MESとLIMSの違いを徹底解説 どちらを検討すべき?生産管理システムで十分なケースも

MES・LIMSとは

中小・中堅製造業の現場責任者様で、紙やエクセルでの業務の非効率さに悩んでいませんか。本記事では、製造現場を効率化するMES(製造実行システム)と、品質管理を強化するLIMS(ラボ情報管理システム)について詳しく解説します。それぞれのシステムの特徴や違い、導入のメリット、さらに費用や成功事例まで網羅的にご紹介し、皆様のシステム選定の一助となる情報を提供します。

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MESとLIMSの定義・役割の違い

MES(製造実行システム)とLIMS(ラボ情報管理システム)は、いずれも製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で不可欠なシステムです。しかし、それぞれ異なる役割を持っています。

MES(Manufacturing Execution System)は、主に製造現場の生産活動をリアルタイムで管理するシステムです。具体的には、生産計画の実行、工程の監視、進捗管理などを行います。生産ラインの稼働状況や原材料の投入状況を把握し、生産効率の向上や品質の安定化を目的としています。

一方、LIMS(Laboratory Information Management System)は、試験室(ラボ)におけるサンプル管理、試験データの記録、結果の解析といった品質管理業務に特化しています。例えば、製造された製品の品質検査データや研究開発における実験データを一元的に管理し、トレーサビリティの確保や規制対応の効率化に貢献します。

項目MESLIMS
主な管理対象作業進捗・設備・材料・在庫試験サンプル・分析手順・試験結果
利用部門製造部・生産管理品質保証部・分析ラボ
目的生産性と現場効率の向上品質トレーサビリティ・法規制対応

MESが製造ライン全体の進捗や設備をリアルタイムで制御するのに対し、LIMSは品質評価の深掘りに焦点を当てている点が大きな違いです。これらのシステムは、製造業が直面する多様な課題に対応するため、それぞれの機能を理解し、自社のニーズに合わせて導入を検討することが重要です。

MES:製造実行システムの機能

MES(Manufacturing Execution System)は、主に製造現場の生産活動をリアルタイムで管理するシステムです。具体的には、生産計画の実行、工程の監視、進捗管理などを行います。生産ラインの稼働状況や原材料の投入状況を把握し、生産効率の向上や品質の安定化を目的としています。

MESは、製造現場の生産活動をリアルタイムに管理するシステムです。生産計画に基づき、現場での生産工程の監視、進捗管理、品質管理、設備管理、作業者への指示出し、在庫管理など多岐にわたる機能を持ち、生産効率の向上やコスト削減に貢献します。具体的には、以下のような機能を持ちます。

  • 生産資源の配分と監視
  • 作業のスケジューリング
  • 差立て・製造指示
  • 仕様・文書管理
  • データ収集
  • 作業者管理
  • 製品品質管理
  • 工程管理
  • 製品の追跡と生産体系管理
  • 実績分析
  • 設備の保守・保全管理

MES導入のメリットとしては、リアルタイムでの製造現場の可視化、生産効率の向上、品質管理の強化、在庫管理の最適化、属人化の解消、トレーサビリティの確保、部門間連携の強化、コスト削減などが挙げられます。特に中小企業にとっては、限られた資源を最大限に活用し、生産性向上や品質維持、コスト削減を実現するための重要なツールです。

→ MESのより詳しい解説はこちら

LIMS:ラボ情報管理システムの機能

一方、LIMS(Laboratory Information Management System)は、試験室(ラボ)におけるサンプル管理、試験データの記録、結果の解析といった品質管理業務に特化しています。例えば、製造された製品の品質検査データや研究開発における実験データを一元的に管理し、トレーサビリティの確保や規制対応の効率化に貢献します。

LIMS(ラボ情報管理システム)は、ラボにおけるサンプルや試験結果、ワークフローなどを一元的に管理するシステムです。主な機能としては、以下のようなものがあります。

