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PIC/Sとは GMPとの関係、歴史や加盟国のメリット・デメリットについて解説

PIC/S とは

PIC/Sとは、医薬品の品質基準を国際的に調和させるための活動を行う団体です。各国の査察基準を統一し、製造業者が異なる国の規制に対応しやすくすることを目指しています。本記事ではGMPに関連の深いPIC/Sについて、活動の目的や歴史、GMPとの関係性について解説します。

PIC/Sとは

PIC/Sは、医薬品の品質基準を向上させるために、各国の査察制度の標準化を図る国際的な枠組みです。PIC/Sの主要な目的は、医薬品製造に関する規制の調和を推進し、製造業者が異なる国の規制を同時に満たしやすくすることです。これにより、医薬品の品質が確保されるとともに、国境を越えた流通の効率化にも繋がります。

PIC/SとGMPの関係性

医療品 品質管理

医薬品製造の品質ガイドラインとしては、GMPも有名です。PIC/Sは、GMPの基準を統一する組織という側面もあります。PIC/Sが定めたGMPガイドラインを守ることで、世界標準の品質管理体制で医薬品を製造できるということになります。

PIC/SによるGMP規制の統一

PIC/Sは、GMPの統一を促進する役割を果たしています。かつて、アメリカの薬害事件を機にGMP法が制定されて以降、GMPは世界で広がりました。1990年代からは、それぞれの国と地域で整備されたGMPを統一する機運が高まり、PIC/SによるGMPガイドラインが国際基準となりました。各加盟国がPIC/Sガイドラインを基準にGMPを実施することで、国際的に一貫した品質管理が可能になります。

これにより、製造業者は異なる国の要求に対応するための手間やコストを削減し、製品の安全性を高めることができます。

PIC/S加盟国でのGMP遵守の重要性

PIC/Sに加盟する国々では、GMPの遵守が極めて重要視されています。加盟国は、PIC/Sの基準に従ったGMP査察を行うことで、医薬品の品質と安全性を国際的な水準に保っています。これにより、国内外での医薬品の信頼性が向上し、消費者への安全な供給が確保されます。

PIC/Sの歴史

PIC/Sの起源は、1970年に設立された「医薬品査察協定(PIC: Pharmaceutical Inspection Convention)」に遡ります。この協定は、ヨーロッパ諸国の間で、医薬品の製造施設に対する査察の基準を統一し、相互に認め合うことを目的として始まりました。当初は、ヨーロッパの8カ国が参加し、各国の医薬品の品質基準を統一し、相互信頼の下で医薬品の流通を円滑にすることが目指されました。

1995年、PICは非ヨーロッパの国々にも参加を呼びかけるために「医薬品査察協同制度(PIC/S)」として改組されました。この改組により、PIC/Sは、ヨーロッパ以外の国々からも参加が可能となり、国際的な規模での協力体制を強化しました。PIC/Sは、各国の規制当局間の協力と調和を推進し、GMPの基準を統一する役割を果たしています。

現在、PIC/Sには世界中の50以上の国と地域が加盟しており、国際的な医薬品規制の基準設定や査察活動の相互承認を促進するために活動しています。PIC/Sの歴史は、国境を越えた医薬品の安全性と品質を保証するための努力の歴史であり、今後もその役割はますます重要になると考えられています。

PIC/Sの加盟国

PIC/Sには、ヨーロッパやアジア、アメリカ、オセアニアなどの多数の国が加盟しています。これらの国は、GMP(適正製造基準)の査察基準をPIC/Sのガイドラインに基づいて整備し、それに準じた査察を行っています。加盟国は、その共通の基準を遵守することで、医薬品の品質と安全性を確保しています。

日本もPIC/Sに加盟

日本も、2014年にPIC/Sに加盟しています。PIC/S加盟前から、日本には「GMP省令」という省令がありましたが、厚生労働省や都道府県がPIC/Sに加盟した後、改正を行いました。この2021年に改正したGMP省令を、一般的に「改正GMP省令」と呼びます。

この改正は、日本の医薬品製造の品質基準をPIC/S、つまり国際基準に整合させただけでなく、国内の品質管理体制の整理にも繋がりました。

現在、PIC/SとGMP省令の内容はほぼ同様です。両者の違いは、法的拘束力の有無です。PIC/Sには法的拘束力はない一方、GMP省令は薬機法に基づくため、必ず遵守する必要があります。

PIC/S加盟のメリット

PIC/Sの加盟には、以下3点のメリットがあります。

国際基準で品質管理を行える

PIC/Sへ加盟し、PIC/Sのガイドラインを基準としてGMPを実施することで、製品の一貫性と安全性が確保されやすくなります。世界基準の品質管理で製造過程でのリスクを低減し、消費者の信頼獲得に繋げられます。

グローバル展開に有利になる

PIC/Sに加盟すると、製造業者は国際市場へ参入しやすくなるというメリットもあります。PIC/S加盟国の規制が統一されているため、異なる国の規制に合わせて製品を改良する手間が減少します。この統一された枠組みを通じて、より多くの市場で製品を販売できる機会が広がります。

国外での査察対策がしやすくなる

PIC/Sに加盟することで、各国でのGMP査察に対応しやすくなります。PIC/Sガイドラインに基づく標準化された査察が行われるため、異なる基準に対応する必要がなくなり、準備の負担が軽減されます。結果として、査察準備に費やす時間やリソースの効率が向上します。

PIC/S加盟のデメリット

考える従業員

一方で、PIC/Sの加盟には以下のデメリットがあります。

準拠コストの増加

PIC/Sに加盟すると、GMP基準に準じた製造プロセスの改善が求められるため、関連するコストが増加する可能性があります。例えば、設備のアップグレードや従業員の訓練に必要な投資が増えます。これらのコストは、医薬品製造企業にとって負担になる場合があります。

監査の頻度と厳格さの増加

PIC/S加盟国では、GMP遵守のための監査の頻度が高まり、その内容も厳格になります。これにより、企業は継続的に内部プロセスの見直しや改善を行う必要があります。監査への対応が重なることで、リソースの負担が増加し、他の業務に割ける時間が減少する可能性があります。

柔軟性の低下

PIC/Sのガイドラインに従うことは、製造プロセスの標準化を求めるため、企業の柔軟性を制限することがあります。特に、独自の製造プロセスや革新的な技術を採用している企業にとっては、その適用範囲が制約されることが懸念されます。

まとめ

PIC/Sは、医薬品の品質向上と国際的な市場への参入を促進するための重要な枠組みですが、その加盟にはメリットとデメリットがあります。加盟することで、国際的な基準に基づいた品質管理が可能になり、グローバル展開が進む一方で、準拠コストの増加や監査への対応といった課題も生じます。

GMPの概要についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、合わせてご参照ください。

参考:
GMPとは 運用の流れや認証プロセス、導入メリットをわかりやすく解説

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