化粧品製造業での品質管理の課題とは?システム導入のメリットも解説
公開日:2022年09⽉20⽇
最終更新日:2024年09⽉30⽇
化粧品を製造する企業は、適正な品質を確保するために正しい品質管理を行わなくてはなりません。品質管理の基準としては、「ISO9001(品質マネジメントシステム)」や「ISO22716(化粧品GMP)」、「GQP(Good Quality Practice)省令」などがあり、各企業はこれらに則った管理体制を構築する必要があります。
しかし、化粧品の複雑な製造工程で安定した品質管理を行うことは、簡単ではありません。実際に、人の目視チェックによってミスが発生している企業や、手書きや手入力による管理の手間をなくしたいと感じている企業は数多くあります。
本コラムでは、化粧品の製造現場における品質管理の主な課題を紹介し、それらを解消するのに役立つシステムの機能や導入メリットについて解説いたします。
化粧品製造業における品質管理の課題とは?
ここでは、化粧品の製造現場でよくある品質管理の課題を3つご紹介します。
原材料や資材を間違って使ってしまう
化粧品は一般的に、複数の原材料を配合して作られています。1つの製品を作るのに何十種類もの原材料が使われることもあるため、膨大な種類の原材料を在庫として持っておかなくてはなりません。また、容器や包装資材などの種類も多く、原材料とともに在庫管理されています。
化粧品を製造する際は、原材料や資材の在庫から必要なモノを必要な量だけ出庫して使用します。しかし、配合表(レシピ)や指示書通りの正しいモノなのかを目視で判別するのが難しく、間違った原材料や資材を使ってしまうことも少なくありません。その場合は、当然ながら不良品として廃棄処分することになってしまい、大きな損失がでてしまいます。
原材料の品質管理に手間がかかる
化粧品に使用する原材料の品質は一定ではなく、バラつきがあります。そのため、仕入先から入荷した際に規格に適合しているかを検査したり、ロット番号を付与してトレースできるようにしておかなくてはなりません。また、ほとんどの原材料には使用期限が定められてるため、入庫日の管理や先入れ先出しを徹底する必要があります。
このように、化粧品の製造現場では原材料の品質管理が大きな課題となります。検査結果やロット、入庫日、使用期限など管理すべき内容が多いだけでなく、記録も詳細に残していかなくてはならないためです。原材料を手書きや手入力といったアナログな方法で管理している企業もありますが、手間やミスが多く改善が求められています。
トレーサビリティの確保が難しい
化粧品製造業は、トレーサビリティを意識した管理体制を構築する必要があります。人の肌身に使う化粧品は厳しい品質管理が市場から求められており、製品のロットから使用した原材料や資材をトレースしたり、その製品がどのようにして製造されたのかをトレースできるようにしておかなくてはなりません。また、万が一市場に不良品が流出したとしても、トレーサビリティが確保できていれば問題のロットを特定し、最小限のコストで回収を行えます。
しかし、トレーサビリティを高いレベルで確保し続けるのは極めて困難です。目視チェックや紙の帳票を使ったアナログな管理では手間もミスも多くなり、トレーサビリティを安定して確保できなくなる可能性が高まります。ムリなく効率的にトレーサビリティを確保するためには、システムの活用が必須といえるでしょう。
化粧品製造業の品質管理に役立つシステム機能とは?
