製造業向け原価管理システム9選！機能や特徴、導入メリット、選び方をまとめて紹介
公開日：2024年06⽉05⽇
最終更新日：2024年06⽉05⽇
生産管理部門の重要な業務の一つに、原価管理があります。昨今の製造業では、複数拠点での製品の製造、多品種少量生産による小ロット化、海外も含む部品の調達元の多様化などの理由から、原価管理業務がますます複雑化しています。
この記事では、原価管理業務を効率化するために有用なツールの一つである「原価管理システム」について、概要や主な機能、導入メリットや選び方、各社の提供しているサービスの特徴について紹介します。多種多様な原価管理システムがある中で、自社にとってどれが最適なのかわからないという方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
原価管理システムとは
原価管理システムは、製造業において原価計算やコスト管理を効率化し、精度を向上させるためのITツールです。生産管理、財務管理、営業管理といった様々な業務データを一元管理し、原価の計算や分析、シミュレーションを行うことが可能です。
製造業の原価管理の課題
製造業の原価管理には、次のような課題がよくあります。
品質重視で原価管理ができていない
多くの製造業では製品品質や納期が最優先とされるため、原価管理が細かく実施されていない場合があります。例えば、市場価格に対して割高な原材料の仕入れ、過剰在庫による不要な保管費などで、想定より原価が高くなっているケースがよくあります。
原価計算が複雑で全てを把握できていない
製造業の製造原価には、材料費・設備費・労務費・外注費・経費などが含まれ、原価計算が複雑です。また、これらに加えて企業運営にかかる間接費も含まれるため、コストの全体像を正確に把握することが難しくなっています。
製造拠点が複数あり、一元管理が難しい
複数の製造拠点を持つ企業では、それぞれの拠点で異なる管理方法やデータベースが用いられることがあります。これにより、部品の製造を複数の工場で行った場合に原価が正確に把握できなくなり、どの工場で製造するのがベストか、判断が難しくなります。また、製造業の場合は海外に製造拠点があることも多く、原価計算を複雑化させる要因の一つとなっています。
標準原価、見積原価と実際原価のズレが大きい
製造業では、事前の見積原価や標準原価に基づいて製造を行います。一方、実際の生産過程では予想外の仕様変更や納期調整が発生します。これにより、見積原価や標準原価と実際原価との間に大きなズレが生じ、利益計算に影響を与えます。
原価管理システムの機能
原価管理が複雑な製造業では、エクセルなどによる手作業の管理では限界があります。正確に原価を管理するためには、原価管理システムは必須ツールの一つといえます。製造業向けの原価管理システムには、主に次のような機能があります。
原価計算
原価計算機能は、製造にかかる直接費や間接費を正確に計算し、製品ごとのコストを把握するための機能です。この機能により、材料費や労務費、設備費などの各種費用を詳細に入力することで、製品ごとの正確な原価を把握できます。
原価差異分析
原価差異分析は、計画された原価と実際の原価の差異を分析する機能です。この機能により、製造工程のどの部分に非効率や無駄によるコストが存在するのかを特定し、改善策を立案できます。
損益計算
損益計算機能は、製品ごとの収益性を分析するための機能です。製造コストと販売収入を比較分析することで、各製品ラインの利益率を明確にし、より収益性が高くなる生産計画が立てられるようになります。
原価シミュレーション
原価シミュレーションは、様々な生産パターンを仮定して原価を計算し、コスト変動を予測する機能です。市場の変動や原材料費の変更が製品原価に与える影響を事前に評価でき、より正確な情報を元にした意思決定が可能となります。
配賦
配賦機能は、間接費用を製品やサービスに振り分けるために用います。この機能により、企業運営にかかるコストを製品原価として転化させることができ、適切な販売価格設定が出来るようになります。
システム連携
システム連携機能により、原価管理システムは他の業務システム（ERPやCRMなど）とデータを連携できます。他のシステムと連携させることで、入力した数値をリアルタイムに反映させることができます。
セキュリティ対策
セキュリティ対策機能は、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための多層的なセキュリティ措置を行う機能です。原価や販売価格は、製造業にとって機密性の高い社外秘情報となるため、強固なセキュリティ対策を行う必要があります。
