材料や部品を、一箇所でまとめて購入・発注する手法です。一度の購入量が増え、コスト削減や交渉力の向上が期待できます。しかし、分散購買とは異なり、柔軟性が制限されるリスクもあります。
分散購買との違い
分散購買とは、各工場や部門が独自に必要な材料や部品を購入する手法です。集中購買が全体的なコスト削減や交渉力の強化を目的としているのに対し、分散購買は各拠点の独立性を重視します。
分散購買では、現地のサプライヤーから迅速に調達できるため、急な需要変動や短納期対応が求められる場合に有利です。しかし、発注ロットが少なくなるため、結果として全体としてのコストが上がりやすく、管理負担も増加する傾向があります。対して集中購買は、効率性を優先する一方で、柔軟性の点では劣ると言えます。
2社購買との比較
2社購買とは、企業が特定の材料や部品を調達する際に、2つの異なるサプライヤー(仕入先、供給業者)を利用する手法です。2社購買の主な目的は、供給リスクを分散させることにあります。
例えば、一つのサプライヤーに問題が発生した場合でも、もう一方の業者から供給を受けることで、生産ラインが止まるリスクを最小限に抑えることができます。特に、安定した供給が求められる製品や、生産に不可欠な部品の調達においては、2社購買が有効です。
しかし、2社購買には、両業者との取引管理や品質管理が複雑になるというデメリットも存在します。
コスト面の比較
コスト面で見ると、集中購買は一度に大量の材料や部品を購入するため、仕入れ価格を抑える効果が期待できます。2社購買では、発注量が分散するため、一つのサプライヤーから大量購入することが難しく、単価が上がる傾向があります。
しかし、2社購買によって供給リスクが分散されることで、生産停止などのリスクコストを削減できる可能性もあります。したがって、コスト面での判断は、単純な仕入れ価格だけでなく、リスクコストを考慮した総合的な視点が求められます。
信頼性とリスクの違い
集中購買は、一つのサプライヤーに依存するため、サプライヤーの信頼性が非常に重要です。一方で、2社購買では、2つの業者からの供給を受けるため、もし一方の業者に問題が発生しても、もう一方の業者からの供給でカバーできるメリットがあります。
ただし、2社購買では、2つの異なる業者との関係を維持し、品質や納期の管理を行う必要があるため、管理コストや手間が増えます。企業は、自社の状況に応じて、信頼性とリスクのバランスを考慮した上で最適な購買方法を選ぶ必要があります。
集中購買のメリット
集中購買には、コスト削減や交渉力の強化、サプライチェーンの効率化、そして品質管理の効率向上といった多くのメリットがあります。これらの利点により、企業はより戦略的で効率的に資材等の購入を行うことが可能になります。
発注単価を抑えやすい
集中購買は、一度に大量の材料や部品をまとめて購入するため、仕入れ価格を抑えやすくなります。大量発注によるスケールメリットが発生し、仕入れ先との価格交渉において有利な立場を築くことができます。
特に、定期的に大量の資材を必要とする製造業においては、こうしたコスト削減の効果が顕著に現れます。また、物流コストの削減も期待でき、全体の発注コストを抑えることが可能です。
この集中購買に注力している代表企業が、トヨタ自動車です。トヨタ自動車は、日本製鉄などの主要な鉄鋼メーカーと交渉し、集中購買にて鋼板を買い上げています。それらを支給材としてトヨタ系列の自動車部品メーカーに卸すことで、大きなスケールメリットを出しています。
交渉力の強化
集中購買でサプライヤーとの取引規模を拡大することで、より強力な交渉力を持つことができます。一括して大量に購入することで、価格の引き下げや優先的な納期対応など、サプライヤーに対して有利な条件を引き出すことが可能になります。また、複数のサプライヤーと比較交渉を行い、最適な条件を選択する余地も広がります。これにより、企業の購買活動全体が戦略的かつ効果的になります。
サプライチェーンの効率化
集中購買により、サプライチェーン全体の効率化が期待できます。例えば、複数の工場や部署で共通の材料を使用する場合、同じサプライヤーから一括して調達することで、供給ルートが単純化され、物流管理の手間が減少します。また、納期の統一や在庫管理の簡素化にもつながり、企業全体の運営効率を向上させることができます。結果として、迅速で安定した供給体制の構築が可能となります。
