GMPソフトとは 求められる要件やGMPハードとの違いを解説
公開日:2024年09⽉26⽇
最終更新日:2024年09⽉26⽇
医薬品業界で適用されているGMP(Good Manufacturing Practice)において、GMPソフトはGMPハードと並び、正しく運用するために非常に重要な要素です。
本記事ではGMPソフトの概要やGMPハードとの違い、求められる要件について詳しく解説します。
GMPソフトとは
GMPソフトとは、医薬品の製造および品質管理において、製造プロセスの標準化と一貫性を確保するために文書化された手順や管理システムの規定を指します。
GMPにおいて、各製造プロセスでの品質検査項目や品質管理体制などは、文書化されている必要があります。それらの基準をすべて満たさないと医薬品を販売できません。GMPソフトでは、これらの文書や管理体制を規定しています。具体的には、標準作業手順書(SOP)、品質管理体制、製造記録、品質監査などが含まれ、これらは全てGMP基準に基づいて運用されます。
医薬品業界にとってGMPソフトは、法規制に基づく必須の要素であり、適切な運用を通じて規制遵守が可能になります。
GMPソフトの役割
GMPソフトの主要な役割は、製造プロセスを一貫して管理し、製品の品質と安全性を保証することです。これには、製造に関する標準化された手順を設定し、それらを従業員に遵守させることが含まれます。
具体的には、SOPによる製造手順の統一、品質管理のための記録保持、問題発生時の迅速な対応と是正措置の実施が挙げられます。さらに、GMPソフトはリスク管理の枠組みとしても機能し、品質に関わるリスクを事前に特定し、対応策を講じることで、製品の欠陥を未然に防ぎます。
GMPソフトとGMPハードの関係
GMPソフトとGMPハードは、医薬品製造における品質保証のために相互に補完し合う重要な要素です。GMPハードは、製造設備、機器、施設などの物理的なインフラ(=ハード面)を指します。一方、GMPソフトは、これらの設備や機器の運用を管理するための標準手順やシステム(=ソフト面)を提供するものです。
たとえば、最新の製造設備が導入されていても、その使用方法や保守手順が標準化されていなければ、安定した品質の製品を製造することは困難です。GMPソフトは、設備の適正な使用とメンテナンス方法を明確にし、ハードの機能を最大限に引き出すためのガイドラインとなります。GMPソフト・GMPハードの相互作用により、製品の品質と安全性が保証されます。
GMPハードについてはこちらの記事で解説しています。
→ GMPハードとは 役割や対象設備、バリデーション・監査との関連性について解説
GMPソフトの要件
GMPソフトの要件には、製造業における品質管理と安全性を確保するための基準が含まれます。これには、製造過程の管理方法や試験検査手順の文書化、製品の品質保持のためのリスク管理方法などが求められます。また、製造環境の整備、従業員の教育訓練に加えて、定期的な監査とバリデーションの実施も重要です。
製造管理・品質管理における組織構造・責任体制の整備
GMPソフトの導入には、製造管理と品質管理における組織構造と責任体制を明確に整備することが不可欠です。具体的には、品質保証部門と製造部門の役割分担を明確化し、それぞれの責任者を指定することで、品質に関する問題が発生した場合の迅速な対応が可能となります。
また、全ての従業員がGMPの基本原則を理解し、各自の役割を果たすための教育とトレーニングも重要です。このように、組織体制を整えることで、GMPソフトの効果的な運用と品質の一貫性が保たれます。
製造・試験検査手順の文書・記録の整備
GMPソフトの運用には、製造や試験検査に関する手順を詳しく文書化することが必要です。これには、製造プロセスの各段階で必要な作業手順、品質基準、使用する設備や材料、検査方法などを明記します。
文書化された手順は、従業員が標準化された方法で作業を行い、製品の品質と安全性を確保するためのガイドラインとして機能します。また、文書は定期的に見直しすることで、常に最新の規制や技術に対応できるようにします。
製造管理・品質管理の実施
製造管理と品質管理の実施は、GMPソフトの中心的な要素です。製造過程の各段階で品質管理を徹底し、不良品の発生を防ぐための予防策を講じます。具体的には、次の通りです。
- 製造設備の定期的な点検・メンテナンス
- 従業員の教育訓練
- 作業環境の清掃・衛生管理
品質管理の効果を最大化するためには、継続的なモニタリングとデータ収集を行い、問題の早期発見と迅速な対応が求められます。
バリデーションの実施
GMPソフトのバリデーションは、品質管理プロセスが適切に機能しているかを検証するための重要な手順です。バリデーションには、例えば次の3つが含まれます。
- 設計バリデーション:新しい製造設備や作業手順の導入時に実施
- プロセスバリデーション:日常の管理・運用で実施
- 再バリデーション:一定期間ごとに実施
これにより、製品の一貫した品質が保証され、顧客の信頼を得ることができます。また、バリデーション結果の文書化と定期的な見直しを行うことで、持続的な品質向上が可能になります。
GMPにおけるバリデーションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→ GMPバリデーションの詳細はこちら
GMPソフトの監査と認証
GMPソフトの効果的な運用には、定期的な監査と認証が不可欠です。これにより、製造プロセスの一貫性と品質を維持し、規制当局の要求に応えることができます。
内部監査
内部監査は、企業内部で実施される評価活動であり、GMPソフトの運用状況が適切であるかを確認するために行われます。社内の監査チームが、製造現場や品質管理部門を対象に、規定された手順が適切に実施されているかを評価し、必要な改善点を特定します。
内部監査の目的は、品質管理システムの継続的な改善と規制遵守の確保です。また、内部監査は従業員の意識向上にも繋がり、製造現場の透明性と一貫性を向上させる効果があります。定期的な内部監査により、問題が発生する前にリスクを特定し、早期に対策を講じることができます。
第三者認証
第三者認証は、外部の独立した認証機関がGMPソフトの有効性と適合性を評価し、認証を付与するプロセスです。第三者認証は、顧客や規制当局に対して、企業の製造プロセスが適切に管理され、品質が確保されていることを示すための重要な手段です。この認証は、外部からの信頼性を高め、市場競争力の向上にも寄与します。
また、第三者認証は、内部監査では発見できなかった問題点を外部視点で明らかにし、さらなる改善の機会を提供します。認証プロセスには、現地調査、文書レビュー、実地検査が含まれ、すべての結果が評価報告書として提出されます。
まとめ
GMPソフトは、GMPハードと並び医薬品製造における品質保証と安全性を支える重要な要素です。標準作業手順書(SOP)、品質監査、製造記録、バリデーションなどの要素を通じて、製造プロセスの一貫性と透明性を確保できます。GMPハードとの違いを理解し、GMPの正しい運用に努めていきましょう。
GMPについての詳しい解説はこちらの記事で解説しているので、合わせてご参照ください。
→ GMPとは 運用の流れや認証プロセス、導入メリットをわかりやすく解説
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