  • サンプル管理: 試料の登録・検索・追跡
  • 試験管理: 試験手順や条件の登録、作業者間での共有、監査証跡の自動保存
  • 品質管理(QA/QC): 試験データの改ざん防止や変更履歴の自動保存
  • 帳票出力とレポート: 紙やExcelで時間がかかりがちな帳票作成を自動化
  • データ管理と分析: 試験結果データの一元管理、統計解析や可視化
  • 機器連携: 実験機器との連携、データ自動取り込みやエラーの読み取り

LIMSを導入すると、手入力・紙帳票の廃止による作業効率化・脱属人化はもちろん、品質トレーサビリティを強化できます。GMP/ISO 監査に必要なログ・電子署名などの機能もあるため、バリデーション工数を縮小できるというメリットもあります。コンプライアンスや監査対応を効率化したい企業に向いていると言えます。

日本市場の主要プレーヤーには、島津製作所、堀場製作所、日本電子、日立ハイテク、富士フイルム和光純薬工業などが挙げられます。

MESとLIMS をつなぐデータモデル(ISA-95・HL7)

こう見ると、MESとLIMSは一見、直接的に関係のないシステムのように見えるかと思います。しかし、実は密接に関係しています。これを整理するために用いられるのが「ISA-95」という製造業の標準階層モデルです。

ISA-95(Enterprise-Control System Integration:ビジネス及び製造システム統合)とは、企業と制御システムを統合する国際基準です。ERPとMESなど、モデルや用語が異なるシステムを共通化し、スムーズに連携させるための標準階層モデルです。たとえば、MESで製造されたロットに対して、LIMSで品質試験が行われることで、製品の一貫性・信頼性が担保されます。

医薬品業界などでは、LIMSが「HL7(医療分野の通信規格)」にも対応し、外部機器との連携にも活用されます。HL7は、患者管理、会計、検査報告など、様々な医療情報を交換するための共通言語として使用される国際標準規格です。LIMSがHL7に対応することで、検査機器からのデータ自動取り込みや、他の医療情報システムとの連携が可能となります。これにより、医薬品開発におけるデータ管理要件への対応を強化できます。

MES×LIMS連携で得られる3つのメリット

MES×LIMS連携で得られる3つのメリット

MESとLIMSを連携すると、以下3つのメリットを得られます。

  • リアルタイム品質保証とOEE改善
  • 電子バッチレコード(EBR)自動作成
  • コンプライアンス強化

リアルタイム品質保証

MESが持つ「製造オーダー・作業実績」と、LIMSが持つ「試験結果・合否判定」が連携されることで、製造中の不具合を即時に検知・対応できるようになります。

例えば、LIMSから「合否:不適合」のフラグがMESへ連携されれば、そのロットが自動で出荷停止・再検査されるなどの仕組みが作れます。これにより、歩留まり向上・トラブル削減・工程変更スピードの向上が実現します。

電子バッチレコード(EBR)自動作成

LIMSの試験データをMESへ連携できると、「製造履歴」と「試験履歴」を一元管理できます。この仕組みは「電子バッチレコード:EBR(Electronic Batch Record)」と呼ばれ、医薬・食品・化学業界の監査対応や、GMP要件に必須の機能とされています。

また、属人的な手書き帳票やスキャンPDFに頼る必要がなくなり、監査対応コストや人的ミスのリスクを大きく削減できます。

コンプライアンス強化

LIMSは、電子署名・監査証跡・原本改ざん検出などデータ完全性(DI:Data Integrity)を保証する設計がなされています。これにMESの工程データが加わることで、製品ライフサイクル全体でのトレーサビリティとコンプライアンス対応が可能になります。

特に21 CFR Part11(電子記録・電子署名に関する米国FDA規制)や、試験所の国際規格ISO 17025などへの対応に有効です。

主要なLIMSソリューションと市場の動向

主要なLIMSソリューションと市場の動向

LIMS市場には多様なソリューションが存在し、それぞれの特徴や対象業界が異なります。一般的には医薬品業界向けのLIMSが多いですが、化学品業界や食品業界など、その他の品質管理が厳しい業界にも対応するLIMSもあります。