品質管理の効率向上
集中購買により、品質管理の効率も向上します。共通のサプライヤーから材料を一括して調達することで、品質基準の統一やロットトレースが容易になり、ばらつきを減らすことができます。また、サプライヤーと長期的な関係を築くことで、品質に関するフィードバックの迅速なやり取りや改善が可能になります。このように、集中購買は製品の安定した品質を保ちながら、品質管理のコストや手間を削減する効果があります。
集中購買のデメリット
集中購買には多くのメリットがある一方で、リスクや制約も存在します。例えば、一つのサプライヤーに依存することでのリスク増大、柔軟性の欠如、管理コストの上昇、そして各拠点への納入リードタイムの長期化などが挙げられます。
一極集中によるリスク
集中購買では、特定のサプライヤーに依存することが多くなります。これにより、サプライヤーの事情やトラブルによって、材料や部品の供給が停止するリスクが高まります。例えば、自然災害や企業の倒産、品質問題などが発生した場合、すべての供給がストップする可能性があります。その結果、生産ラインが停止するリスクが高まり、業務全体に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
柔軟性の欠如
集中購買は、材料や部品を一括して調達するため、個々の部門や工場のニーズに柔軟に対応することが難しくなります。例えば、急な需要変動や仕様変更に対応しづらく、短期間での調達が必要な場合には対応が遅れることがあります。この柔軟性の欠如は、特に市場の変化が激しい業界や、顧客のニーズが頻繁に変わる状況では、企業の競争力を低下させる要因となります。
管理コストの上昇
集中購買を行うと、購買管理業務が集中化されるため、購買部門の管理の難易度は上がり、業務量は増加します。例えば、集中購買のためのデータ管理、発注手続き、在庫管理、品質チェックなど、多くの業務を一括で管理する必要があります。これにより、システム導入や専門性の高い従業員が必要となり、結果として管理コストが上昇する可能性があります。
各拠点への納入リードタイムが長くなる
集中購買を行う場合、全ての材料や部品を一つの供給ルートから調達するため、各拠点への納入リードタイムが長くなることがあります。特に、遠隔地にある工場や部門への納品には時間がかかり、最適なタイミングで材料が届かない場合、製造プロセス全体の遅延につながるリスクが高まります。この問題は、在庫管理の効率化を図る中で特に考慮すべき点です。
自社に適した購買方法を見極めるポイント
企業が最適な購買方法を選択するためには、以下4点のポイントを考慮することが重要です。
- 自社の規模と購買力
- 市場の特徴と競争状況
- リスク分散の必要性
- 継続的な改善
これらのポイントに沿って、どのような条件で集中購買が適しているのか見極める方法を解説します。
自社の規模と購買力
まずは、自社の資金力や調達量を把握し、それに基づいて適切な購買戦略を立てることが必要です。
大規模な企業であれば、集中購買を行うことで大量発注によるコスト削減や交渉力の向上が期待できます。
一方で、中小企業の場合は、購買力が限られているため、2社購買や分散購買を選択し、リスクを分散させることがより効果的です。
市場の特徴と競争状況
市場動向を把握したうえで購買戦略を選定することが重要です。 例えば、競争が激しい市場や価格変動が頻繁な場合、複数のサプライヤーとの関係を維持する分散購買がリスク軽減に有効です。
また、特定のサプライヤーの独占力が強い場合は、集中購買を通じて有利な取引条件を引き出すことが難しくなるため、他の購買手法の導入が望ましいと言えます。
リスク分散の考え方
集中購買はコスト削減に有利ですが、一つのサプライヤーに依存するリスクがあります。そのため、リスク分散の観点から、2社購買や分散購買を組み合わせることで、供給の安定性を確保しつつ、コストメリットを享受する方法もあります。リスク管理の視点を持ち、適切な購買方法を選ぶことが、長期的な事業の安定性に繋がります。
改善策とモニタリング方法