ここでは、化粧品製造業の品質管理に役立つシステム機能を4つご紹介します。
バーコードとハンディターミナルによるペーパレス機能
1つ目は、バーコードとハンディターミナルを活用してペーパレスで記録を行う機能です。原材料や資材の在庫管理を行う際に手書きや手入力で記録を残していると手間がかかりますが、バーコードとハンディターミナルを活用すればピッと読み込むだけで簡単に記録を行うことができ、ミスも軽減できます。原材料や資材の在庫管理だけでなく、製造実績の記録や製品の在庫管理、製品の出荷管理といったほかの業務にも適用することが可能です。
この後に出てくる機能を実現するためにも、バーコードとハンディターミナルの活用は必須となります。
品質ゲート機能
2つ目は、品質ゲート機能です。化粧品製造業では、適正な品質を確保するために各工程で品質チェックを実施し、次工程に不良品が流れていかない仕組みを構築しなければなりません。たとえば、次のようなチェックを実施することで不良品の流出を防ぐことができます。
- 仕入先から間違った原材料や資材が入荷していないか
- 受入した原材料の品質は規格に適合しているか
- 原材料の計量結果は配合表(レシピ)通りになっているか
- 使用する原材料や資材が間違っていないか
- 使用期限の切れた原材料を使おうとしていないか
- 原材料の先入れ先出しを実施できているか
- 検査に合格していない原材料を使おうとしていないか
これらの内容は、原材料や資材の情報が含まれたバーコードとハンディターミナルを活用すれば簡単にチェックできます。チェックすると同時に履歴データを残せるので、後から確認できる点もメリットです。品質ゲート機能によって不良品の発生・流出を未然に防げるようになれば、品質管理のレベルは格段に向上するでしょう。
原材料の詳細な在庫管理機能
3つ目は、原材料の詳細な在庫管理機能です。ほかの業界に比べると、化粧品製造業は1つ1つの在庫に対して詳細な管理が求められる傾向にあります。たとえば、入庫日・ロット・使用期限・検査状態・検査日・仕入先などの情報を在庫に紐付けておき、それらの情報をもとに品質管理が行われるといった内容です。
一般的な生産管理システムや在庫管理システムでは、ここまで詳細な在庫情報を管理できない可能性があります。そのため、化粧品製造業での運用を想定したシステムを導入しなければなりません。システムによっては、入庫時に自動で入庫日を記録したり、使用期限を自動で計算したりと、便利な機能が備わっていることもあります。都度人の手で記録するよりも記録漏れやミスがなくなるため、管理がしやすくなるでしょう。
トレーサビリティ機能
4つ目は、トレーサビリティに関する機能です。受入・秤量・投入・検査・出荷といった各工程で誰がいつどのような作業をしたのかがすべて履歴として残るシステムであれば、万が一不良が発生してもすぐにトレースできます。品質管理においては履歴の改ざんができないことも重要な要素の一つであり、そういった観点からもシステムによるトレーサビリティは効果的です。
トレーサビリティを確保する上で大きな課題となるのは、記録の手間です。しかし、上述したバーコードとハンディターミナルを活用すれば、ピッと読み込んで記録するだけで履歴が残ります。手書きや手入力で記録するような手間がなくなり、作業者の負担を軽減できる点がメリットです。
品質管理にシステムを導入するメリット
先にご紹介した4つの機能を備えたシステムを導入することで、化粧品製造業は次のようなメリットを得られます。
- 人のミスを削減し、高い水準の品質保証体制を構築できる
- 不良品の発生・流出を未然に防止することで、収益性を改善できる
- 原材料の品質管理・在庫管理を効率的に行える
- トレーサビリティを確保して市場からの要求に応えられる
化粧品製造業にとって、品質管理は大きな課題であると同時に企業としての強みにもなり得ます。徹底した品質管理によって常に高品質な製品を製造できるようになれば、顧客や消費者からの信頼を得ることができ、企業の成長につながるでしょう。
まとめ
本コラムでは、化粧品の製造現場における品質管理の主な課題を紹介した上で、それらを解消するのに役立つシステムの機能や導入メリットについて解説しました。
化粧品への品質要求は年々高まっており、今まで以上に厳しい品質管理体制が求められるようになっています。また、多品種少量生産、製品ライフサイクルの短期化、人手不足などの影響もあり、品質管理がどんどん難しくなっていくでしょう。人の手によるアナログな品質管理から脱却し、システムによる正しい品質管理体制の構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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