LabDAMS(日立ハイテク)

日立ハイテクが提供するLIMS「LabDAMS」は、多くの製造業企業に信頼されている情報システムです。効率的なデータ管理と分析を通じて、製造業の品質向上や生産性の最大化に貢献しています。

このLIMSの最大の特長は、使いやすさと高いカスタマイズ性を両立している点です。各企業の独自の要件や業務フローに合わせてシステムを最適化できます。市場からは、安定した運用性や充実したサポート体制が高く評価されています。

HITPHAMS(日立製作所)

「HITPHAMS」は、日立製作所が提供する医薬品業界向けのMES・LIMSパッケージソフトウェアです。医薬品製造に関する国際的な品質管理基準である、PIC/SのGMPガイドラインに準拠しており、GMPに必要な製造記録や品質記録を一元的に管理できます。

さらに、オプション機能として生産計画や倉庫管理なども追加でき、医薬品製造における包括的な管理体制を構築できます。

OpreX LIMS(横河ソリューションサービス)

「OpreX LIMS」は、横河ソリューションサービスが提供する、全業種向けのLIMSです。医薬品業界向けの「CIMVisionLIMS」と、石油・化学・食品・環境分析などの他業界向けLIMS「Lab-Aid」を統合し、誕生したLIMSです。

MESやERP、生産管理システムとの連携も可能で、企業・工場全体の品質マネジメントが可能となるシステムと言えます。

LIMSの導入事例と効果・成果

近年、製造業におけるLIMSの導入が積極的に行われています。その背景には、品質監査への対応や製品データの正確なトレーサビリティ確保が求められるためです。

ある中堅製造業会社では、LIMSを導入することで、従来手動で行っていた資料管理が一元化され、監査時の迅速な対応が実現しました。また、LIMSによるデータの自動収集・管理により、人的なミスを大幅に減少させ、品質管理の精度が向上しました。これにより、外部からの信頼性も高まり、取引先との関係強化にも寄与しています。

LIMS導入の効果は、単にデータの管理だけでなく、業務の効率化や信頼性向上にも繋がり、結果として企業の競争力強化に寄与しているのです。

LIMS導入に際しての注意点

LIMS導入に際しての注意点

LIMSの導入は、ラボの効率化と品質管理の最適化に大きなメリットをもたらします。しかし、成功のためにはいくつかの重要な注意点があります。特に、費用や予算計画、そしてコスト削減のためのヒントを事前に把握しておくことが肝要です。

LIMSの導入形態により費用は異なる

LIMSの導入費用は、システムのタイプや機能、導入形態によって大きく変動します。主にオンプレミス型、クラウド型(SaaS、PaaSなど)、ハイブリッド型に分けられ、それぞれ初期費用と運用費用が異なります。

LIMSの導入形態ごとの費用と特徴を比較すると、以下の違いがあります。

導入形態初期費用運用費用特徴
オンプレミス型高い(サーバー購入など)自社での管理・保守費用・自社でサーバーを設置・管理するため、システムの自由度が高い
・ 高額な初期費用がかかり、専門知識を持つ技術者の確保や保守運用に手間がかかる可能性あり
クラウド型(SaaS、PaaSなど)低い(初期設定費など)月額利用料が一般的(月数万円~)・インターネット経由でシステムを利用するため、初期費用を抑えやすい
・短期間で導入できる
・サーバーの保守運用はベンダーが行うため、運用負担が少ない
・カスタマイズの自由度はオンプレミス型より限定的
ハイブリッド型中間中間・オンプレミス型とクラウド型を組み合わせて利用する形態(機密性の高いデータはオンプレミスで管理、日常的な業務はクラウドで処理など)
・費用を抑えつつ、ある程度のカスタマイズもしたい場合に有効
・システム構成が複雑化し、運用管理の負担が増える可能性あり