適切な購買方法を見極めた後でも、定期的な見直しと改善が必要です。購買戦略の効果を最大化するためには、定期的なデータ分析やサプライヤーのパフォーマンスレビューを行い、必要に応じて戦略を調整します。また、購買のプロセスやシステムの改善点を洗い出し、効率化を図ることで、企業全体の競争力を高めることが可能です。
集中購買・分散購買が向いている品目とは
集中購買と分散購買は、それぞれ異なる特性の品目に適しています。集中購買は、「大量かつ安定した需要がある品目」に向いており、分散購買は、「変動が多い需要やリスク分散が必要な品目」に適しています。
集中購買に向いている品目
集中購買に向いている品目は、需要が安定しており、定期的に大量の発注が必要なものです。
例えば、製造業で使用される標準部品や一般的な材料などが該当します。これらの品目は、一括で大量に購入することでコスト削減が可能であり、サプライヤーとの交渉力も高まります。また、品質のバラつきを防ぎやすく、安定供給が求められる状況にも適しています。
分散購買に向いている品目
分散購買が向いている品目は、需要が不規則で変動が大きいものや、リスク分散が求められるものです。
例えば、急な需要変動に対応するための緊急部品や、複数の供給元からの調達が必要な特注品などが挙げられます。分散購買により、供給の安定性を確保し、リスクを低減することができます。また、市場の価格変動に対応しやすく、柔軟な購買が求められる品目にも適しています。
最適な購買管理を実現するには
最適な購買管理を実現するためには、発注やサプライヤー管理の無駄をなくし、サプライヤーとの安定した関係を構築することが重要です。そのためには、管理システムを導入して効率を向上させることが効果的です。
サプライヤーとの安定した関係構築
サプライヤーと長期的な信頼関係を築くことで、供給の安定性が増し、突発的な供給不足にも迅速に対応できるようになります。定期的なコミュニケーションや評価制度を導入し、品質や納期の改善に取り組むことで、サプライヤーとの協力関係を強化することができます。安定した関係構築は、企業の競争力を高める重要な要素です。
管理システムの導入で業務効率化
管理システムの導入は、集中購買の業務効率化に大きく貢献します。例えば、購買管理システムを導入することで、発注業務の自動化や在庫管理の精度向上が期待できます。具体的には、人的ミスで起きやすい重複発注を防いだり、購買部門の事務作業や書類手続きを最小限に抑えたりできます。
また、サプライヤー情報や取引履歴を一元管理することで、迅速な意思決定が可能となり、リスク管理も強化されます。システム導入により、購買業務全体の透明性が向上し、効率的な管理が実現します。
集中購買の管理に向くシステムとは
集中購買を効果的に管理するためには、適切なシステムの導入が重要です。購買管理システムや、発注機能付きの生産管理システム、在庫管理システムの利用により、購買業務の効率化と透明性の向上が期待できます。
購買管理システム
購買管理システムは、企業の購買活動を一元的に管理するためのツールです。発注から支払いまでの一連のプロセスを自動化し、データの統合を図ることで、効率的な管理を可能にします。購買管理システムの導入により、在庫の最適化やコスト管理が容易になり、サプライヤーとの取引履歴や契約情報の一元化が実現します。また、発注ミスの削減や承認フローの迅速化により、業務の正確性とスピードが向上し、購買活動全体のパフォーマンスが向上します。
購買・発注機能付きの生産管理システムや在庫管理システム
上記のような購買管理や発注のシステムは、生産管理システム(もしくは在庫管理システム)の1機能として提供されているケースもあります。生産管理システムのように、製造情報を一元管理できるシステムで購買管理を行うと、製造プロセスと在庫状況をリアルタイムで把握したうえで発注できるメリットがあります。
製造情報と紐づいた発注ができると、より現在庫や生産計画に即した発注ができるようになります。その結果、過剰在庫や在庫不足を防ぎ、効率的な在庫管理が可能となります。また、一部の部材発注を自動化することで、手作業によるミスを減らし、時間とコストの削減が期待できます。これらのシステムは、特に複数の拠点やサプライチェーン全体を統合管理する際に有効です。
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