MPSとは?基準日程生産計画の基本と事例で分かる導入メリット

MPSとは

MPS(Master Production Schedule:基準日程生産計画)とは、どの製品を・いつ・どれだけ生産するかを定める、生産計画の基準を指します。生産管理の担当者にとって、ERPなどのシステム導入時にこの用語を目にすることもあるでしょう。MRPとの違いが分かりにくいと感じることはないでしょうか。

本記事では、製造業向け業務改善プラットフォームSmartFを開発するネクスタが、MPSの定義からMRP・生産計画・製番管理との違い、導入のメリットと注意点、具体的な立て方までを解説します。あわせて、生産計画の作成工数を70%削減した事例も紹介します。

MPS(基準日程生産計画)とは

MPSは、需要予測や受注情報をもとに生産の基準日程を定める計画です。

MPSで決定する生産数量は、計画需要量から手元の在庫・安全在庫を差し引いた必要生産量として算出します。たとえば計画需要量が500個で在庫が120個ある場合、必要生産量は380個です。

この必要生産量をMRPで資材展開したあと、設備や人員の能力で実現可能かを検証します。この工程をCRP(Capacity Requirements Planning/能力所要量計画)といいます。

MPSとMRPとの違い

MPSとよく比較されるのがMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)です。両者は連携しますが、扱う対象と目的が異なります。

MPSが工場全体の生産活動の「基準」となる生産計画であり、後工程であるMRP(資材所要量計画)や現場のスケジューリングは、このMPSをもとに組み立てられます。よって、MPSはMRPの上流工程と言えます。

比較項目MPS(基準日程生産計画)MRP(資材所要量計画)
対象完成品の生産数量・生産日程完成品を作るための部品・原材料
主な目的何を・いつ・どれだけ生産するかを決定する部品表(BOM)をもとに必要な資材の量と調達時期を算出する
入力情報需要予測・受注情報・在庫状況MPSで決定した生産計画・部品表・現在庫
処理の位置づけ生産計画の起点(上流工程)MPSの結果を受けて資材を展開する工程(下流工程)
主な使い手生産管理部門・営業部門購買部門・資材調達部門

MRPでは、MPSで決めた生産数量をもとに、部品表(BOM)に沿って必要な資材数量を算出します。たとえば来週の完成品出荷計画が50個、手元に在庫が20個ある場合、正味所要量は30個です。

しかし、実際には最小発注ロットやリードタイムを加味した調整が必要になります。1ロット40個単位でしか発注できない場合は、正味所要量が30個であっても40個のロットで発注し(ロット編成)、以降の所要量計画で調整します。部品の調達リードタイムが2週間であれば、発注のタイミングを2週間前倒しして手配します(先行計算)。

このように、MPSは「何をいつ何個作るか」という上流の意思決定を担い、MRPはそれを実現するための資材手配を担うという役割分担になっています。

補足:狭義のMRPとMRP2

なお、上記で説明した所要量計算は「狭義のMRP(MRP1)」と呼ばれます。

MRPは時代と共に適応範囲が広がっています。狭義のMRPでの計算結果と現場の実際の能力を継続的にすり合わせる運用形態は「クローズドループMRP」と呼ばれます。そこにコスト・人員・設備まで管理範囲を広げた発展形がMRP2(Manufacturing Resource Planning/生産資源計画)です。

MRPの詳しい仕組みや導入手順は、MRP(資材所要量計画)とはで解説しています。MPSは、MRP1・MRP2いずれにおいても起点となる計画です。

生産計画・製番管理とMPSの位置づけ

MPSは、生産計画という大きな枠組みの中で「基準となる日程・数量を定める」役割を担う計画手法です。主に見込生産で用いられますが、内示情報などをもとに月次・週次で計画を立てる繰返受注生産(リピート受注生産)でも活用できます。