LIMSの導入には、ソフトウェアライセンス料だけでなく、初期設定費、データ移行作業費、既存システムとの連携費用、カスタマイズ費用などが必要です。

そして、導入後の保守・サポート費用なども発生します。特に、医薬品業界のように厳格な規制がある場合、コンピュータ化システムバリデーション(CSV)といった検証作業が必要となり、これにも追加費用が発生するケースが多い傾向にあります。

予算計画を立てる際には、これらの項目をすべて考慮し、短期的な費用だけでなく、長期的な視点で費用対効果を分析することが重要です。無駄な機能の追加を避け、自社の業務に本当に必要な機能を明確にすることで、初期投資を最適化できます。

コスト削減のためのヒント

LIMSの導入においてコストを最適化するためには、過剰な機能搭載や不要なカスタマイズを避けることが重要です。そのためにも、システム選定時は、自社の現在の業務フローや必要な機能を詳細に洗い出しておくことをおすすめします。これにより、初期投資を抑えることができます。

次に、複数のベンダーを比較検討し、自社のニーズに最も合致するシステムの中でコストパフォーマンスの高いLIMSを選択することが重要です。市場には多数のLIMSベンダーが存在し、それぞれ提供する機能やサービスが異なります。ベンダーとの交渉を通じて、自社の予算や要望を明確に伝え、柔軟な対応を引き出すことも有効です。

中小製造業にはMES×LIMSが高コスト・過剰機能なケースも

中小製造業にはMES×LIMSが高コスト・過剰機能なケースも

近年は多品種少量生産の加速により、製造管理・品質管理の難易度も高くなりつつあります。紙やエクセルでは管理工数が膨大になり、人的ミスも起きやすくなるため、DXによる業務効率化の必要性は増すばかりです。

その波は中小製造業にも押し寄せているため、「MESとLIMSで、品質管理も強化しよう」と検討するケースも増えているかと思います。しかし、LIMSは機能が充実している分、中小企業にとっては高価で検討が難しい場合も少なくありません。

以下のような課題を解決したい企業は、生産管理システムなども比較検討すると、より必要な機能に絞ったシステム導入ができる可能性があります。

  • 製造工程と品質検査情報を一元管理したい
  • 誰が・いつ・何を検査したかをシステムで記録し、トレーサビリティを強化したい
  • 試験結果を即座に製造や在庫データに反映したい

上記機能は、実は多くの生産管理システムにも備わっています。クラウド型の生産管理システムで、GxPやISO対応の実績があるものを選べば、一般的なLIMSより安価にシステム導入できる可能性があります。複雑な分析フローやサンプル追跡、高度な測定機器連携やHL7連携まで必要がない場合は、比較対象をMES・LIMSから少し広げてみるのも手です。

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製造工程と検査記録などを、低コストなシステムで一元管理したい企業には、生産管理システムSmartF(スマートF)がおすすめです。低コストなクラウド型で、MESとLIMSの一部機能を導入できます。

■生産管理システムSmartFでできること(一例)

  • 生産計画・生産調整
  • 工程や負荷のモニタリング
  • 工程進捗管理
  • ロット・シリアル管理
  • 期限管理
  • 工程ごとに作業者が検査記録
  • 原材料の誤使用防止アラート
  • 計量器連携

SmartFの特徴として、パッケージの中から必要な機能を選んでスモールスタートできるという点があります。機能追加も柔軟に可能なので、例えば「MES周りの機能を入れて、慣れたら品質管理機能を追加」といった段階導入も可能です。

機能を抑えた導入には、低コスト以外にも、現場負荷の軽減というメリットがあります。一度に多くの機能を導入すると、現場の作業内容も大きく変わり、定着が難しくなるケースが多くあります。このような事態を防ぎ、着実に現場DXを進めていけるのが、SmartFが選ばれている一番の理由です。

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