在庫引当とは？なぜ管理が難しいのか、業務の基本からシステム導入の方法まで解説

公開日：2024年04⽉24⽇

最終更新日：2024年09⽉26⽇

製造業における適切な在庫引当には、顧客満足度の向上や生産性の確保、過剰在庫の削減など、多くのメリットがあります。しかし、中小企業では在庫管理が手作業に頼る場合が多く、ミスが発生しやすいのが実情です。在庫引当とは何か、基本的な管理方法から、より効率的な在庫管理を実現するシステム導入に至るまでの方法を、わかりやすく解説します。

在庫引当とは

在庫引当とは、顧客からの注文に対して、必要な製品や部品を確保し、差し引く作業のことです。具体例として、以下のような業務は在庫引当といえます。

倉庫に保管してある部品を、製造現場に持ち出した
内示に基づく生産計画にて、使用予定の原材料在庫を確保した
受注後、出荷待ちの完成品を製品在庫から差し引いた

また、実在庫数から在庫引当数を差し引いた在庫数は、「有効在庫」といいます。

有効在庫＝実在庫 – 在庫引当数

たとえば、倉庫に100個の在庫がある部品を、製造に使うために20個持ち出したとします。そうなると、実在庫数は100個のままですが、有効在庫は80個、在庫引当数は20個となります。

在庫引当の目的

在庫引当の主な目的は、顧客からの受注に対して、所定の期日までに製品を確実に納品することです。納期遅れは顧客の信用を失うリスクにつながるため、納期の遵守はとても重要です。

上記の部品在庫100個の例でいうと、既に20個を製造に使う予定であれば、実際に製造に使える有効在庫は80個です。しかし、在庫が100個あると思い、80個以上の注文を受けてしまうと、在庫欠品による納期遅延に繋がりかねません。

在庫引当の目的は、このようなトラブルを防ぎ、生産計画通りに製造することです。

在庫引当の重要性

前述の通り、適切に在庫引当ができないと、顧客満足度の低下や生産ラインの非効率化、余剰在庫の発生など、多くの悪影響が生じてしまいます。

顧客満足度の向上

顧客から注文を受けた製品を期日までに確実に納品することは、顧客満足度を上げるために非常に重要です。在庫引当が適切に行われていれば、納期の遅延を防ぎ、顧客からの信頼を維持・向上させることができます。逆に納期遅延が増えると、顧客は他社に発注先を変更してしまうかもしれません。

生産ラインの効率化

製造工程で必要な部品や材料が適切に引き当てられていないと、生産ラインが止まってしまう可能性があります。余剰在庫と不足在庫、どちらも生産の効率化を妨げる要因となります。在庫引当を適切に行うことで、効率的な生産計画を立てることができます。

在庫不足・余剰在庫の削減

需要予測と実際の受注にずれが生じると、在庫不足や余剰在庫が発生してしまいます。在庫引当を適切に行うことで、実際の需要に応じた生産と在庫管理ができ、在庫不足や余剰在庫を最小限に抑えられます。在庫不足が生産に悪影響を及ぼすのはもちろん、余剰在庫も保管コストのロスにつながり、商機を逃してしまう可能性が高まります。

在庫引当のメリット

適切に在庫引当を行うことで、納期遅延のリスク低減、在庫情報の共有などによって、無駄のない在庫管理が可能になります。

納品遅延のリスク低減

在庫引当を適切に行えば、受注に対して確実に製品を用意し、納期に間に合わせることができます。万が一、部品の欠品などで製造が遅れそうになっても、早期に対応できるため、納期遅延による影響を抑えることができます。

在庫情報を社内共有できる

在庫引当によって在庫数を正確に把握できると、社内での在庫情報の共有にも役立ちます。たとえば、製造現場で在庫引当の情報を反映し、発注担当者がそれらを把握すれば、正確な在庫に基づく発注が可能となります。ほかにも、生産計画の立案や販売など、在庫に基づく判断をスムーズに行うことができます。

在庫管理の効率化

在庫引当数の管理ができると、余分な在庫を抱え込む必要がなくなったり、欠品リスクを下げたりといった効果が期待できます。適正な在庫水準を維持しやすくなるため、保管スペースの有効活用や、デッドストックの削減など、効率的な在庫管理が可能になります。

在庫引当を行う注意点

適切な在庫引当を行うためには、データの正確性とデータに基づく現場作業がとても重要です。

データの入力ミス

在庫データの都度入力は、在庫引当の基盤となる作業です。例えば、入荷数量や出荷数量の入力を間違えると、システム上の在庫数が実在庫数と異なってしまいます。このようなデータの誤りは、後の工程での手戻りや、無駄な在庫を生む原因になります。

実地棚卸でのミス

定期的に行う実地棚卸でも、目視による在庫確認は、ヒューマンエラーのリスクを完全になくすことができません。製品の数を間違えたり、在庫の場所の確認を怠ったりすると、棚卸しデータと実在庫にズレが生じてしまいます。