原価管理システム導入のメリット
原価管理システムを導入することにより、次のようなメリットが得られます。
原価管理業務の効率化
エクセルなどを用いて原価管理を行っている場合は、原価管理システムの導入により原価計算作業を自動化し、業務時間を短縮できます。これにより、原価管理部門のスタッフが最適な生産計画の検討などに集中できるようになります。
リアルタイムな情報管理
原価管理システムにはリアルタイムでデータを更新し、分析する機能があります。このため、原材料価格が変動したり、新たな設備を導入した場合にもパラメータの変更により迅速に対応できます。
コスト削減施策の立案
原価管理システムにより詳細な原価構造が分かるため、原価分析を通してコスト削減のための具体的な施策を立案できます。また、改善を行った後の数値での効果測定も容易となるため、他の製品への横展開などが実施しやすくなります。
シミュレーションによる判断ミスを防止
原価管理システムのシミュレーション機能は、様々な製造シナリオを想定してコストを計算し、未来の市場変動や価格変更による影響を予測することが可能です。これにより、より正確な予算計画やリスク管理が行え、将来の不確実性への対応力が高まります。
原価管理システムの種類
原価管理は製造業に関わらずさまざまな業種で重要な業務です。そのため、一般的に販売されている原価管理システムは大きく次の3種類に分けることができます。
業界特化型
業界特化型の原価管理システムは、特定の業界に特化して設計されたシステムです。このタイプのシステムは、その業界固有の原価管理手法に合わせて最適化されています。製造業の方は、製造業に特化した原価管理システムを選ぶことをおすすめします。
プロジェクト管理型
プロジェクト管理型の原価管理システムは、プロジェクトでの業務が中心の企業に最適です。このタイプは、プロジェクトごとの予算設定、コスト追跡、そして収益管理を統合的に管理します。建設業やプラントエンジニアリング業界など、プロジェクトの進行と共にコストが変動するタイプの業界で有効です。
多用途型
多用途型の原価管理システムは、広範囲にわたる機能を持ち、様々な業界や企業サイズに適応することが可能です。このタイプのシステムは、柔軟性が高く、様々な業務に対応可能な汎用的なツールとして設計されています。小規模から大規模までの企業で、多様な原価計算や分析ニーズに応じてカスタマイズが可能です。
原価管理システムを選ぶ時の注意点
原価管理システムの導入を検討する場合、次のような点に注意が必要です。
自社に合っているか
原価管理システムを選ぶ際には、自社のニーズに合ったシステム選定が重要です。特に、システムが自社の業務や業界に適合しているか、求めている機能が備わっているかを確認することが必要です。これらの要素を確認することで、導入はしたが使えないという事態を避けることができます。
既存システムと連携できるか
導入を検討している原価管理システムが、既存のITツールや他の業務用ソフトウェアとスムーズに連携できるかは、情報を一元管理する上で非常に重要です。特に既存のデータのインポートやエクスポートができるかどうかの確認が必要です。
カスタマイズ性、拡張性はあるか
原価管理の方法は将来的に変更となる可能性があります。そのため、柔軟に対応できるカスタマイズ性や拡張性があるかも重要です。業務の変化や企業の成長に応じたシステムのアップグレード、新機能の追加などができるかといった長期的な視点でシステムを選定する必要があります。
サポート体制は充実しているか
原価管理システムは、初期の導入設定が非常に重要です。システム導入後も安心して使用できるよう、提供会社のサポート体制が充実しているかを確認することが重要です。トラブル発生時の対応速度や、定期的なメンテナンス、アップデートの提供状況など、長期にわたるサポートが保証されているかどうか検討が必要です。
原価管理システムの選び方
原価管理システムを実際に選ぶ場合には、次のような手順が最適です。
原価管理方法をまとめる
原価管理システムを選定する前に、まずは自社の現状の原価管理方法を詳細にまとめることが必要です。現状の原価管理方法を原価管理システムに移行できるかどうかを確認しながら、システムを選定します。
原価管理に関する課題を明確にする
現場からのフィードバックを取り入れ、実際に運用する従業員が直面している課題を把握することも大切です。また、原価管理の問題点だけでなく、データ入力の手間や誤りの頻度、情報へのアクセスのしやすさなど、現場の声を反映させたシステム選びが重要です。
システムを選定する