対して、個別受注生産や多品種少量生産のように、受注ごとに個別の管理番号で追跡する必要がある生産方式では、MPSではなく製番管理を用いるのが一般的です。

製番管理とMRPの使い分けは、製番管理とは?MRPとの違いで詳しく解説しています。

MPSは生産計画のどの階層にあたるか

生産計画は、期間の長さによって大日程計画・中日程計画・小日程計画の3階層に分けて考えるのが一般的です。このうち、MPSは主に中日程計画にて機能します。

計画の階層期間の目安主な内容MPSとの関係
大日程計画半年〜1年(年度計画)経営計画に基づく品種別・製品別の概略計画(総合生産計画)MPSの前提となる長期計画。MPSそのものではない
中日程計画1〜3カ月(月次計画・ローリング計画)基準日程計画(MPS)の設定・手配番数の決定MPSが実際に機能する中心的な階層。一部の生産スケジューラーで対応可能
小日程計画1週間〜1カ月(週次計画)現場の作業順序・設備割当を具体化する実行計画(ガントチャート等)MPS・MRPで決定した内容を現場実行レベルに落とし込む段階。生産スケジューラーに強みがある領域(中日程計画の一部を担うケースもある)

各階層の具体的な立て方は、生産計画とはで詳しく解説しています。

MPSが必要とされる理由

MPSがないまま生産を進めると、現場の勘や経験に頼った場当たり的な生産計画になりやすくなります。その結果、過剰在庫や欠品、納期遅延といった問題につながります。

MPSを整備することで、以下のような効果が期待できます。

  • 需要予測と生産能力の両方を踏まえた、実現可能な生産計画を立てられる
  • 生産計画が明文化され、担当者の勘や経験への依存を減らせる
  • MRPや現場のスケジューリングの精度が上がり、資材調達・人員配置の無駄が減る

MPSを導入するメリット【事例に学ぶ改善効果】

MPSを整備することで得られる効果は、生産計画の平準化・属人化の解消・工数やコストの削減の3つに整理できます。ここでは実際の導入事例もあわせて紹介します。

生産計画の平準化と需給変動への対応

MPSを軸に生産計画を立てることで、需要の変動に対しても、生産能力の範囲内で無理のない計画を組みやすくなります。急な受注変更が入った場合も、MPSに立ち返って全体の生産数量・日程を調整すれば、現場の混乱を抑えられます。

SmartFが主催した製造業DXカンファレンス2025の参加者アンケート(n=99)で、生産管理における最重要課題を集計した結果、「生産計画・工程効率化」を挙げた回答は67.7%にのぼりました。生産計画の平準化は多くの製造業が抱える関心事で、MPSの整備で生産性向上を図れる企業も多いと言えます。

属人化の解消

生産計画の立案が特定の担当者の経験や勘に依存していると、その担当者が不在になった際に計画が立てられなくなるリスクがあります。特に中日程計画(MPS)は月次・週次のローリング更新が必要なため、属人化すると更新自体が滞りやすくなります。

生産管理システムでMPSと現場の情報を連携させ、計画の前提となる需要予測・受注情報・在庫状況をシステム上で一元管理すれば、特定の担当者以外でも計画内容を把握・更新できる状態を作れます。

工数・コスト削減効果

MPSに基づく生産計画をシステム化すると、計画作成そのものの工数削減に加えて、原価管理などの周辺業務にも効果が波及します。

当社が製造業のお客様のヒアリングを行う中でも、MPSを含む生産計画の管理をエクセル等で行っている中小中堅企業様はたくさんいらっしゃいます。エクセルによる生産計画は手軽に始められる一方、更新の手間が大きくなりがちです。入力ミスなどのヒューマンエラーも起きやすく、修正作業も含めると思った以上のコストになっているケースは多々あります。生産品目が多い、もしくは複雑な生産計画が多い企業は、中小中堅企業であってもシステム導入を検討する価値があると言えます。

事例:高圧ガス容器メーカー

高圧ガス容器の繰返受注生産を行うある企業では、複数の注文書をエクセルへ転記し、手作業で生産計画に落とし込む運用を続けていました。生産計画の策定業務には毎月2〜3日を要しており、生産予定と実績の比較も紙の記録では難しい状態でした。

そこで同社は、工程管理システムを導入し、受注処理をシステム化することで手入力作業をなくしました。その結果、生産計画の策定工数は1日弱にまで短縮され、生産実績の自動収集で各工程の工数把握まで実現しました。

