生産管理のあるべき姿とは?最適な生産管理でQCD向上を実現
公開日:2023年04⽉11⽇
最終更新日:2024年11⽉26⽇
製造業がものづくりをする上で、生産管理は欠かせない業務の一つです。生産スケジュールを管理するだけではなく、ものづくりに関するあらゆる要素を総合的に管理する必要があります。今回の工場改善コラムでは、生産管理のあるべき姿と、それに近づくための具体的な方法などをまとめて解説いたします。
生産管理とは?初心者でもわかる基礎知識を解説
まずは、生産管理がそもそもどういった業務なのかを整理してみましょう。
生産管理の定義
JIS Z 8141では、生産管理を次のように定義しています。
「財・サービスの生産に関する管理活動。具体的には、所定の品質Q(Quality)、原価C(Cost)、数量及び納期(Delivery)で生産するため、又はQ・C・Dに関する最適化を図るため、人、物、金、情報を駆使して、需要予測、生産計画、生産実施、生産統制を行う手続き及びその活動。」
簡単にまとめると、「需要に基づいて生産計画を立案し、最適な品質・原価・納期でものづくりが行われるように管理する業務」が生産管理といえます。
生産管理で行われる業務
先ほどの定義にもあったように、生産管理にはさまざまな業務が含まれています。生産管理で行われる主な業務と概要をまとめました。
需要予測 | 過去の販売実績や天候・季節・市場動向などの情報をもとに自社製品の需要を予測する業務 |
受注管理 | 顧客からの受注件数や品目、数量、納期などを管理する業務 |
生産計画 | 需要予測や受注状況をもとに、どの製品を・いつまでに・いくつ生産するのかを計画する業務 |
在庫管理 | 完成品・仕掛品・部品・原材料・資材といったあらゆるモノの在庫を管理する業務 |
発注管理 | 生産に必要な原材料・部品・資材を仕入先に発注したり、入荷状況を管理したりする業務 |
工程進捗管理 | 生産の進捗状況を把握し、必要に応じて生産計画や生産能力を調整する業務 |
外注管理 | 外注先に生産を委託し、進捗状況や品質を管理する業務 |
品質管理 | 製品が要求品質を満たしているか検査をしたり、不良が発生しないように改善する業務 |
原価管理 | 製品を作るのにかかったコストを集計し、収益性を改善する業務 |
生産管理の重要性とメリットとは?企業における役割や目的を解説
製造業において、生産管理はなぜ重要といわれているのでしょうか。ここでは、生産管理の重要性とメリットについて解説いたします。
なぜ生産管理は重要なのか?
生産管理が正しく実施できていないと、製造現場では次のようなトラブルが発生しやすくなります。
品質(Quality)に関するトラブル | ・品質が安定せず、不良によるロスが発生する
・不良品が流出し、顧客からの信頼を失ってしまう ・過剰品質によって、原価や納期に悪影響が及ぶ |
原価(Cost)に関するトラブル | ・製造コストが高くなり、十分な利益を確保できない
・売価を引き下げることができず、競合他社との競争に破れてしまう ・無理に製造コストを下げようとして、品質や納期に悪影響が及ぶ |
納期(Delivery)に関するトラブル | ・顧客に約束した納期を守れず、信頼を失ってしまう
・予定通りに生産できず、待ち時間や残業が発生してしまう ・無理に納期を短縮しようとして、品質や原価に悪影響が及ぶ |
生産管理は所定の品質、原価、数量および納期で生産するための業務です。これらのトラブルを起こさないために、生産管理のあり方を学ぶ必要があります。
生産管理のメリットとは?