原価管理方法の整理と現場の課題把握を踏まえた上で、市場にある原価管理システムの中から最適なものを選定します。機能性だけでなく、使用のしやすさ、拡張性、コストパフォーマンス、サポート体制などを多角的に評価し、自社に最も合ったシステムを選ぶことが重要です。
製造業向け原価管理システム9選
ここでは各社から提供されている原価管理システムについて、特徴や費用についてまとめて紹介します。それぞれの強みが異なるので、自社に適したサービスの検討にご利用ください。
※ 掲載の内容には一部古い情報が記載されている可能性があります。詳細は公式ホームページにてご確認ください。
スマートＦ
| 商品名 | スマートＦ |
| ベンダー | 株式会社ネクスタ |
| 特徴・強み | ・バーコードとハンディ端末による原価管理 ・豊富な機能と今後の拡張性 ・品番/ロット毎の原価計算 ・生産管理、在庫管理連携 ・外部システム連携 |
| 導入実績 | 200社以上（中小・中堅～大手まで、企業規模・業種問わず幅広く実績あり） |
| 初期費用相場 | 初期費用 30万円～、月額4.8万円～ |
| 導入方法 | クラウド型 |
| 備考 | 導入コンサルティング付きのトライアルを利用可能 |
スマートＦは、製造業向けの生産管理システムで、バーコード管理で簡単に品質管理ができます。原価の見える化、予実管理、原価集計などの機能を備え、少ない手間で効率的な原価管理を実現できます。導入支援付きのトライアルで試してみてから、本格導入を検討することも可能です。
アクロス
| 商品名 | アクロス |
| ベンダー | 株式会社インプローブ |
| 特徴・強み | ・製造途中のタイムリーな原価把握でコストダウン ・リアルタイムの工程進捗を可視化、スムーズな部品調達 ・間接部門の事務作業を最大限効率化 |
| 導入実績 | 加工・組立業：三協電機株式会社、三晃電気株式会社、スガワラ技研株式会社など |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | オンプレミス型 |
| 備考 | – |
アクロスは機械、電機、電子装置などの製造業に特化した原価管理システムで、個別受注生産や類似品の繰返生産に最適です。材料費・外注費・労務費・経費という4つの原価科目から詳細まで迅速に分析可能で、労務費や外注費の変動に対応した原価配賦や振替も簡単に行えます。さらに、導入前には端末の無料レンタルが提供され、自社業務に適合するか試用後にカスタマイズも可能です。
A’s Style
| 商品名 | A’s Style |
| ベンダー | 株式会社ケーエムケーワールド |
| 特徴・強み | ・様々な受注タイミングに対応。データ入力形式も選択可能 ・現場に合わせたシステム構築で、正確性と作業スピードを向上 ・入荷・在庫の状況をリアルタイムに「見える化」 |
| 導入実績 | SAP連携 自動車・航空部品の製造IoTソリューション 製品装置部品の切削製造 |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | クラウド型 |
| 備考 | 導入コンサルティング付きのトライアルを利用可能 |
A’s Styleは、企業のニーズに合わせて機能やパーツがカスタマイズ可能な、生産管理システムです。販売、生産、購買、在庫、原価の一元管理を通じて、製造業のバックオフィス業務を支援します。利用者数や企業規模に制限なく、グループ会社や外部取引先とも共同利用が可能で、外部システムとの柔軟な連携も特長です。
STRAMMIC
| 商品名 | STRAMMIC |
| ベンダー | 株式会社ニッセイコム |
| 特徴・強み | ・サプライチェーンの統合管理で、各業務を見える化 ・現場に合わせたIOT化によってミスやムダを削減 ・システム導入に合わせた業務改革支援も可能 |
| 導入実績 | 芦屋市・木村工機株式会社・産業機械健康保険組合など |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | オンプレミス型 |
| 備考 | – |
STRAMMICは、医薬品、化学品、食品をはじめとするバッチプロセスの企業や、組立加工を行う企業など、様々な業界特有のニーズに柔軟に対応します。製造業に必要な販売物流管理、生産管理、原価管理、工程管理などの各システムを統合することで、業務の効率化を図ります。
J-CCOREs
| 商品名 | J-CCOREs |
| ベンダー | JFEシステムズ株式会社 |