紙やエクセルでの管理の難しさ

多くの中堅中小製造業では、在庫管理を紙やエクセルで行っています。しかし、手作業による管理では、データ入力の手間やエラーリスク、実在庫把握の難しさなどから効率的な在庫引当が難しいです。実際に、最新の在庫引当の状況がわからないため、現場まで在庫数を都度確認しに行っているという担当者も多くいます。

ヒューマンエラーの可能性

紙やエクセルで在庫管理を行うには、人の手による入力作業が欠かせません。入出庫のたびに手作業でデータ入力を行うため、入力ミスが発生しやすくなります。さらに、複数人で同じデータを共有する際も、転記ミスなどのリスクが生まれます。一度でも間違った在庫データが作成されると、在庫引当を含むその後の在庫管理に大きな影響が出てしまいます。

在庫状況のリアルタイム把握が困難

正確な在庫引当において、リアルタイムで在庫状況を把握することはとても重要です。しかし、紙やエクセルで在庫管理を行っていると、在庫数を手書き・手入力するまで情報が更新されず、常に最新の在庫数を把握することが難しくなります。このデメリットは、在庫引当の管理において大きな障害となります。

在庫引当を効率的に行うには

在庫引当を含む、効率的かつ正確な在庫管理を実現するには、以下のような運用が効果的です。

在庫管理システムによる在庫データの一元管理
製品の保管場所の明確化
在庫管理ルールの共有
定期的な棚卸し

在庫管理システムによるデータ一元管理

在庫引当を正確に行うには、製品や部品の在庫データを正確に把握する必要があります。在庫管理システムを導入することで、在庫データの一元管理と共有が可能になり、場所を選ばずにデータにアクセスしたり、リアルタイムに在庫状況を把握したりできます。

製品の保管場所の整理

製品や部品の保管場所を明確にすることで、在庫の所在を常に把握できるようになり、出荷や棚卸しの際に商品を探す作業が大幅に効率化されます。製品をカテゴリーごとに区分けした専用の保管スペースを設ける、ロケーションを決めて表示する、といった方法がおすすめです。

在庫管理ルールの共有

製品の受け入れから出荷に至る一連の在庫管理の手順を文章化し、関係者全員でルールを共有することも重要です。具体的には、在庫データの入力タイミングや方法、保管場所のルール、棚卸しの手順など、詳細を明確に決めます。

定期的な棚卸し

入出庫データとの差異を確認するため、定期的な棚卸しも効果的です。データと実際の在庫にズレがある場合、原因を特定し、データを修正できます。

在庫管理のアウトソーシング

自社での在庫管理が難しい場合は、外部の専門業者に在庫管理業務を委託するアウトソーシングも選択肢の一つです。ただし、外部業者に在庫データを預けるリスクもあり、慎重な検討が必要です。

より正確・効率的な管理には在庫管理システムがおすすめ

前述の通り、紙やエクセルでの在庫管理には多くの課題があり、特に在庫引当に必要なリアルタイム管理が難しいという課題があります。在庫引当を正確、かつ少ない手間で効率的に行うには、在庫管理システムの導入がおすすめです。在庫管理のシステム化によって、在庫データの一元管理やリアルタイム把握が可能になり、ミスが生まれるリスクを大幅に減らすことができます。

在庫管理システムのメリット

在庫管理システムの最大のメリットは、データの一元管理とリアルタイム在庫把握が可能になることです。製品の入出庫データをシステムで一元管理できるため、常に正確な在庫数を確認できます。

さらに、ハンディーターミナルによるバーコード管理や ICチップ管理を活用すれば、入出庫などの在庫情報を現場ですぐ更新できるようになります。具体的には、現場で各在庫品のバーコードをハンディーターミナルで読み取り、入庫や出庫の登録をすると、在庫管理システムに即時データが反映されます。目視確認や手書き、エクセルへの転記といったアナログな業務を自動化することで、ミスの削減にもつながります。

また、在庫管理システムには、需要予測や適正在庫数の自動計算、発注支援などの高度な機能が備わっているものもあります。データに基づく判断が可能になり、過剰在庫や欠品のリスクを抑えられます。

在庫管理システムの導入手順

在庫管理システムは、以下のような手順で導入するのがおすすめです。

自社の業務プロセスや在庫管理ニーズを整理
複数のシステムを比較検討し、最適なものを選ぶ
現場のルール整備、社内教育、テスト運用
本格稼働

初期コストが課題となる場合は、クラウド型の低コストシステムを検討するのもおすすめです。中小企業であっても、手作業に頼らず、在庫管理を徹底的に行えるようになります。

在庫引当の業務をシステム化した事例

金属部品の製造会社A社は、在庫管理機能のある生産管理システムを導入し、在庫引当の自動化に成功しました。

A社が長く使用していた生産管理システムでは、在庫管理機能が不十分で、仕掛品や在庫引当などの管理ができませんでした。その不足部分はエクセル管理で補っていましたが、システム老朽化を機に生産管理システムを置き換え。在庫管理モジュールの「部材引落」機能の活用で、製造工程が進むと部品在庫が自動的に引き落とされるフローを確立しました。
詳細：【生産管理システム】部材引落による生産工程と在庫数の連動管理を実現！

22種類の生産管理システムをランキングで比較

初期費用相場や選び方のポイントをチェック

生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。