生産管理のメリットは、QCDが最適化されて効率的にものづくりを行えるようになることです。高品質な製品を適切な価格で素早く提供できれば、顧客満足度が高まって売上増加につながります。また、製造コストを抑えることで利益率が向上すれば、従業員への還元や将来に向けた投資によって、企業価値をさらに高められます。
生産管理の種類と特徴とは?MPSやMRP、JITなどの手法を紹介
生産管理にはさまざまな手法があり、状況に応じて使い分けられています。ここでは、生産管理の主な手法を3つご紹介します。
MPS(Master Production Schedule)
MPS(Master Production Schedule)は、日本語では「基準日程生産計画」と呼ばれる生産計画の手法です。簡単に言うと、「ある製品をいつまでに・いくつ生産するかを決める」生産計画となります。完全受注生産の製品でなければ、多くの企業がMPSの考え方に則って生産計画を行っています。
すべての製品を受注後に生産できるのであれば、MPSで計画を立てる必要はありません。しかし、実際は日次で生産できる数に限界があるため、受注後に生産をしていては顧客の希望納期通りに供給できず、販売機会を失う恐れがあります。また、製造現場の負荷を平準化できず、ムリ・ムダ・ムラが発生する原因にもなります。
MPSでは、製品の需要を予測して適切な生産量と時期を計算します。受注より先行して生産することで、必要と思われる在庫を確保したり、製造現場の負荷を平準化したりできるのです。
MRP(Materials Requirement Planning)
MRP(Materials Requirement Planning)は、日本語では「資材所要計画」と呼ばれています。MRPは上述したMPSと密接に関わっており、MPSで立案した計画にもとづいて必要な原材料や部品の量と時期を計算し、調達計画を立てるというものです。
原材料や部品の所要量を計算するためには、製品ごとの構成情報を正確に把握しておく必要があります。また、各構成部材のリードタイムや現在および将来の在庫数を計算し、在庫が不足するタイミングから逆算して発注をかけなければなりません。
MPSは過剰在庫や欠品の防止に役立つ手法として知られています。また、人員や設備も含めて生産に必要なすべてのリソースを管理する「MRP2(Manufacturing Resource Planning:製造資材計画)」や、生産だけでなく企業経営に必要なすべてのリソースを管理する「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」といった発展形も存在しており、奥が深い手法です。
JIT(Just In Time)
JIT(Just In Time)はトヨタ自動車が導入した生産方式として広く知られています。製造現場の各工程に対して「必要なときに、必要なものを、必要なだけ供給する」手法であり、次のようなメリットがあります。
- 在庫を徹底的に減らすことで、在庫管理の手間がなくなる
- 在庫を抱えないので、コスト削減につながる
- JITを実現するために改善を重ねることで、生産性が向上する
- JITを正しく回すことでリードタイムを短縮できる
一方で、在庫切れで生産が停止するリスクがある、取引先も含めて徹底する必要がある、といったデメリットもあります。自動車業界をはじめとする大手企業を中心に導入されている手法であり、中小企業が導入するのは難しいかもしれません。
生産管理における課題とは?解決策や改善方法を考える
ここまでの内容を踏まえると、生産管理のあるべき姿とは、「最適な品質・原価・納期でものづくりが行われるように管理されている状態」と考えられます。しかし、実際にその状態を維持できている企業は少なく、あるべき姿との乖離がある状況です。
ここでは、多くの企業が抱えている生産管理の課題を紹介し、解決策や改善方法について考えていきたいと思います。
アナログな管理を行っている
かつての大量生産の時代では、管理すべき情報が少ないため紙やエクセルでも生産管理が成り立っていました。しかし、多品種少量生産が主流となった現在では、膨大な情報を管理しなければならず、紙やエクセルによる生産管理は困難です。
たとえば、生産する製品が数種類であれば、ホワイトボートやエクセルで十分に生産計画を立案できます。しかし、製品が多くなればなるほど複雑な生産計画を練らなければならず、人の手で行うのが難しくなるでしょう。
アナログな生産管理から脱却するためには、ITの力を借りるのが得策です。生産管理システムの中には、受注状況や各製品の標準リードタイム、製造現場の負荷状況などの情報をもとに、自動で生産計画を立案してくれるものがあります。ほかにも、手書き・手入力によるミスを削減できる、集計を自動で行ってくれる、といったように、生産管理がシステム化されることでさまざまなメリットを得られます。
部門間で連携できていない