| 特徴・強み | ・エクセルとの強力な連携機能を装備 ・プロセス型、組立型ともに計算可能な計算モデルを採用 ・各製造工程の受払情報をもとに工程ごとの製造原価を算出 |
| 導入実績 | 鉄鋼・金属・化学・食品など |
| 初期費用相場 | 1,500万円～ |
| 導入方法 | オンプレミス型、クラウド型 |
| 備考 | – |
J-CCOREsは鉄鋼、非鉄金属、化学、半導体など、複雑な工程を持つ業態向けに設計された独立型の原価管理システムです。このシステムは、製品の各工程原価を最終製品まで積み上げる「ころがし計算」を採用しており、BOM（部品構成表）の複雑な計算や使用量設定が不要です。Excel連携機能も備えており、他の基幹システムとの連携も可能です。
MCFrame XA 原価管理
| 商品名 | MCFrame XA 原価管理 |
| ベンダー | ビジネスエンジニアリング株式会社 |
| 特徴・強み | ・様々な製造業に適用可能な原価管理パッケージ ・企業グループ全体の統合的な管理 ・製品別のプロダクトライフサイクルコストを把握可能 |
| 導入実績 | 250社以上 |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | クラウド型 |
| 備考 | – |
MCFrame XA 原価管理は、グローバル市場での競争優位を維持するために設計された原価管理システムです。このシステムでは、全社部門、工場ごと、部門ごとといった任意のグループ単位で原価計算を行い、その結果を分析することが可能です。また、グループや個人単位でアクセスを制御できるため、複数の会社が共同で利用する場合にも適しています。
アラジンオフィス
| 商品名 | アラジンオフィス |
| ベンダー | 株式会社アイル |
| 特徴・強み | ・顧客のあらゆるニーズをパッケージへ反映 ・あらゆる業種・業態に対応 ・豊富な外部システム連携 |
| 導入実績 | 5000社以上 |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | オンプレミス型 |
| 備考 | – |
アラジンオフィスは、各業界専門の知識とノウハウを活用した、標準型の販売管理・在庫管理パッケージです。アパレル・ファッション、食品、医療、鉄鋼・非鉄、ねじなどの業種特化型のパッケージを提供しています。基本パッケージを基に、オプション機能を柔軟に組み合わせることが可能です。
ProSee
| 商品名 | ProSee |
| ベンダー | ソートウェア株式会社 |
| 特徴・強み | ・原価計算や管理会計の専門家が在籍 ・原価の削減に加え利益の向上が可能 ・顧客に合った導入形態・活用方法のコンサルあり |
| 導入実績 | 食品メーカー、電気機器メーカー、電子部品メーカーなど |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | オンプレミス型 |
| 備考 | – |
Proseeは、原価や在庫金額、キャッシュフローの見える化を実現し、工場経営の意思決定をサポートするシステムです。特に、原価削減だけでなく、利益の重要性に注目した管理会計や原価計算を実施できます。
AMMIC/NetC
| 商品名 | AMMIC/NetC |
| ベンダー | 株式会社アミック |
| 特徴・強み | ・予定生産計画に基づいた生産実績データをシミュレーションし、予算や予測の策定が可能 ・PDCAのあらゆる局面を想定した充実の原価管理機能 ・製造業に適しており、品目別・工程別など多様な切り口から原価計算が可能 |
| 導入実績 | – |
| 初期費用相場 | お問合せ |
| 導入方法 | オンプレミス型 |
| 備考 | – |
AMMIC/NetCは、株式会社アミックが提供する原価管理システムで、製造原価の計算や分析を細かく行うためのツールです。同社の提供する収益管理システムや予算管理システムと連携し、企業全体のコスト戦略をサポートします。特に、製造原価から売上までの製造粗利を把握し、さらには販売経費を製品原価に配賦して営業利益まで計算することが可能です。
22種類の生産管理システムをランキングで比較
初期費用相場や選び方のポイントをチェック
生産管理システムをそれぞれの特徴や初期費用相場などで比較したい場合は、「生産管理システムランキング」も是非ご覧ください。生産管理システムは、自社の製品・生産方式・企業規模などに適したものを導入しないと、得られるメリットが限定されてしまいます。事前適合性チェックや生産管理システムを選ぶ前に押さえておきたいポイントも解説していますので、製品選びの参考にしてみてください。