“現場の進捗状況の可視化だけでなく、正確な作業時間に基づく原価の見直し等もできる体制になりました。リーズナブルな価格でこれらを実現できている点は、大変満足しています。”

この事例のポイントは、生産計画だけでなく「生産進捗・工数の見える化」まで実現した点です。正確なMPSには、実際の生産にかかった工数=生産能力の情報が不可欠だからです。MPSの段階で工数を計算し、計画が実現可能かを検証する工程をRCP(Rough Cut Capacity Planning:ラフカット能力計画)といいます。工数の把握が不正確だと、この検証自体が機能せず、無理のある生産計画になってしまいます。

→ 事例詳細はこちら:生産計画の策定工数70%削減!作業実績記録のシステム化で原価見直しなどのデータ活用まで可能に

MPS運用でよくあるミス・注意点

MPSは導入すれば終わりではなく、運用の仕方次第で効果が大きく変わります。以下のようなミスは特に起こりやすいため注意が必要です。

  • 需要予測とのズレを放置して計画を固定してしまう:一度立てたMPSに固執し、実際の受注動向との差異を見直さないと、過剰在庫や欠品につながります
  • 凍結期間を無視して直前に計画変更を繰り返す:MPSには変更しない期間(凍結期間)を設けるのが基本です。これを無視すると、資材調達や現場作業が混乱します
  • MRPとの連携が取れていない:MPSを見直したにもかかわらず、MRP側の資材所要量計算に反映されないと、計画と現場の乖離が生じます
  • エクセルでの属人的な管理から抜け出せていない:MPSの元になる生産計画表を、特定の担当者しか更新・理解できない状態のまま運用してしまうケースです。前述の事例のような属人化リスクが残り続けます

これらのミスの多くは、MPSを紙やエクセルで手作業運用していることに起因します。生産管理システムでMPSと現場の情報を連携させることで、多くは未然に防げます。

MPS運用でよくある質問

MPSとSAPの関係は?

SAPをはじめとするERPパッケージには、MPSを立案するための機能(生産計画モジュール)が組み込まれています。SAP上でMPSを立てると、そのままMRPの資材所要量計算に連携できる点が特徴です。

MPSはExcelで運用できる?

小規模な生産計画であれば、Excelでの運用も可能です。ただし需要予測データや在庫情報との連携が手作業になるため、更新が特定の担当者に偏りやすくなります。MRPや現場の実績データと自動的に連携させたい場合は、生産管理システムの利用が向いています。

MPSの意味・読み方は?

MPSはMaster Production Scheduleの略称で、日本語では「基準日程生産計画」または「基準生産計画」と訳されます。読み方は、アルファベットをそのまま「エムピーエス」と読みます。

MPSとMRPはどちらを先に導入すべき?

MPSが生産計画の起点であり、MRPはMPSの結果をもとに資材を展開する仕組みです。そのため、まずMPSで生産計画を明確にしたうえで、MRPによる資材所要量計算を整備する順序が基本になります。

MPSの理解を生産計画の最適化につなげる

MPSは、どの製品を・いつ・どれだけ生産するかを定める、生産計画の基準となる考え方です。MRPや現場のスケジューリングは、このMPSを土台に組み立てられます。

紹介した事例のように、MPSの立案・更新を手作業に頼っていると、属人化や工数増加という課題が生じやすくなります。生産管理システムでMPSと現場の情報を連携させることで、こうした課題の多くは解消できます。

自社の生産計画の立て方や、MPSを支えるシステムの選び方について詳しく知りたい方は、SmartFの生産管理機能もあわせてご覧ください。

SmartF

【参考文献】

23種類の生産管理システムを徹底比較

初期費用相場や選び方のポイントをチェック

生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システム 徹底比較」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。

生産管理システム23社を徹底比較 機能・特徴、失敗しない選び方とは

この記事の著者

SmartF

株式会社ネクスタ DXメディア編集部

生産管理システムSmartF(スマートF)の開発と、250以上の現場改善をしてきたノウハウを活かし、製造業DXに関する情報をわかりやすく解説。アナログな現場や生産効率化に悩む、すべての現場へ役立つメディアを運営しています。

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