生産管理にはさまざまな業務が含まれており、営業・製造・調達・品質といった複数の部門が関わります。最適な生産管理を行うには部門間での連携が必須となりますが、実際は各部門が独自に管理しており、連携できていないケースが多いです。特に、紙やエクセルを使って管理していると、部門間での情報共有がしづらい傾向にあります。
部門間の連携を強化するためには、共通の目標を設定して全体最適で生産管理に取り組む必要があります。また、各部門の持つ情報を生産管理システムに集約するなど、情報共有しやすくなる仕組みを構築することも重要です。
QCDのバランスが悪い
生産管理ではQCD(品質・原価・納期)の最適化を目指しますが、特に重要なのは3つのバランスです。QCDは相互に関係しているため、バランスを意識しなければお互いに悪影響を及ぼす恐れがあります。
たとえば、品質向上を目的に高機能な部材を使用すると、製造コストが上がります。また、検査工程を増やしたり、合格水準を厳しく設定したりすると、歩留まりが悪化して製品が完成するまでの時間が長くなります。
QCDのバランスを考える上で基準にすべきなのは、品質です。顧客の要求品質を満たしていなければ、製品が売れなくなります。反対に、過剰品質になるとコストが上昇して納期も長くなるので、最終的に顧客の要求を満たせなくなります。顧客の要求品質を明確にし、それに対して最適な品質・原価・納期で生産することを目指しましょう。
現場の見える化ができていない
「生産の進捗状況が分からない」「在庫がどれだけ残っているのかが分からない」など、生産管理をする上で大きな課題となるのが、現場の見える化です。現場の見える化ができていなければ、適切な生産計画や調達計画を立案することはできません。また、生産の遅れや品質トラブルに対して素早く適切に対処できなくなるため、QCDの最適化は困難です。
現場を見える化するためには、作業者一人一人の協力を仰ぐ必要があります。生産実績や在庫の入出庫実績をミスや漏れがないように記録してもらい、その結果を集計することで現場の状況が見える化されます。記録の手間をなくしたり、集計を自動化するために、生産管理システムのようなITツールを活用するとよいでしょう。
業務の標準化ができていない
昨今では人手不足の影響などもあり、業務が特定の担当者に依存してしまう属人化が進んでいます。生産管理においても属人化は大きな課題であり、「この作業はあの人しかできない」「あの人がいないので業務を進められない」といったトラブルを招きかねません。
安定したものづくりをするためには、業務の標準化を図り、誰でも等しいレベルで業務を行える仕組みを構築しなければなりません。
- マニュアルを整備する
- 従業員の担当業務やスキル、ノウハウを見える化する
- 相手が誰であっても分かるように手配・指示をする
- 設備やシステムによって自動化する
上記のような対策を少しずつでも進めていくことをおすすめします。
生産管理を「あるべき姿」にするためのポイントとは?実践的なアドバイスを紹介
生産管理を「あるべき姿」にするためには、現在の自社の生産管理でどういった業務を行っているかを整理し、課題を洗い出して改善していく必要があります。上述した通り、生産管理にはさまざまな課題がありますが、それらの解決に役立つのが「生産管理システム」です。
当社ネクスタでは「スマートF」という生産管理システムを開発し、中小規模の製造業を中心に提供していますが、ほとんどのお客様がアナログな生産管理に課題を感じていました。手書きやエクセルを中心とした生産管理には多くの手間がかかり、現場の見える化や情報共有がしにくくなってしまいます。
たとえば、ある金属加工メーカー様では現場での手書きやエクセル管理が多く、入力の手間や誤出荷、紙書類からの調査、担当者への都度の進捗確認や二重チェックなど、非効率的な業務に悩んでおられました。しかし、当社の「スマートF」を導入し、バーコードを活用してあらゆる現場作業をデータ化した結果、次のような改善効果を得られたといいます。
- 約1000件の都度確認や手書きがほぼゼロになり、ムダな工数を500時間以上削減
- 誤出荷や工程飛ばしのミスがほぼゼロになり、品質が向上
- ミスや不具合の原因調査が半日から数分に大幅短縮し、改善案出しも可能に
もちろん、生産管理システムはあくまでもツールであり、導入してすぐにあるべき姿が実現するわけではありません。業務のやり方が大きく変わるので現場の方々には負担がかかりますが、全社で一丸となって取り組んでいくことで、着実にあるべき姿へと近づけるでしょう。
まとめ
今回は、生産管理のあるべき姿について考えてきました。QCDを最適化して製造業が競争力を高めるために、生産管理は欠かせない業務です。今一度、自社の生産管理を見直してみてはいかがでしょうか。
当社ネクスタも、生産管理システム「スマートF」を通じて製造業のお客様がより力を発揮できるようにサポートしております。生産管理の改善に関する無料診断も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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